西村 明子 院長の独自取材記事
にしむら耳鼻咽喉科
(八尾市/八尾駅)
最終更新日:2025/09/01

大和路線の八尾駅から徒歩1分のところに立つビルの2階にある「にしむら耳鼻咽喉科」。1999年の開業以来20年、「いびき」を専門に診療を続けてきた。院長の西村明子先生は、卒後研修2年目からいびきを専門として、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術などの外科手術にも多く携わってきたスペシャリストである。大学の文学部哲学科を卒業後に医科大学に進んだという珍しい経歴を持つ西村院長。医大生の時には2人の子どもの出産・育児も経験し、勤務医・開業医と全力で走ってきたパワフルな西村院長に、専門の「いびき」についてなどさまざまな話を聞いた。
(取材日2019年9月10日)
いびきの診療を専門に手がけるクリニック
いびきの診療が特徴の医院なのですね。

まだ「いびき」を専門に診ている病院、開業医院がごくわずかしかなく、今のように睡眠時無呼吸症候群の危険性が指摘されるようになる以前から、大学病院において、いびきや口蓋垂軟口蓋咽頭形成術によるいびきに関する外科手術などを行ってきました。いびきに悩む方はたくさんおられるのに、専門に診られる医師は少ないという現状があります。いびきとそれに伴う睡眠時無呼吸のお悩みで来院されるのは30~60代の方が大半で、男性だけでなく女性も多いです。また、子どもさんや若い20代の女性でも治療が必要な方はおられますし、70~80代の方もおみえになります。
「いびきの検査」について教えてください。
まずファイバースコープ検査を行います。私は長年手がけてきた口蓋垂軟口蓋咽頭形成術の手術で、さまざまな喉を診てきましたから、ファイバースコープをのぞくと、いびきの状態や、いびきの発生してくる場所がだいたいわかりますので、そこから特定していきます。次に、睡眠時無呼吸症候群の診断を目的に、終夜睡眠ポリグラフィ検査のための機器をお渡しし、ご自宅で計ってきていただきます。睡眠時の無呼吸を家族に心配されて来院される方の中には肥満体型の方もおられますが、無呼吸への自覚が乏しいため、無呼吸指数や血中酸素飽和度の深刻な数値が判明してようやく危機感を持つに至れるようです。こうしたケースでは、持続的に気道に陽圧をかけて気道の閉塞を防止していくCPAP治療と合わせて、ダイエットにも取り組んでいただくことがあります。
CPAPを数多く手がけられているそうですね。

閉塞性睡眠時無呼吸タイプにお勧めの治療法で、睡眠中の呼吸を助けることを目的としているわけですが、それにより睡眠の質が高まることも期待できるようです。日中の眠気やだるさ、不調の軽減につながることも見込めます。今は社会で活躍される女性も増えて健康意識も高まり、若い女性の方もCPAP治療を抵抗なく受けられています。一昔前はお見合い結婚で、結婚前に手術を希望される方がいたことを思うと、時代が大きく変わったと感じさせられます。いびきのご相談では、患者さんのプライベートや背景まで知ることになります。隣に眠る大切な人の安眠を妨げないためにも、お互いの関係が良好であるためにも「いびきくらい」と思わずに、治療に取りかかっていただきたいですね。
経験を生かしながら、適切な診断を心がける
遠方から来院される方もいらっしゃるそうですね。

ありがたいことだと思っています。専門として多くの症例を経験していますと、検査段階でその人の症状に合う治療、合わない治療などを見極めることが図れます。この方なら口を閉じておくと大丈夫とか、横向きならいいとか、反対に、横向きでもうつ伏せでもいけないケースなどを見定めていくことにより、希望される治療法が合わない理由についても説明できますので、患者さんの納得も得られやすいのです。鼻腔にチューブを挿入し、気道の閉塞を予防するための治療を望まれて来院された方の検査画像を見て、マウスピースによる治療のほうが適していると診断するケースもあれば、その逆のパターンもあります。
特殊な分野なだけに専門の目で診ることが肝心なのですね。
こうした診断は専門に診てきた医師でないと、なかなか難しいのではないかなと感じています。手術の場合は振動する部位を探し当て、その振動部位を取り除くことを図っていびきの改善を促す治療を行っていましたが、術後5~10年経過した時に、再発する可能性も否定できません。この口蓋垂軟口蓋咽頭形成術の手術は、数年前までは当院だけでなく病院へも出張して行っていましたが、現在は扁桃腺が大きな方に限ってのみ手術対象として施術するスタンスにしています。
いびきの改善は夫婦関係にも大きく関わるそうですね。

いびき問題はパートナーがうるさくて眠れない、ストレスがたまる、夫婦げんかが増えることにより、離婚を考える夫婦は少なくありません。特に、熟年夫婦では「いびき・歯ぎしり」が別寝室の原因として多いとされています。実際に、「パートナーのいびきがうるさくて玄関で寝かせている」という相談や、「このままだと妻から追い出される」と深刻な悩みを抱えている患者さんは多くいらっしゃいます。また、妻のいびきが原因で隣人からの苦情に困っていた夫が受診を仕向けるために夫婦二人で検査を受けた方がおり、重症であった妻から「私も夫のついでに治してくださいね」という声をいただいたことがあります。
患者のニーズを察知し一人ひとりに添う治療を心がける
上咽頭擦過療法(Bスポット療法)にも注力されておられますね。

上咽頭擦過療法とは、上咽頭と呼ばれる部位に消炎剤を塗布するものです。耳鼻咽喉科では昔からあった治療法ですが、その箇所へ薬を塗ると痛かったり、むせたりするため嫌がる人が多く、内服薬の進化に伴い用いられなくなっていましたが、近年見直されてきました。当院のホームページを見て名古屋から上咽頭擦過療法を受けに来られた方もいらっしゃいます。
漢方を用いた処方を意識されているようですね。
当院では、「めまい」・「耳鳴り」・「咽喉頭の違和感」など、耳・鼻・喉に関する幅広い症状を抱えた患者さんが多く受診されています。特に「いびき」や「アレルギー性鼻炎」に悩まれている方が増えており、これらの症状は日常生活の質に大きく影響を与えるものです。中でも、症状の原因がはっきりしないまま他科を受診され、患者さんの主訴が改善されないケースが見られます。こうした背景から、私は「中庸」の視点を大切にし、漢方医学の知識を取り入れた診療にも力を入れています。感覚器の不調に対して、より的確かつ個別性の高い診療を提供することで、患者さんが快適に過ごせる時間を少しでも増やせたらと日々考えています。
地域医療連携にも力を入れられているようですね。

「手術が必要と言われたけれど、本当にそれが最善なのか……」そんな不安を抱えて、セカンドオピニオンを求めて来院される患者さんが少なくありません。耳鼻咽喉科領域では、がんなど専門性の高い疾患に対する判断が求められる場面も多く、当院では他院や大学病院からの紹介状による地域医療連携を積極的に行っています。これまでの診療経験を通じて築いてきた医療ネットワークを生かし、より高度な治療が必要な場合には、適切な医療機関へスムーズにご紹介する体制を整えています。患者さん一人ひとりに寄り添い、診断や治療の選択肢を丁寧に説明することで、納得のいく医療を提供することをめざしています。「まずは話を聞いてみたい」そんなお気持ちでも構いません。どうぞお気軽にお問い合わせください。
今後の展望について聞かせてください。
高齢化が進む社会においては、体の違和感や不調を放置せず、早期に対応することが日常生活の質の維持に直結します。当院では、手術が必要な症例や専門的な判断が求められる疾患に対して、セカンドオピニオンを希望される方の受診を受け入れており、各医療機関の専門性を調べた上で他院・大学病院との医療連携も積極的に行っています。今後は、西洋医学と漢方の両面からアプローチすることで、より幅広い症状に対応できる体制を整えていく予定です。診療の基本方針は「不要なことはしない、的確な治療」。技術だけでなく、患者さん一人ひとりの気持ちに寄り添い、ニーズに応える姿勢がますます重要になると感じています。今後も、患者さんとの対話を大切にしながら、より質の高い医療をめざしていきたいです。