伴 貞興 院長の独自取材記事
伴医院
(吹田市/吹田駅)
最終更新日:2025/03/12

阪急千里線・吹田駅から徒歩5分ほどの住宅街の中にある「伴医院」は、地域に根づいた診療を行うクリニックだ。「当院はあくまでも診療所。重症患者を抱え込むのではなく、できるだけ早めに連携医療機関へ紹介したいと考えています。しかしその分、どんな小さな不調でも気軽に駆け込める気さくさは大切にしていきたいです」そう気さくな口調で話してくれたのは、伴貞興(ばん・さだおき)院長。勉強熱心でいて朗らか、笑顔で冗談を交えながら話してくれる様子から、地域の人々が信頼を寄せる理由がうかがえる。研究よりも臨床が好きで開院を決意したという伴院長に、地域医療へかける想いを聞かせてもらった。
(取材日2018年12月5日/情報更新日2025年2月27日)
医療資源に恵まれた吹田で開業できたことは喜び
まずは開業までの経緯を教えてください。

私は福井県の出身で、高校までは福井県の小さな町で過ごしました。医師をめざしたのは、理数系が得意だったので理数系に進もう、だったら人の役にも立つ医師になったらいいかな?と考えたからです。だから、最初は熱い思いを持って……というわけではありませんでした(笑)。その後、京都大学医学部を卒業し、さまざまな病院でたくさんの臨床を経験させてもらい「自分は研究ではなく臨床が好き。だったら大学に残るのではなく、自分で開業しよう」と開業を決意しました。吹田を選んだのは、妻が吹田に縁があったから。自分にとってはまったくの未開の地でしたが、実際に開業してみると、吹田は医療資源に恵まれた土地。ここに開業できて良かったなと思います。
吹田の恵まれている点は、どんなところですか?
例えば東京にはたくさんの大学や、専門性の高い医療が受けられる病院がありますよね。それと同じように、吹田には大阪大学があり、済生会吹田病院、や市立吹田市民病院、済生会千里病院、国立循環器病研究センター病院もあります。関連病院や各分野の個人クリニックも数多くあり、住んでいる人にとっては、自分の症状や医師との相性などを見極めた上で自由に選んで通院することができます。これは健康を維持する上で、とても大切なことだと思います。また、私のような個人クリニックの医師にとっても、いざという時に安心して診療ができるということは非常にありがたいことです。
自分で開業してみて、勤務医時代と変わったなと感じることはありますか?

やはり自分のペースで診療ができることはうれしいですね。勤務医の頃を思い返すと、入院患者もいましたし、いつもポケットベルを持って行動しなくてはならず、何時であろうと呼び出されたら直行していました。ですから、本当の意味で自由になる時間はなかったように思います。開業してからは入院の患者さんもいないですし、手術をすることもありませんので、診療が終われば時間ができます。私は、医師の仕事は常に勉強していなくてはいけないと思っていますので、自由に勉強ができる時間を持つことができるのはありがたいですね。特に大阪の医師会はたくさんの勉強会を主催してくれますので、そこで新しい情報にふれることは非常に有意義だと感じます。
病名にとらわれず、患者の雰囲気を含めて診断を
開業当時を思い返して、印象的なエピソードはありますか?

とにかく、患者さんがいなかったですね(笑)。先ほども言いましたが、吹田は病院もクリニックもたくさんあります。ですから「クリニックができた」とすぐに人が集まるという感じではありませんでした。3年目から5年目あたりまではいろいろな意味で大変でした。ただ、今になって振り返ってみれば、僕個人としては非常にいい時間を持てたなと思います。その時期にはとにかく時間がありましたから、勤務医時代の時間のなさを取り返すかのように、非常にたくさんの本を読むことができました。医学書はもちろん、さまざまなジャンルの書籍にふれることができ、僕自身にとってはいい成長の時間になったように思います。その頃に読んだ本は、今も待合室の本棚に置いていますので、来院された時にでも手に取ってみてください。
どのような患者さんがいらしているのですか?
当院は特別な方のためのクリニックではなく「町のお医者さん」です。そのため、患者さんは近隣にお住まいの方々ですね。急性疾患でいらっしゃる方、予防接種、そして慢性疾患をお持ちの方が健康維持のために足を運んでくださっています。糖尿病や高血圧、高脂血症、骨粗しょう症でお悩みの方は高齢の方が多いですね。私がここに開業したのは2000年。今年で25年目になりますが、開業当初から足を運んでくださるご家族もいらっしゃいます。勤務医時代にはなかなかご家族全員を知っているということはありませんでしたが、ここでは家族の歴史とともにいられる。時には電話でその後の経過を伺うこともあり、来院してくださる患者さんは自分にとってもどこか身近で、大切な存在です。
診療の際に気をつけていることはありますか?

病名にとらわれず、患者さんの雰囲気を含めて診断していくことですね。言葉にすると難しいのですが、患者さんが訴えている症状だけでなく、自分の五感で感じることにも気を配ることが大切だと考えています。例えば匂い、視線の動き方や立ち居振る舞い、その人が持つ空気感など、医学とは一見関係ないような部分にも「その人の状態」は現れてきます。もちろん、患者さんの話をよく聞くことも大切です。せっかく同じ場所にいるのですから、患者さんをよく見て、よく話を聞き、触診をしたり、聴診器で聴音をしたり、実際に顔を合わせているからこそできることを大切にすることで、患者さんが安心できる医療を提供できるように日々心がけています。
地域の人々のニーズに合った医療をめざして
診察以外にも講演会などもされているそうですね。

自治会に依頼されて、健康に関するお話をさせていただく機会をいただいています。健康への近道は「正しく知る」ことだと思います。今はテレビや雑誌、インターネットなど情報はたくさんありますけど、中にはセンセーショナルだけど医学的に正しいか、というと疑問符がつくような情報も多いです。そういった情報に振り回されて、正しい情報が淘汰されていくことがないように、医師として自分のできることはしていかなくてはいけないなと感じています。お話しする内容は、糖尿病や骨粗しょう症など、皆さんにとって身近に感じるテーマです。家族や自分の病気で悩んでいる方、手助けをしたいと考えている方の力になれたらいいなと思って行っています。
今後、この地域でやっていきたいと考えていることはありますか?
これから老齢化が進むに従って、いろいろな変化があると思います。通院していた人がなかなか通院できなくなっていくケースも増えていくでしょう。今はホームヘルパーさんの力を借りて通院しているという人もいらっしゃいますが、さまざまな問題から、それさえも難しくなっていくかもしれない。だからといって、僕がすべての人のところに往診に行くことも難しいです。そういった変化の中で、例えば「オンラインでの診療で薬を出す」なんてことが急速に広まるかもしれません。時代のニーズは移り変わっていきます。そのニーズにできる限り応えられるようにしていきたいと考えています。私は勉強することも新しいことも好きだから、やるべきことに対して備えられたらなと思います。
最後に、先生にとって「良いかかりつけ医」とは?

「地域の人々のニーズに合っている医師」のことじゃないかなと思いますね。地域にはたくさんの人がいらっしゃいますから、そのすべてのニーズに一人の医師が答えられるわけじゃない。でも、だからこそ患者さんに向き合って、一人でも多くの人に寄り添えるようにすることが僕たちのような開業医の仕事なのではないかと思います。そして、地域の医療機関と連携し、その人にとって「本当に必要な医療が受けられるようにつなぐこと」もかかりつけ医の仕事。一人ですべてを完結するのではなく、地域と深く関わることでより良い医療を提供できるようにできたらいいなと思います。当院の近所にも、若い世帯の方々の家が増えてきています。これからも地域の皆さんにとって「困ったときに駆け込める場所」でありたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは予防接種(インフルエンザ)/3300円~