都留 智巳 院長の独自取材記事
ピーエスクリニック
(福岡市博多区/呉服町駅)
最終更新日:2021/10/12
福岡市営地下鉄の中洲川端駅と呉服町駅近の近傍という好立地にある「ピーエスクリニック」では、内科的知見から関節リウマチを全身的な疾患として捉えた専門的医療が行われている。患者の人生観を尊重することを基盤に適切な治療を実践することに努めている都留智巳院長に、以前は不治の病といわれていた関節リウマチが、最近ではコントロール可能になってきた経緯と同クリニックでの治療の実際を語ってもらった。
(取材日2020年7月6日)
日々新しくなる関節リウマチの治療
先生のご専門を教えてください。
専門はリューマトロジー、つまりリウマチ学で、膠原病を含む関節リウマチを主に診ています。この領域は非常に進歩が早く、2000年以前と現在ではまったく治療法が異なります。疾患に対する考え方そのものが変わってきているので、医学的に正しい診療を行うために、勉強会への参加、発表をきちんと行って新しい情報を取り入れ、最先端とはいかないまでも先端に近い診療を実践する姿勢でいます。かつて関節リウマチは治らない病気といわれ、変形を止められない、最終的には手術するしかないとされていましたが、生物学的製剤が登場して治療は格段に進みました。また、今日では関節リウマチの定義から見直され、2010年以降は関節変形を可能な限り予防するための治療が進んでいます。
関節リウマチの定義は、どのように変わったのですか?
昔は関節の痛みや腫れが見られ、左右対称の症状や特徴的な骨の病変があれば関節リウマチだといわれていましたが、それでは治療開始が遅いのです。重要なことは、関節内部にある骨や軟骨に栄養を補給する滑膜という部分が炎症を起こしていることを確認することが第一です。順序が逆になりましたが、関節リウマチという疾患概念のコンセンサスは「関節腫脹が続き、それが炎症性滑膜炎というもので起きていること、さらに、その症状が続くことによって関節が破壊されていく病気」であり、これを関節リウマチと定義しています。よく耳にする関節の腫れや痛み、こわばりというのは関節の使いすぎや加齢など、リウマチと無関係の原因でも起こります。このために関節リウマチの診断には、炎症性滑膜炎の証明が必要とされているのです。
関節リウマチを発症する人は、どの年代に多いのでしょう?
高齢者と思われがちかもしれませんが、実は若い世代にも多く発症しています。20代の女性も多いので、年齢や将来設計、ご希望などを丁寧にお聞きした上で、出産を考えていらっしゃる方に対しては「妊娠可能な病気」であることを伝え、妊娠・出産の安全にも配慮した治療をしていく必要があります。また、高齢者に対しては副作用のリスクを考えた治療を考えなければなりません。今は選択肢が増えたこともあって、患者さん個々の症状のみならず、患者さんの人生を統括的に考えた治療方法をお勧めしなければならない時代になりました。治らないといわれていた時代は、どの先生が診察しても結果はほとんど同じでしたが、今日だからこそ専門の医師による診療の重要性が高いと思います。
関節リウマチの症状は、早期の発見と治療介入が重要
関節リウマチの治療は、いつ始めるべきなのでしょうか。
早期の診断と治療介入が重要です。昔は、関節障害は発病からかなり後だと認識されていたので、初期の治療に重点を置かれていませんでした。しかし多くの研究によって、関節の破壊が最も進みやすいのは最初の2年だということが明らかになりました。そして早期に治療することを目的とした診断基準が整えられ、適した薬が開発されてきたのです。ここ10年ほどの間に発症した患者さんで、最初からスタンダードな治療を続けている方には、見た目ではほとんどリウマチだとはわからないくらいの方も多いですよ。変形が起きている患者さんは20〜30年前頃の基準で治療を受けたが、10年以内の発症でも標準的な治療を何らかの理由で受けられていない方が多いようです。リウマチの可能性を心配されるなら早期に受診していただきたいです。
リウマチが心配なときは、どの科を受診すれば良いのでしょう?
内科や整形外科で、まず相談をなさると良いでしょう。さまざまな情報で心配が募りますが、情報には不正確なものや古いものも含まれています。取り越し苦労で終わるケースも少なくありませんので、まずはお近くの内科や整形外科で一次スクリーニングを受けることをお勧めしたいですね。リウマチは、症状が出なければ治療しない病気ですから、焦り過ぎる必要はありません。一方、他の膠原病は逆で、検査の数値で病気の有無や治療介入の判断をすることが多いですので、いずれにしても先にお近くのクリニックで確認なさった上で専門家の扉を叩くとスムーズでしょう。
スタンダードな治療とはどんな治療ですか?
まずは、メトトレキサートという薬剤が中心となります。ここ数年でさらに新しい薬が出てきていますし、今後も改良されていくでしょう。ただ、先ほどお話ししたように年齢や体力、将来設計、また経済的な理由も鑑みて薬を選ぶ必要があります。最近のトピックとしては、乾癬などの皮膚症状を伴うことも多い、通称SpA(エスパ)と呼ばれる脊椎関節炎の存在が認知されるようになってきています。この中に含まれている強直性脊椎関節炎や乾癬性関節炎といった病気はリウマチに非常に似ていますが、細かく調べると異なっていることがわかっていますし、使う薬も若干異なります。こういった新しい情報を知らなければ正確な診断には行き着きませんし、正しく治療を施すこともできません。リウマチ性疾患というのは、専門家に診てもらうことがとても大切な病気の一つではないでしょうか。
基幹病院レベルの外来診療をめざすクリニック
クリニックの方針を教えてください。
基幹病院レベルの外来診療を提供することのできるクリニックをめざしています。関節リウマチを全身性疾患と捉えた内科的な診療に努めています。関節リウマチの多くの患者さんに合併する肺疾患、加齢とともに顕在化する心臓・血管系の合併症、骨粗しょう症、長期にわたって服用する抗リウマチ薬による腎障害、肝障害などを当クリニックにて循環器疾患、呼吸器疾患、腎臓疾患そして糖尿病を専門とする医師とともに診させていただいています。
患者さんの立場や将来も含めて診療なさると聞きました。
それなしで的確な治療方針を立てるのは難しいと思います。一人ひとりに適した薬を正しく判断するためには、年齢や将来設計、経済面も含めて考慮しなければなりません。クリニックにはリウマチを専門分野とする看護師が複数名在籍し、細かな相談や説明を担当します。患者さんの気持ちまでサポートできるよう、彼女たちと医師とがチーム体制を組むことは医療には大切な姿勢です。関節リウマチは現在では寛解を目標に治療が行われますが、薬をやめてしまうのは難しいとされています。病気が悪くならないように、投薬でコントロールを続けます。治療は長く大変ではありますが、中には20年以上もほとんど進行が見られない方もいます。正しい治療を継続する大切さをご理解いただくことがとても大切ですので、当院では対話を大事にしています。
読者へのメッセージをお願いします。
関節リウマチは、昔と違って症状をコントロールしていける病気になりました。しかし検査のみで診断できる病気ではありません。なぜならば、リウマチ因子などは偽陰性が出やすかったり、似た症状を示す病気がほかにも存在するからです。更年期障害で最も出やすい関節痛の症状などとも混同されがちです。もしも、お近くのクリニックでのチェックで疑いがあれば、速やかに専門家を受診することが大切です。気になる症状の治療を続けても改善されないときには、セカンドオピニオンを求めても良いでしょう。早期であれば諦めなくてよい病気です。適切な情報を持つドクターのもとでスタンダードな治療をきちんと受けられてください。