向後 利昭 院長の独自取材記事
八街こどもクリニック
(八街市/八街駅)
最終更新日:2025/02/07

千葉県八街市にある「八街こどもクリニック」は、毎日多くの子どもたちが受診する地域のかかりつけクリニック。院内は吹き抜けで、天井部分の壁紙は一面きれいな青空となっており、明るく爽やかな雰囲気だ。院長の向後利昭(こうご・としあき)先生は、国立病院の重度心身障害者病棟や、市立病院での新生児集中治療室(NICU)など、幅広い経験を持つ小児科のスペシャリスト。公認心理師の資格も持ち、発達障害の相談にも応じている。インタビューでは、小児科の医師をめざした原体験や、子どもだけではなく家族とも向き合うきっかけとなったある少年とのエピソード、大切にしている治療方針から今後のクリニックの展望まで、多岐にわたって話を聞いた。
(取材日2024年10月1日)
小児科医は全身の疾患を診るゼネラリスト
どのような症状のお子さんが来院されますか?

風邪・新型コロナウイルスなどの感染症のお子さんから、気管支喘息・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー症状を訴えるお子さん、予約診療で来院される自閉症やADHDなどの発達障害のお子さんまで、さまざまなお子さんが来られます。実は最近では小児の患者さんだけではなく成人を迎えた方が来院されるケースも増えています。クリニックを開業以来、小児科医として勤務してきましたが、小児科医は全身の疾患を診るゼネラリストですので、幅広い分野の診療が可能なんです。また、お子さんを診療している過程でご家族の体調不良に気づくケースも多いですので、そのようなときはご家族も含めて診療します。
先生は公認心理師の資格をお持ちなんですね?
そうですね。資格を取得しようと考えたきっかけは、クリニックを開業する前に勤めていた国立病院で、重度心身障害のあるお子さんを診ていた時の体験からなんです。お子さんを診ていると精神的な問題や、愛着障害などの親子関係に問題を抱えているケースが多くあることに気づき、子どもだけではなくご家族を含めた家族全員へのアプローチが大切だと感じました。そのような経験から、専門知識を身につけるため資格を取ったんです。
お子さんを取り巻く家庭環境に気を配ることも大切なのですね。

そうなんです。以前の勤務先の喘息専門病棟での経験なのですが、入院していた小学校4年生の男の子が「先生、これから僕、発作になるよ」と言って目をつぶっていると、5分もたたないうちに本当に発作を起こしたのです。私は急いで酸素吸入をし、発作を抑えるためのステロイド注射を打ったのですが、後に詳しく話を聞くと、少年は母親のことを思い浮かべていたのです。彼の発作は、母親との間にあったトラブルが誘発した心因性の症状と考えられます。このような経験からも家族環境にも目を向けなければならないと思うようになりました。
些細な変化も見逃さない、きめ細かな診療を実践
先生が小児科の医師をめざした理由を教えてください。

小学校2年生の時に、ネフローゼ症候群にかかったんです。これは腎臓機能の低下によって尿にタンパクが必要以上に流れ出てしまい、逆に血液中のタンパクが減ってしまう病気で、治療のために地元の病院に入院し、小児科の先生に治療をしていただきました。ネフローゼ症候群は再発する可能性が高いのですが、それから一度も再発することなく過ごすことができています。このような幼少期の闘病経験から、小児科医師の仕事を知り、誰かの命を救う存在になりたいと考えるようになったんです。
診療を行う上で大切にしていることは何ですか?
予約診療以外の診療時間には、毎日大勢の患者さんが来院されますので、素早く正確に診療をすることが大切だと考えています。日々の診療状況から可能性の高い感染症などを想定することや、3歳までのお子さんで高熱の症状がある場合は耳・喉・尿道口などを診察して感染症の有無を確認することなど、ポイントを押さえながら多くの患者さんの診療ができるように取り組んでいます。アレルギー診療では、アレルギーを起こさないための体づくりについてお話しするようにしています。乳幼児に関しては、離乳食の進め方やアレルギー発作を起こす要因についての説明をしています。幼児以降の方の場合は、腸の状態を整えることや、皮膚のバリア機能を保つ重要性を伝えています。
発達障害に関するご相談で大切にしていることは何ですか?

お子さんだけではなくご家族も含めて診ていくことを大切にしています。また、お子さんやご家族の顔つき・しぐさ・言動を観察して、以前の診療時と少しでも違うところがあればより丁寧にコミュニケーションを取り、変化の原因は何かを確認します。些細なことでもお子さんやご家族の変化に気づくことができれば、家庭環境が発達障害を引き起こしている可能性も含めて診療することができるからです。
めざすのは、心身の健康をトータルに支えるクリニック
遠方から来院される方もいらっしゃると聞きました。

患者さんの9割近くは八街市内の方ですが、遠方から来院される方もいらっしゃいますね。東京都内からご家族で訪ねてくださる方もいるんですよ。私は、漢方などの西洋医学以外の見識や治療経験があり、幅広い治療の選択肢を提示できるという強みがあります。その点を魅力に感じて遠方から来院してくださる方が多いのかもしれません。
クリニックの今後の展望について教えてください。
さまざまな疾患の診断が素早くできるように、クリニック内で行える検査の範囲を広げていきたいですね。あとは、療育の分野に携わりたいと思っています。以前、千葉県にあるNPO法人が発達障害の子どもたちのサポートを行う施設を立ち上げる際、監修を担当したことがあるんです。八街市周辺にも障害のあるお子さんが社会的に自立して生活していけるように支援を行う施設ができればいいなと思っていて、いずれはそうした施設の設立にも関わっていきたいです。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。

0歳~6歳のお子さんをお持ちの親御さんから「どんなときに病院に連れてきたら良いのですか?」と質問されることがあります。6歳くらいまでのお子さんは「病気のデパート」といわれるほど、すぐに病気になるものです。子どもというのはそのようにして免疫力をつけていくのですが、頻繁に病気になると親御さんとしては不安ですよね。この記事をご覧になられている方も同じ悩みを抱えているかもしれません。当クリニックでは、お子さんの様子を見ていて心配な時は来院いただいたら良いとお伝えしています。そうやって何度も通院をするうちに、お子さんがどんな様子の時に診療すべきなのか親御さん自身の理解が深まっていくでしょう。7歳以降のお子さんや大人の皆さんは病気を招かないように予防することが大切です。心身ともに健康であるために「心食運休の4つの要素」、心の持ちよう・良い食事・適度な運動・十分な休息を大事にしていくと良いと思います。