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井出 広幸 院長の独自取材記事

信愛クリニック

(鎌倉市/大船駅)

最終更新日:2021/10/12

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「病は気から」には2つの意味があるだろう。1つは「気持ちによって病態の程度が左右される」ということ、もう1つは「疾患の原因は、必ずしも器質的なものではない」ということだ。「当院を訪れる患者さんのうち、体の不調を訴える人の9割は、ストレスに対する反応としての症状です」。そう話すのは、大船駅の近くで内科と心療内科の診療を行う「信愛クリニック」の井出広幸院長。同院では、超音波や内視鏡を用いた精密検査を行う一方、心理的アプローチでの診療も手がけている。「体の問題を認識する上では、心の問題も関わるというのが当院の基本認識」と語る井出院長に、内科と心療内科を併設した理由や医師をめざしたきっかけなど、たっぷりと語ってもらった。

(取材日2021年1月15日)

内科と心療内科で、心と体をトータルに診療

内科と心療内科と、一見異なる診療科を併設されていますね。

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「異なる」と思われるかもしれませんが、双方には密接なつながりがあるのです。ピロリ菌の除菌治療が進み、あと10年もすれば胃がんはなくなるといわれるほど、胃がんや胃潰瘍の患者さんは激減しています。しかし、胃の痛みや不快感を訴える方は絶えることがありません。疲れや頑張りすぎなど、心のあり方に基づいて胃の症状が表れる人が増えているのです。こうしたケースでは、精密な検査を行っても器質的異常は認められません。とはいえ、患者さんにとって痛みや不快感といった症状は確かに存在しているもの。「検査の結果、異常がないのでお帰りください」と言われて納得されるわけはありませんよね。そこに、ストレスへの対応を行うことが適していることもあるのです。こうした事例を消化器内科の医師として数多く経験してきたことから、症状への精神科的アプローチを行う心療内科を併設しているのです。

心因性の原因が考えられることを患者さんはどのように受け止めていますか?

「原因がわかって良かった」と前向きに受け止めていただけることがほとんどです。長く慢性的な症状を抱えて受診をしても、体に異常が見られないことから治療の糸口すら見つけられないという状態にあった方も多いですから。ストレートに受け止めにくいという方でも、検査結果を詳細にお伝えすることでご理解いただいたり、心理的アプローチの治療を行っていく中で時間をかけて納得されたりすることもあります。心因性の原因を探るアプローチに反感を覚える方もいらっしゃいますので、当院では独自に編み出した方法を用いています。身体症状から入り、徐々に心に迫るというものです。最初から「落ち込んでいませんか?」と尋ねるのではなく、「痛みと同時に息苦しさなどありませんか?」など、身体症状をあるがままに受け止めながら、そこに付随する心因性の症状を確認していくというものです。

どのようなご相談が多いのでしょう?

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発熱や咳、腹痛や頭痛といった一般的な症状から、よく眠れないとか息苦しいといったお悩みまで幅広くお受けしています。内科では、風邪などの感染症の治療や生活習慣病のコントロール、インフルエンザの予防接種、花粉症などのアレルギー性疾患治療などを提供しています。心療内科では会社や学校へ行けないなど、日常生活へ支障が生じたことをきっかけに受診されるケースが多くなっています。内面の問題について話すのは難しいことであり、「こんなことで受診して医師に何と言われるか」と受診をためらわれる方が多いようですが、ただでさえハードルの高い心療内科の受診を検討された時点で「よほどのこと」であると考えています。当院では、来院される患者さんは皆さんこうした状態で助けを求めていらしているという「よほどの法則」に基づき、気持ちに寄り添う診療を心がけています。

詳細な検査と薬に頼らない心理的アプローチ

各種検査にも力を入れていますね。

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心因性の症状が増えているからといって、体の異変をすぐに心の問題と捉えてしまうことはたいへん危険なことです。症状に隠された病気のリスクをすべて確認してこそ、心理的なアプローチが有用になります。当院では、いわゆる胃カメラ・大腸カメラといわれる内視鏡検査や超音波検査など、経験豊富な医師や検査技師による検査が受けられます。詳細な検査により病気が見つかれば必要な治療へとつなげますし、見つからない場合にはその事実をお伝えした上で、心のアプローチへと導きます。患者さんが納得して治療に進まなければ、望む効果を得ることは難しくなります。検査結果を前提とすることにより、患者さんは納得感を持ってその先の治療に進めるようになるのです。

心療内科診療の特徴は?

症状の安定のために薬を用いることももちろんありますが、必要最低限にとどめ、薬のみに頼りすぎない、問題の核心に迫る診療を提供しているところです。長年の診療経験によるノウハウで患者さんがご自身の内面と向き合い、あるがままに受け入れられるようになるためのサポートを行い、食事・運動・睡眠といった生活習慣や、瞑想、自律訓練法などを指導することもあります。鉄分や亜鉛、糖分など特定の栄養素の摂取状態により、うつや不安、パニックなどの症状が出ることも考えられるので、栄養状態についてのご相談に乗ったり、自身を客観視するための読書を勧めたりするケースもあります。

複数の医師が在籍しているのですね。

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はい。常勤5人、非常勤十数人と、多数の医師が在籍しています。全員がノウハウを共有し、トレーニングを受けたチームであることも当院の特徴です。心と体をトータルに診る当院の方針に共感してチームに加わる医師たちは皆、学ぶ意欲にあふれています。そんな彼らのスキルアップのため、教育面にも力を入れ、体系化して取り組んでいるのです。近年では心療内科や精神科の需要が高まり、新規受診が数ヵ月待ちとなるなどのケースも散見されているようです。そんな中でも当院では8つある診察室を稼働させ、毎月数多くの新規の患者さんをお受けしていますが、これもひとえにこのチーム力によるものです。

時代のニーズに応えるポジティブな診療を

医師をめざしたきっかけを伺えますか?

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子どもの頃の通院経験がきっかけですね。当時は、電子回路のような工学系が好きで、エンジニアになろうと考えていました。ところが、ひたむきな医師の姿を見るうち、物より人に接する仕事に就きたいと考えるようになったのです。私の基本スタンスは、普通に暮らしている人への興味なんですよ。医療と関係ないことでも、「それで? それからどうなったの?」と聞きたくなりますからね。また、そうすることで見えてきたのが、「疾患の原因は体だけでもないし心だけでもない、両者が不可分な形で併存している」ということ。両者を区別する心身二元論では、説明がつかないことが多いのです。

今後の展望を教えてください。

インターネットやSNSの普及など、テクノロジーの進化に伴って、社会全体の構造が心に負担のかかりやすいものへと変貌してきていることを感じます。生きるのに必死だった時代に比べて、虚しさや生きづらさを感じる人は増えており、今後も増えることが予想されます。心と体を不可分に診る当院のような診療スタイルは、時代に求められているものだと感じるのです。ニーズに応えるように心療内科を診療する医療機関も増えてはいますが、大切なのは心と同時に体もきちんと診ること。薬に頼りすぎることなく、患者さんの心を掘り下げて問題の核心に迫る丁寧な診療です。AI問診、オンライン診療など、テクノロジーによるメリットは取り入れながら、より多くの方により良い診療をご提供していきたいと考えています。

読者に向けてメッセージをお願いします。

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当院が強みを持つ消化器内科では、胃がん、大腸がんなどが相変わらず日本人の死因の上位を占めています。しかし、これらは早期に発見することにより治療が可能な病気です。まだ受けたことがないという方は、早めに検査を受けていただきたいと思います。心療内科受診にはネガティブなイメージも根強くあるようですが、受診を通して自身の内面と向き合い、あるがままの自分を受け入れることで、大きく成長される方を多数見てきました。生きづらさは特定の弱い人間だけが抱えるものではなく、大なり小なり誰もが抱えているもの。「改善したい」と思った瞬間から、成長への一歩が始まります。一人で抱え込むことなく、スキルを持ったプロの医師やカウンセラーとともに向き合うことで、確かな成長へとつながるのです。ぜひ、前向きな気持ちでご相談いただければと思います。

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