灘波 良信 院長の独自取材記事
医療法人あさい内科 鶴橋なんばクリニック
(大阪市東成区/鶴橋駅)
最終更新日:2025/08/01

鶴橋駅から徒歩約2分。市場の近く、にぎやかな大通り沿いにある「医療法人あさい内科 鶴橋なんばクリニック」。2023年10月、前身の「医療法人あさい内科」を灘波良信院長が継承し、新たにスタートした。灘波院長は薬学部在学中に医師を志し、医師免許に加え薬剤師免許を持つ。外来診療の他、製薬会社ではがん治療薬の開発にも携わるなど、医学と薬学の両面から患者に寄り添ってきた。現在は、糖尿病や高血圧症などの慢性疾患に加え、呼吸器疾患に対しては高い専門性を生かした診療を実践。さらに訪問診療にも力を入れ、地域を支えている。今後は診療に加えて、がん患者のサポートにも一層尽力していきたいと語る灘波院長に、その思いと展望を聞いた。
(取材日2023年10月30日/再取材日2025年7月10日)
めざすのは「癒やしの診療所」
院長は、薬剤師から医師をめざしたそうですね。

両親が薬局を営んでいたことから薬学部に進学しましたが、専門課程に進むうちに「診断や治療を通じて、直接患者さんに関わりたい」という思いが芽生え、卒業後に医学部へ進学しました。まず内科の医師としての道を志し、その中で良性・悪性疾患の両面に関われる呼吸器内科に惹かれるようになりました。特に肺がんを中心とした呼吸器腫瘍の診療に多く携わり、在籍していた科では担当患者の約8割ががん患者という環境の中で、がん診療への理解と関心を深めていきました。製薬会社ではメディカルディレクターとしてがんの治療薬の開発にも携わったこともあります。しかし、「自らその薬を使って患者さんを診たい」という思いが強く、再び臨床の現場に戻りました。
開業のきっかけをお伺いします。
もともと私は、患者さんを最後まで診療し続けたいという思いを持っていました。そんな中、前身のクリニックの院長が急逝され、継承者を探されていたことから、ご縁があり開業することにしたのです。周囲の病院に知り合いが多いため連携がしやすいことも決め手でした。後から知ったことですが、戦前に祖父がこの近くに住んでいたそうで、ここに開業を決めた時、父は泣いて喜んでくれたそうです。以前からの患者さんにも引き続き来ていただきたいと考え、クリニック名も残しています。内装に関しては大きく変えてはいませんが、これからの時代を見据えてデジタル化したいと考え、そこはこだわりを持って変更しました。電子カルテをはじめ、自動精算機を導入、掲示物をデジタルサイネージにした他、ウェブ予約システムを活用し、オンライン診療も始めました。
どのような病気を診ていただけるのですか?

風邪などの一般内科診療から、花粉症、腹痛、体のだるさ、動悸、息切れ、健康診断の再検査、ワクチン接種まで、幅広く対応しています。中でも喘息などの呼吸器疾患については、専門性の高い診療を提供しています。また新型コロナウイルスの罹患後症状のご相談にも対応しています。呼吸器の症状を訴えて来院された方の多くが、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を合併しているケースも多く、そうした慢性疾患を含めた全身管理にも力を入れてきました。その経験を生かし、当院でも高血圧や糖尿病などの治療に積極的に取り組んでいます。院内はバリアフリー設計となっており、つえを使われる方や車いすをご利用の方でも安心して通院いただけます。お買い物のついでなど、ふらっと立ち寄れるような、身近で相談しやすい「癒やしの診療所」をめざしています。
呼吸器疾患やがんの専門知識を生かした幅広い診療
呼吸器疾患を専門とするクリニックは数少ないそうですね。

ええ。この場所に開業したのも周辺に呼吸器専門のクリニックがほとんどないため、「お力になれたら」という思いもありました。咳や息切れといった症状はとても身近だからこそ、「そのうち治るだろう」と放置してしまう方も多いです。呼吸器の病気は、きちんと原因を調べて適切な治療をすれば、改善が望めるケースも多いと言われています。当院では呼気NO検査や肺気腫のチェック、呼吸機能検査など、さまざまな検査に対応しています。また間質性肺炎など専門的な対応が必要な疾患にも診療可能です。間質性肺炎は、副作用が多い薬を使って治療するため、基幹病院に通われる患者さんが多いですが、治療を開始して数年たてば副作用の程度もわかるので、近くのクリニックに移ることもできるようになります。当院では、そういった患者さんも受け入れています。
無理をせず、早めに受診することが大切なのですね。
そうです。私は、どの患者さんにもつらい思いはできるだけしてほしくないと思っています。だからこそ、「どうすれば早く良くなるか」「苦しくなく治療ができるか」を考えながら診療にあたっています。睡眠時無呼吸症候群の治療や、スギ花粉・ダニに対する舌下免疫療法などにも対応しているのも、無理せず、心地良く毎日を過ごすことは、生活の質を高め、健康長寿にもつながると思うからです。検査もできるだけ負担が少ない方法を取り入れるようにしています。インフルエンザや新型コロナウイルスの検査では、従来のように鼻の奥に綿棒を入れる方法ではなく、画像診断によるウイルスチェックを導入しました。写真を撮るだけの検査方法で、比較的早い段階でも検査結果が得られるといわれています。
訪問診療もされているそうですね。

もともと私には「患者さんを最後までしっかり診たい」という思いがありましたので、訪問診療を始めたのはとても自然なことでした。通院が難しくなった方のご自宅に伺い、健康管理はもちろん、在宅酸素療法や人工呼吸器のサポートなどを行っています。私は日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の資格も持っており、これまで抗がん剤の副作用管理や全身のサポートにも関わってきました。大腸がん・胃がん・肺がんなど腫瘍部位に限らず終末期医療(ターミナルケア)に対応しています。訪問診療というと「寝たきりでないと頼めないのでは」と思われがちですが、実際には「病気で外出するのが難しい」といった理由でもご利用いただけます。また、「そろそろ訪問診療が必要かも」「将来のために話を聞いておきたい」といったご相談も、いつでもお問い合わせください。
患者に寄り添ったケアやフォローに尽力
診療時に大切にしていることはありますか?

私が大切にしているのは、「患者さんにできるだけ疑問を残さず帰っていただくこと」です。診察の最後には必ず「他に何か聞きたいことはありませんか?」と声をかけるようにしています。そのひと言がきっかけで、「そういえば最近こんなこともあって……」とまったく別の症状を聞くことができたり、そこから検査につながって新しい病気が見つかったりすることもあるかもしれません。患者さんの中には、「これくらいのことならまあいいか」と遠慮してしまう方も多いのではないでしょうか。でも、その小さな声を拾えることが、病気の早期発見や予防につながることもあると思っています。
今後の展望はありますか?
がんの患者さんの診療やサポートに、もっと力を入れていければと考えています。がん治療は、手術・放射線治療・抗がん剤治療が柱となりますが、多くは入院設備のある大きな病院で行われます。ただ、そうした病院では十分に話す時間が取れなかったり、遠方で通院が大変だったりと、不安や困り事をゆっくり相談できないこともあります。例えば、治療そのものは基幹病院で行いながら、日常のちょっとしたご相談や、食事が取れないときの点滴、内服の抗がん剤の処方などは当院が行うなど、病院と連携してサポートすることで患者さんの負担も減らせると考えています。緩和ケアも行っていますし、ご自宅での療養が難しい場合には、緩和病棟や入院先の手配などもお手伝いさせていただきます。がん治療の過程で生まれる「困った」や「どうしよう」に寄り添っていければと思います。
読者へメッセージをお願いします。

病院勤務時代には、診療が忙しく、患者さんとゆっくり話す時間が取れないことにジレンマを感じていました。ですから今は、「患者さんにとって相談しやすい場所でありたい」「何かあったときにすぐ頼っていただけるような存在でありたい」と日々診療にあたっています。予約優先ですが、ご予約がなくてもできる限り対応していますので、どうぞお気軽にお越しください。最近は日本語がまったく話せない方も多くいらっしゃるため、受付では翻訳機を導入し、スタッフも使えるようにしています。今後も「ここに来て良かった」と思っていただける、温かくて安心できるクリニックをめざしていきたいと思っています。