小川 真滋 院長の独自取材記事
おがわ耳鼻咽喉科
(安来市/安来駅)
最終更新日:2025/02/20

JR山陰本線・安来駅から車で約5分、安来大橋を渡って700mほど進んだ右手にイルカの親子のロゴマークが目を引く「おがわ耳鼻咽喉科」の看板が見えてくる。1999年に、住民の声に応えて地元出身の小川真滋院長が開業して以来、四半世紀にわたり、地域医療に貢献してきた。自身もアレルギー性鼻炎に悩まされ、40歳にしてスギ花粉症デビューをした小川院長は、アレルギー疾患はもちろん、急な耳や喉の痛みで受診する子どもから、難聴で補聴器の相談に訪れる高齢者まで、年代を問わず「耳・鼻・喉のかかりつけ医」として親身に診察する。インタビュアーの質問に対して、穏やかに丁寧に答えてくれた小川院長。その言葉の端々に地元愛と医療への熱い想いや強い責任感が感じられた。
(取材日2024年12月26日)
地元の声に応えて開業し、安心と信頼の医療を追究
開業までの道のりからお聞かせください。

僕は、安来市で生まれ育ちました。鳥取大学医学部を卒業後、母校の大学病院や系列病院でキャリアを積み、鳥取赤十字病院で耳鼻咽喉科の副部長として幅広い疾患に対応し、外科手術も数多く手がけていましたが、そんな折、安来市で耳鼻咽喉科を開業していた先生が他界し、地域住民が困っていると小学校の同級生たちから聞いて「地元の役に立ちたい」という想いで開業を決意しました。クリニックがある場所は幹線道路からのアクセスが良い一方で、クリニックや駐車場の目の前にある道路は交通量があまり多くないので、子どもや高齢者も多く来院する診療科としては理想的な立地でしたね。建物や内観などは、患者さんが安心して受診できるように、清潔感はありつつも病院っぽくない温かな雰囲気にこだわりました。
なぜ耳鼻咽喉科の医師を志したのですか。
祖父から医学部への進学を強く勧められ、初めのうちは反発していました。しかし、高校2年の時に「医師は、大きな責任を伴い、並大抵ではない努力を必要とする職業。一生を捧げるにふさわしい」と思ったのです。耳鼻咽喉科を専門に選んだ理由は、身近な医師である叔父の専門が耳鼻咽喉科で、奮闘している様子を見聞きして、耳鼻咽喉科という科目に親近感を持ったのが一つ。そして、自分自身、アレルギー性鼻炎があったことも大きかったですね。しかし、実際に医学生として専門を選ぶにあたって、耳鼻咽喉科は「外科と内科、両方の要素があること」「耳・鼻・喉と、複数の器官を扱い、五感のうち視覚以外の全てに関われること」に魅力を感じ、この道を選びました。大学院では、精神科の先生と共同で睡眠時無呼吸症候群について学んだほか、教授とともにめまいの研究に注力して学位を取得しました。
診療理念やモットーをお聞かせください。

診察では、患者さんや付き添いのご家族にしっかり説明することを心がけています。症状や治療についてご理解いただくのはもちろん、信頼関係を築くことも大切。患者さんと医師、お互いに人間ですから、気持ち良く接したほうが治療もスムーズに進むので、患者さんが接しやすいと感じ、気軽に相談していただける医師でありたいですね。地産地消という言葉がありますが、クリニックのモットーとして、安来の患者さんは可能な限り当院で治療を行いたいと考えています。手術が必要な場合は大学病院や総合病院にお願いしていますが、その前段階の検査や診断を的確に行い、責任を持って送り出す上で、勤務医時代に数多くの手術を経験したことが生かされていると思います。また、かつては修業時代に耳鼻咽喉科全般を幅広く学びましたが、細分化が進み、特定の分野のスペシャリストもいますので、地域の医師のネットワークを活用し、連携して治療にあたっています。
中耳炎、花粉症、難聴、めまいなど、多様な疾患に対応
どのような症状で受診する方が多いですか。

耳鼻咽喉科は、「耳鼻咽喉科頭頸部外科」とも呼ばれ、幅広い領域をカバーしています。当院でも、鼻炎や副鼻腔炎から、外耳炎や中耳炎、耳鳴、めまい、難聴、喉の痛みまでさまざまなお悩みに対応しています。さらに、嗅覚障害や味覚障害、顔面神経まひ、睡眠時無呼吸症候群といった症状のご相談にも応じています。中耳炎をはじめ、お子さんは耳鼻咽喉科の急性疾患にかかることが多いですから、夕方は子どもの患者さんであふれて小児科さながらですが、あらゆる年代の患者さんが来院します。長年、診療を続けてきて、花粉症やアレルギー性鼻炎の患者さんは右肩上がりに増えていると感じます。2人に1人は花粉症ともいわれていますからね。僕も、長年、ハウスダストが原因のアレルギー性鼻炎に悩まされてきましたが、40歳にしてスギ花粉症を発症し、患者さんから「仲間入りですね」なんて言われましたよ(笑)。
力を入れている診療分野はありますか。
高齢者の難聴です。増加する認知症の最大のリスク要因は難聴だとされています。人とのコミュニケーションが取れなくなると、脳の働きは衰えます。何度も聞き返して「もういいよ」と話をやめてしまうといったことが続くと、会話がなくなって家庭内で孤立してしまう。逆に、早い段階で補聴器を使用するなど対策をすることで認知症のリスクを減らすことが期待できるというデータがあります。情報を見聞きして考えたり、誰かと会話すること自体が「頭の体操」になっているということですね。聞こえづらくなってきたという方は、ぜひ早めにご相談いただきたいです。一方で難聴は高齢者だけの問題ではなく、最近は若い人の「イヤホン難聴」も問題になっています。イヤホンを装着して大音量で音楽を聴いたり長時間動画を見たりすることで、じわじわ難聴が進行するというものです。予防のための啓発活動も、耳鼻咽喉科の医師の務めなので、取り組んでいきたいです。
クリニックの強みを教えてください。

開業から四半世紀が経過し、先進の機器や設備を備えているわけではありませんが、長年続けてきたからこその強みがあります。それは献身的なスタッフの存在です。当院には、開業当初からのスタッフをはじめ、長年、勤務している看護師や事務員が多く、一致団結し、お互いに協力し合ってくれています。患者さんへの接遇はもちろん、細かいところにもよく気を回してくれます。時には看護師が事務員のヘルプに入ったり、医師や看護師がする必要がない作業は事務員もサポートしたりと、スムーズに診察が行えるように動いてくれてとても助かっていますね。顔なじみのスタッフの存在は、患者さんの信頼と安心につながっていると思います。
耳・鼻・喉の悩みは、気軽に相談してほしい
今度の展望をお聞かせください。

安来市は人口減少や少子高齢化も進んでいますが、市民の皆さんが少しでもクオリティーの高い生活を送れるように支えるのが、医師の役目だと考えています。地域の身近な耳鼻咽喉科クリニックとして、多くの患者さんにご満足いただける医療を提供できるよう、全力を尽くし、頑張っていかなければと思います。当院での診療だけでなく、小・中・高と、学校の耳鼻科健診も担うなど地域医療への責任も大きいです。「医者の不養生」とならないように、自分自身の体調管理にも力を入れなければいけませんね。
健康維持のためになさっていることはありますか。
50歳を過ぎてから登山を始め、日本百名山を踏破したのが自慢です。冬山は危険なので、夏から秋にかけて、週末やお盆休みを利用して挑戦しました。印象に残っているのが、最初に登った北海道の大雪山。7月下旬だというのに、標高が高い場所では雪があり、踏みしめて歩きました。雄大な景色に圧倒されましたね。登山以外では、ランニングも好きで、ハーフマラソンにはよく出場し、フルマラソンも4回、完走しましたよ。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院では、あえて予約制を取っていません。中耳炎や咽頭炎など、急性の症状も多いのに、「予約でいっぱいです」と、お断りするわけにはいきませんからね。以前は、当日の朝からお名前を書いていただいた順番に診察していましたが、新型コロナウイルス感染症の流行時に、番取りで人が集まるのは良くないということで、それも取りやめました。花粉症の時期に混雑するなど、ご迷惑をおかけすることもありますが、頼って来てくださったすべての患者さんを診て差し上げたいと考えていますので、耳・鼻・喉にお悩みがあれば、気軽に相談に来ていただきたいです。