岩永 耕一 院長の独自取材記事
岩永耳鼻咽喉科
(美濃加茂市/美濃太田駅)
最終更新日:2021/10/12
「シンプルにわかりやすく、言うべきことはきっちり言うのが僕の信条」と口にする、「岩永耳鼻咽喉科」の岩永耕一院長。その言葉のとおり、取材中、首尾一貫して自身の経歴や専門分野などを明朗に語る姿に、患者にも同じような口ぶりでやりとりをしているのだろうと、診療時の情景が浮かぶようだった。耳鼻咽喉科の診療全般で多くの研鑽を積んだ岩永院長は、中でも睡眠時無呼吸症候群についてとりわけ力を注ぎ、専門性を磨いてきた。耳鼻咽喉科、睡眠時無呼吸症候群の専門家として手腕を発揮し患者の診療にあたる岩永院長に、医療者として、一人の大人としてなすべきことは何か、じっくり語ってもらった。
(取材日2021年4月30日)
耳鼻咽喉科医は「首から上」を診る専門家
開業されたのはいつ頃なのですか?
2000年に開業したので、もう20年以上前ですね。出身も育った土地も違うんですけれど、大学進学を機に東海地方に縁ができましてね。病院勤めを経て、この場所で開業しました。もともと、医師の家系の出で、祖父は産婦人科、父は耳鼻咽喉科の医師。僕が耳鼻咽喉科医になったのも、少なからず父の存在が影響していたと思います。
耳鼻咽喉科が得意とする診療について教えてください。
耳鼻咽喉科は、その名のとおり耳と鼻、咽頭を診る診療科で、首から上に起こる症状のほとんどが守備範囲です。首から上で起こる、誰にとっても身近なものといえば、風邪の症状です。多くの人は、風邪をひいたらまず内科を受診するでしょうが、僕としては耳鼻咽喉科の専門領域であるとお伝えしたいです。それはなぜか、風邪の代表的な症状を挙げてみたらわかります。風邪の症状で代表的なのは、咳や鼻水、喉の痛み。つまり多くの症状は、鼻や喉で起こります。鼻や喉を専門に診る診療科といったら、耳鼻咽喉科ですよね。こう整理して説明されたら、風邪のときには耳鼻咽喉科、というのも理解しやすいかと思います。当院でも、風邪をはじめ耳や鼻や喉に関するお悩み全般に応える診療を行っています。
院長は、睡眠時無呼吸症候群を専門とされてきたそうですね。
睡眠時無呼吸症候群に関する専門的な知識と治療技術を備えていると自負しています。“無呼吸”と聞いて、呼吸器内科を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、呼吸の出入り口は鼻と口です。そこがふさがって呼吸が止まってしまうのですから、とりわけ診断において耳鼻咽喉科の専門性は発揮されると思っています。敷地内には睡眠時無呼吸症候群をはじめ、睡眠障害に関する検査・治療が行える施設を設けています。診療に関わる看護師と検査技師は、専門的な勉強をしてきたエキスパート。患者さんから質問や相談をされた際にも、しっかり受け答えできる知識を持っています。
患者の悩みを深く掘り下げ、より適切な治療につなげる
患者さんは近隣に暮らす方が多いですか?
睡眠時無呼吸症候群の治療を求めて、県外など遠方から通われる方もいますよ。当院の場合、大人はもちろん子どもの睡眠時無呼吸症候群も診ていますから、調べてたどり着く人も少なくありません。あとは、例えば引っ越しを理由に、元いた地域で診療する睡眠時無呼吸症候群の専門の先生から紹介される、といったこともあります。とはいえ、一般的な耳鼻咽喉科の診療も含めたら、メインはやっぱり地元の方。小さな子どもから90歳近いお年寄りまで、年齢層も幅広いです。
診療時、どんなことを心がけていますか?
当たり前のことなんですが、あんまり時間をかけすぎない、患者さんが訴える症状をちゃんと掘り下げるというのは、いつも必ず守っています。例えば、患者さんが「咳が出る」と訴えているとします。僕はそこで、「どの辺りが苦しくて咳が出るの?」「喉はどんな感じがする?」とさらに踏み込んで聞きます。胸のどこが苦しいのか、喉に違和感があるのかがわかれば、咳の原因が気管支にあるのか、喉にあるのかが判別しやすくなりますから。一口に咳と言っても原因はさまざまですし、「咳が出る」だけでイメージできることはほんのわずかです。患者さんから大事なヒントを引き出して、診るべきところを素早くきっちり診る。そうすれば、治療がより適切になりますし、時間をかけずに済むんですよ。
院長のきっぱりわかりやすい話しぶりも、診療の特徴でしょうね。
これは僕自身の性分でもありますが、のらりくらりした語り口ってやきもきしちゃうんですよ(笑)。もし僕が体調を崩して医師に診てもらうとなったときには、「シンプルにはっきり話してほしい」って思います。どうして調子が悪いのか知りたくて受診しているので、少しでもはっきりわかるとありがたいですね。だから僕は診療の際、はっきり理由がわかったことも、1回の診療では詳しくわからなかったことも、全部ひっくるめて「その時言えることをはっきり伝える」「現段階で“大丈夫”と言えることはちゃんと言い切る」のを信条にしています。処置も、その場でできるものは積極的に行います。もちろん、患者さんの同意のもとでですが。
小さなお子さんの処置などは、なかなか大変そうに感じますが……。
子どもはどうしても嫌がりますからね。だからこそ、嫌がっていたらさっさと終わらせてあげるに尽きるんですよ。だって、そこで処置しないと、苦しい・つらい思いがずっと続いてしまうんですから。鼻汁を吸い出すのも、多少我慢してもらって鼻汁をきれいさっぱり吸い出したほうが、子ども自身が「すっきりした」と実感しやすくなると思います。厳しいことを言えば、親御さんが口にする「子どもが嫌がっていてかわいそう」という言葉は、本当に子ども自身にとって優しいものなのか、考えてもらいたいです。それよりも、子どもが嫌がっていたら、処置中に暴れないようにしっかり抱きしめてもらって、処置が終わったら「よく頑張ったね」って褒めてあげてほしいです。そしたら子どもは落ち着きますから。
理想は「言葉で治す」診療。真摯に実直に患者と接する
睡眠時無呼吸症候群は、放置するとどんなリスクが考えられますか?
睡眠時無呼吸症候群を患っている人のうち、7割以上が高血圧、約4割が糖尿病や脂質異常症、不整脈、うつ病などを合併しているとされています。睡眠時無呼吸症候群は、言ってしまえば睡眠時に呼吸が止まってしまうだけです。ですが生活習慣病や精神疾患との関連が強いので、そのままにしておくと合併する病気の影響から、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞、といった脳血管や心臓血管の疾患、うつ病の重症化による自殺のリスクが高くなるとされています。裏を返せば、睡眠時無呼吸症候群の改善が合併症の発症や進行を抑えることにつながる可能性もあるわけです。ですので、例えば高血圧の薬を飲んでいて、いびきをよくかいている、という場合には、一度検査を受けることをお勧めします。
診療を支えるスタッフさんについてもご紹介ください。
うちのスタッフはみんなしっかりしていて、ちょっとした気配りができる人たちだと思います。僕から何かを言うことはあまりなくて、むしろ診療が長引いていると急かされることも。あと、カルテにちょっとしたメモを付箋に書いて残してくれているんです。例えば「○○さん、先日お孫さんが産まれた」とか。受付や会計の時にスタッフに話しているんでしょうね。次に受診された時に、僕が「お孫さん産まれたんだってね」と言うと、患者さんはすごく驚いて喜んでくれます。些細なことかもしれませんが、こういったやりとりってすごく大事だと思うんですよね。
最後に診療に対する思いと、今後の展望についてお聞かせください。
小さい頃、祖母に「将来あなたがお医者さんになったら、薬ではなく言葉で治すお医者さんになってほしい」と言われたことがあります。思えば医師になってから、ずっと「伝える」ことを大事にしてきましたね。僕は患者さんに対して、家族のような距離感で「言うべきことは言う」を貫いてきました。時には、患者さんにとって耳の痛い話もします。でもそれは、言わないといけないことだと思っているからです。それが医師として、人としての礼儀ですから。開業から20年以上がたって、患者さんはもちろん僕も年を重ねました。ゆくゆくは専門の睡眠時無呼吸症候群の診療をより重点的に取り組めるよう、診療体制なども見直していきたいですね。