山内 忠茂 院長の独自取材記事
山内クリニック
(新居浜市/新居浜駅)
最終更新日:2021/10/12

消化器外科医師として、愛媛大学医学部附属病院や愛媛県立中央病院など基幹病院で経験を積み、地元である新居浜市に「山内クリニック」を開業した山内忠茂院長。外科、胃腸科、内科、リハビリテーション科の診療に対応している。開業以来二人三脚で地域医療に貢献してきた妻の山内寿恵先生が2017年に逝去し、2年にわたるつらい闘病生活をそばで支え続けた山内院長は寿恵先生の遺志を継ぎ、現在も診療を続けている。悲しみを乗り越え、地域の患者のために尽力する山内院長に、地域医療への想い、また病気の早期発見・早期治療のための検診の重要性などについてじっくりと話してもらった。
(取材日2020年9月24日)
地域医療に携わり、病気の早期発見に尽力
ご開業されるまでの経緯について教えてください。

私は1986年に愛媛大学医学部を卒業後、母校の第一外科に入局し、愛媛大学医学部附属病院や愛媛県立中央病院、愛媛県立今治病院で一般外科、麻酔科、消化器外科、血管外科を研修しました。その後、大学の医化学第一教室で、肝臓での脂質代謝における自律神経の役割を調べることをテーマとした研究に取り組みました。研究生活は5年にわたり、それまでの人生で最も苦難の時期でしたが、指導教官が熱心にご指導くださり、臨床とはまた違った素晴らしい経験となりました。1998年に医学博士を取得した後は、今治市の白石病院や松山市の吉田病院などで救急医療やプライマリケアを学び、故郷である新居浜市で開業することになりました。地域で開業するとなると、全身麻酔の手術や入院設備を伴っての開業は難しい。勤務医時代の仕事とはまったく変わってしまうことにジレンマはありましたが、自分の力でどこまでできるか、そこに魅力を感じて開業を決めました。
診療内容や来院される患者さんについて教えてもらえますか?
高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病をはじめとする内科疾患、整形外科的疾患、一般外科、皮膚科疾患の治療からリハビリテーションまで、幅広く地域の皆さまのお役に立ちたいと思っています。患者さんの層は高齢の方々が中心ですが、風邪や下痢などの胃腸症状、外傷で来られる若い方もいらっしゃいます。最近はグループホームへの訪問診療も定期的に行っています。グループホームでも看取りを行うようになったので、患者さんの最期に立ち会う機会も増えています。
クリニックとして注力されている取り組みについて教えてください。

もともと消化器外科を専門とする外科医師ですから、勤務医時代は胃がんや大腸がんなどの手術的治療を行うことが仕事でしたが、開業医となった現在は病気の早期発見が私の使命。外科医師として経験してきたからこそ、その重要性は強く感じています。悪性腫瘍をいかに早く見つけるか、そのための検査には特に力を入れています。性能の高さにこだわった全身ヘリカルCT装置やエックス線高精細画像デジタル化装置、経鼻・経口の胃内視鏡検査装置、腹部用超音波診断装置を備え、肺がんや胃がん、大腸がんなどの早期発見に努めています。
患者の生活や社会的背景も踏まえた診療を行う
診療の際に心がけていることはどんなことでしょうか?

長いこと通院されている患者さんのことはだいたい理解しているつもりですから、お一人お一人に合わせた接し方、話し方をするように心がけています。そして、定期的に診ているからこそ、患者さんの体調の異変にはできるだけ早く気づけるように注意して診察しています。患者さんから具合が悪いとき、ちょっとおかしいと感じたときに遠慮なく話していただけるように、接しやすい雰囲気も大切。自覚症状が出てからではかなり病状が進行している場合もありますから、ある程度定期的に検査を受けることもお勧めしています。
先生が医師として感じるやりがいについて教えてください。
外科医師として勤務していた頃は、がんなどの疾患を手術で治していくことにやりがいを感じていました。ですから疾患を診るという感覚があって、患者さんのことを知ろうという気持ちが薄かったように思います。異動も多かったため、一人の患者さんを長く診ていくということがなかったんです。それが開業すると、患者さんが老いて亡くなるまでの期間を診続けることになりますから、人間の生老病死を実感しますね。私も開業してまもなく20年になりますが、人として患者さんと関わっていく中で、ようやく自然と地域の方々の生活感がわかるようになってきた気がします。地域のかかりつけ医として患者さんの生活や社会的背景まで理解し、深く付き合っていくことは今のやりがいでもあります。それから、やはり患者さんから「先生のおかげです」など、感謝のお言葉をいただくとき。医師冥利に尽きる瞬間ですね。
特に思い出深い患者さんとのエピソードについて教えてください。

愛媛大学医学部に入局して初めて担当した患者さんは、肺がんを患っている50代くらいの女性だったのですが、新居浜の方だったんですね。手術を終えて退院されたのですが、それから数年後、私が開業をしてから今度はその方のご主人が通院されるようになりました。私が新居浜市で開業したことを知って来てくださったんです。それから定期的にかかりつけ医として診させていただく中で、しばらくして体調が悪いということで精密検査をしたらご主人にも肺がんが見つかって…。すぐに基幹病院に紹介して適切な治療につなげることができたのですが、それは印象深い出来事として今でもよく覚えています。
地域の患者に愛されるかかりつけ医をめざして
3年ほど前に亡くなられた奥さまの寿恵先生は、精神科医師として地域医療に尽力されていたそうですね。

はい。妻は高知医科大学を卒業後、香川県の三豊総合病院や愛媛大学医学部附属病院などで精神科医師として経験を重ね、当院を開業時から支えてくれました。教育熱心で、しっかり者で、家族愛に満ちた人でした。うつ病や神経症、心身症などに悩む幅広い年齢層の患者さんに寄り添うとともに、児童青年期の精神症状や老年認知症の診療にも熱心に取り組んでいて、そんな彼女のもとにはたくさんの患者さんが訪れていて……。いつも予約でいっぱいでしたね。病気が発覚したのは、2015年の年明けのことでした。体調不良を訴えたため、私が腹部超音波検査を行ったところ、肝臓に多発性の腫瘍を発見したのです。その後の精密検査によりS字結腸がんの多発性肝転移StageIVと診断され、2年間の闘病の末、2017年に亡くなりました。切なく悲しい闘病生活となりましたが、この日々があったからこそ、家族の絆はより深まったように感じています。
お忙しい日々だと思いますが、余暇の楽しみはありますか?
昔はスポーツマンだったんですよ。中学・高校時代は柔道部、大学時代はラグビーに打ち込んでいましたが、歳には勝てませんね。今はもっぱらスポーツ観戦。プロ野球のテレビ中継を観ながら晩酌をするのが1日の終わりの楽しみです。それから2019年のラグビーワルドカップ。あれは燃えましたね。ラグビーの根幹にある「One for all, all for one.」、一人はチームのために、チームは一人のためにというスポーツマンシップに基づいたラグビースピリッツに、日本国民が共感したからこそ、あれほどの盛り上がりを見せたのではないかと感じています。また、スポーツ好きな私ですが、クラシック音楽や絵画が好きだった妻の影響で、東京への出張時などは美術館に行くことも楽しみにしているんです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

がんの治療は、年々進歩しています。ですからある程度初期の段階で発見ができれば、がんと診断されても相当の期間、延命することが可能になってきています。早く見つけるほど、完全寛解まで持っていける可能性が高まるからこそ、意味のある検査を定期的に行うことが大事。精度の高い検査でないと発見できない疾患もありますから、一般的な健康診断や人間ドックで要再検査の結果が出た場合は、できるだけ早く精密検査を受けることを強く勧めます。がんの検査方法も年々進歩していますが、そういった先進的な検査を受けるにはまだまだ費用面の負担が大きいため、ハードルの高さがあります。ですから経済的・身体的負担を少なく、早期発見につながる精度の高い検査ができるよう、今後も取り組んでいきたいと考えています。