谷仲 謙一 院長の独自取材記事
やなかクリニック
(宝塚市/宝塚駅)
最終更新日:2026/01/30
JR宝塚線・阪急宝塚線の宝塚駅から徒歩約5〜6分、閑静な住宅地の一角に「やなかクリニック」がある。開業25年を迎える地域密着型のクリニックで、外来診療と在宅医療の両面から地域の健康を支えている。院長を務めるのは、先代からクリニックを引き継いだ谷仲謙一先生。内科、循環器内科が専門で、大学病院などで先進的な治療に携わる一方で、地域医療の大切さを実感して同院の後継者となった。脳神経内科を専門とする医師、看護師やスタッフとの連携を生かして、地域で専門性の高い診療を提供することに努めている。「患者さんとご家族に寄り添う気持ちを大切にしています」という谷仲院長に、同院の診療ポリシーや地域で早くから取り組んできた在宅医療の特徴などについて話を聞いた。
(取材日2025年12月27日)
地域に根差し外来診療と在宅医療の両方に注力
医師をめざしたのはお父さまの影響ですか?

当院は2000年に父が開業したクリニックです。住まいとは別だったので、開業後に父が診療する姿にふれたことはあまりないのですが、小学生の頃に勤務医として病院で働く父を見て「格好良いな」と思っていたことを覚えています。父から直接「医師になってほしい」と言われたことは一度もないのですが、父への憧れもあって自然に医学の道へ進みました。
先生のご経歴を教えてください。
医科大学卒業後は、大阪の基幹病院に勤務して循環器内科の診療を経験しました。その後、神戸大学医学部附属病院で肺の動脈に対するカテーテル治療に携わり、その技術指導のためにフランスの大学病院に赴任しました。そうした取り組みをきっかけに、フランスの別の大学病院、タイの大学病院からも招聘を受けて現地で指導に携わっています。フランス滞在時に、子どもが医療機関の受診が必要になったことがあり、現地の人々の生活の中に定着しているホームドクターの大切さに気づけたことも貴重な経験です。
早くから在宅医療に取り組まれているそうですね。

父はこの地域で在宅医療を早くから提供しており、当院は在宅療養支援診療所、在宅緩和ケア充実診療所となっています。父の訪問先での様子を目にする機会はなかったのですが、父はコロナ渦でも在宅診療を続け、新型コロナウイルス感染症に罹患した患者さんに対しても訪問診療を行っていました。患者さんやご家族からさまざまなお話を聞かせていただくこともあり、父が気持ちに寄り添う診療を重視してきたことに気づかされました。治療はもちろん大切ですが、特に在宅医療ではそれ以外の部分も大事だということを改めて感じています。
こちらで地域医療に携わるようになったきっかけは?
以前から週1回、土曜日の診療を手伝っていました。しかし、体調のこともあって、父が診療の中心から外れることになり、2024年の5月から副院長として診療を開始しました。院長を務めるようになったのは2025年12月からです。病院時代には病気を治療することが最重要課題でしたが、当院は地域に根差したクリニックなので診療のめざすところがかなり異なります。外来診療、在宅医療の両方に力を注いでおり、外来診療では病気を予防することや、早期発見することが求められます。循環器でいえば、動脈硬化や高血圧が心筋梗塞などの合併症につながらないように対応していくことが大切です。一方、在宅医療では、最期の瞬間まで患者さんとご家族の気持ちに寄り添って必要な診療やケアを提供することを大切にしています。
在宅でも専門性の高い診療を提供したい
外来診療にはどのような患者さんが来られますか?

内科全般のご相談で来られ、地域的にご高齢の患者さんが多いですね。私は、日本内科学会総合内科専門医と日本循環器学会循環器専門医の資格を取得しており、生活習慣病などの他、循環器疾患の患者さんも少なくありません。一方、神経内科の専門的な診療を提供できるのも当院の特色です。日本神経学会神経内科専門医の資格を持つ義妹の裕美子医師が、パーキンソン病やALSといった神経難病や、めまい、ふるえ、片頭痛、認知症などに対応しています。脳神経内科の診療を受けられるクリニックは限られていますので、お困りのことはお気軽にご相談いただきたいですね。
生活習慣病に対する先生の診療姿勢を教えてください。
生活習慣病の場合、生活改善のための取り組みと、薬を使った治療の両方が重要です。当院でも、生活改善のためのアドバイスを提供しており、現状の生活を改めない場合のリスクについても丁寧にお伝えします。とはいえ、それでもタバコをやめられないなど、長年続けてきた習慣を改めるのは決してたやすいことではないということを、忘れないようにしています。薬についても、まずは食事や運動の改善に取り組んでもらい、改善が難しい場合に薬による治療を提案するという順序です。ヘモグロビンA1c、コレステロール値がその場で確認できる検査システムを導入しており、生活改善や治療の経過を迅速に確認できます。
こちらの在宅医療の特徴は?

24時間365日対応で、緊急時にも連絡が取れる体制を整えています。神経疾患に対応できる脳神経内科の裕美子医師が在宅医療に携わっていることも、大きな特徴だと思います。ご高齢になると、パーキンソン病などで通院が難しい方も増えますが、宝塚エリアで脳神経内科の在宅医療を提供しているところは、ほとんどありません。呼吸器系では非侵襲的な人工呼吸器(NPPV療法)の患者さんにも対応可能で、今後はALSなどで人工呼吸器を装着している方の在宅医療にも対応していきます。一方、私は日本内科学会総合内科専門医として、幅広い内科疾患に対応しており、在宅療養支援診療所、緩和ケア充実診療所として末期がんに対する緩和ケアや、看取りも提供します。当たり前のことですが、地域の介護職としっかりした連携体制を整えており、医療法人内にも訪問看護、訪問リハビリテーションの機能を備えています。
どのような方が在宅医療の対象ですか?
対応可能なエリアは、北部の一部を除く宝塚市全域、名塩や生瀬地域の西宮市と伊丹市の一部です。個人のお宅の他、施設などにも訪問しており、当院から車を使い20分で行けるエリアが目安です。何らかの理由で通院が難しい方が対象で、私が在宅医療を開始してからの1年半でお断りした患者さんはなく、基本的にはすべて受け入れている状態です。手術後の短期間のみの利用も可能で、回復して通院が可能になってから、外来診療に切り替えるといったケースにも対応します。訪問は月に2回、状態が心配な方は週1回で、医師、看護師、診療アシスタントが2〜3人体制で訪問します。
生まれ育った宝塚の地域医療に貢献する
多くのスタッフさんが協働されていますね。

医師の他に、看護師、事務スタッフと訪問診療アシスタントが在籍しており、ほとんどが父の時代から勤めている方なので、私が教えてもらうことのほうが多いくらいです。本当に頼りになります。また、医療法人内の訪問看護や訪問リハビリのスタッフも、毎朝当院に来ていろいろな話をしてくれるなど、施設間・スタッフ間の密な連携も取れています。
休日はどのように過ごされますか?
これといって趣味がなく、今は子育てが趣味といったら怒られますかね(笑)。外来診療と訪問診療で忙しく、十分な時間は取りづらいのですが、8歳の息子と4歳の娘と遊ぶことが楽しみで、リフレッシュの時間にもなっています。
今後の展望を教えてください。

当院は住宅街にあって地域に密着したクリニックです。地域の方に必要とされているクリニックだと思いますし、在宅医療を必要とされる方は今後も増えていくので、当院をしっかりと存続させていくことが私の役割だと考えています。近年は訪問診療を専門とするクリニックが増えていますが、地域で長年診療を続けてきたクリニック、外来診療も提供するクリニックとしての安心感を大切にしていきたいですね。
読者や地域の方にメッセージをお願いします。
父が地域に根差した診療を提供してきた当院を、しっかりと継承していきたいと考えています。とりわけ父が早い時期から取り組んできた在宅医療については、その良さを大切に引き継いでいきます。外来診療を終えて、5分で食事して、そのまま訪問診療に出ていくという忙しい毎日ですが、生まれ育った宝塚の地域医療に貢献できるように今後も頑張っていきます。

