大久保 芳明 理事長の独自取材記事
大久保小児科医院
(東大阪市/新石切駅)
最終更新日:2022/07/12
「大久保小児科医院」は、近鉄けいはんな線の新石切駅6番出口からすぐ、東山町交差点の角に立つ医療ビルの2階にある。理事長の大久保芳明先生は、長く大学病院や総合病院の小児科に勤務した後、自分が育った瓢箪山に近い石切地域の子どもたちや保護者の健康を支援すべく開業を決意した。1996年に開院、2001年に現在の場所に移転したクリニックで、開院以来、子どもたちの健康に関するさまざまな悩みや相談に応え、トータルな診療を実践している。地域密着型の小児科として日々の診療の際に大切にしていること、経験豊富な小児科医として今の子育て世代に伝えたいことなど、大久保院長にさまざまな話を聞いた。
(取材日2018年7月12日)
人と接する仕事がしたくて医師を選んだ
この近くの瓢箪山で子ども時代を過ごされたそうですね。
生まれたのは北海道室蘭市なのですが、5歳くらいの時に関西に移ってきました。父が鉄鋼関係の仕事をしており、室蘭から姫路、東大阪と転居して、少年期の多くを東大阪で過ごしました。当時はまだ地下鉄も高速道路も通っておらず、瓢箪山の商店街の北端に当時通っていた縄手北小学校があり、その先は田んぼが広がっていて自然が豊かな場所でした。休憩時間に稲刈りが済んだ田んぼを走り回って遊んだりしていると、「児童の皆さん、学校に戻りなさい」と放送が入ったりして、のどかな時代でしたね。
医師を志した理由を教えてください。
もともと人と接する仕事がしたいという気持ちがありました。大学は理数系に進学すると決めていたのですが、理数系の中で最も人と接することの多い学部として医学部を選んだわけです。工学部に進んで機械をいじったりするよりは、人に関わるほうが自分に合っていると思ったのです。
その中で小児科を選んだのはなぜですか?
基本的に子どもが大好きで、子どもの成長や発達をより近くで見守ることができる小児科を選びました。また、進学した奈良県立医科大学の中でも、小児科は研究の分野で非常にアクティビティーが高い教室で、その教室を主導している教授に憧れて入りました。僕も若かったし、臨床はもちろん大事だと考えていましたが、先端の研究をしたいという思いがあったのです。その教授は奈良県立医科大学の卒業生で初めて臨床の教授になった方で、僕らはその先生の一期生の弟子にあたります。血液の研究を専門にされており、血友病など先天性の出血性疾患についてはとても素晴らしい先生でした。
大学を卒業後、母校での勤務などを経てロンドンに行かれたそうですね。
文部省(現:文部科学省)から長期滞在型の研究者のサポートを受けて、ロンドンにある「クリニカル・リサーチ・センター」という研究所に行き、先天性出血性疾患の研究に取り組みました。当時、英国で血友病の研究で有名なDr.E.G.D.Tuddenham(E.G.D.タデナム博士)のもとで教室のメインテーマである先天性出血疾患の病態解明の研究に取り組みました。初めて海外での生活で、今後医師としての自分道を見つめ直す貴重な体験となりました。
スタッフ全員で患者や保護者をサポートする
開業を決意されたのは何かきっかけがあるのでしょうか?
日本に戻ってからは、総合病院などで小児科の診療を行っており、開業を決めた頃は東大阪市立中央病院に勤務していました。ある日、今のクリニックのすぐそばで開業していた後輩が訪ねてきて、「僕のところで開業しませんか」というのです。僕自身はずっと勤務医を続けるつもりでいたのですが、大学を卒業しておよそ20年がたっており、一つの節目ではあるし、開業を考えるならちょうどいい時期かなと思いました。地元の病院で勤務していたので地縁があるし、小児期を過ごしたなじみのある瓢箪山からも近い場所だったので、親近感を覚え、継承して開業することにしたのです。
どんなクリニックをめざして開業されたのですか。
自分の育った瓢箪山に近い場所で開業できたので、この地域で育っていくお子さんをしっかりと診て、保護者をサポートしていくことをまず目標に掲げました。僕自身は血液の病気を専門的に研究してきましたが、地域の小児科クリニックでそうした疾患を扱うことはほとんどありません。地域に根差したクリニックをめざすなら、特定の領域に注力するのではなく最も受診が多い感染症からアレルギー、予防接種、健康診断まで、さまざまなケースに対応していくことが大切なので、どんな困り事にも気楽に相談できるような姿勢を大事にしました。もともと子どもが大好きで小児科を選んだわけですから、これまでお子さんと接する際に特に苦労した経験はありません。やはり人と接することが好きだし、特に成長していくお子さんとの関わりが好きなのだと思います。
小児科は保護者との関係も大事ですね。
子育てで忙しい保護者の方に、病気や治療のことをきちんと説明をするのは容易ではありません。当クリニックの場合は、医師だけではなく看護師や事務職員などスタッフ全員で患者さんや保護者をサポートすることを基本にしています。例えば、僕一人では説明し切れないような場合は、スタッフにフォローをお願いするし、僕のほうからスタッフに意見を求めることも少なくありません。経験豊富なスタッフもおりますし、僕がいうよりも女性のスタッフに話してもらったほうが、やわらかな印象でリラックスして聞いてもらえることもあります。ただし、チーム体制でやっていくためには、人によって説明に食い違いがないようにスタッフ間のコンセンサスを取ることを心がけています。
予防接種についてはどのようなポリシーをお持ちですか?
予防接種については、受けられるものはすべて受けていただきたいというのが基本方針で、接種のスケジュールは保護者の希望を優先します。接種してもらうことが大事だし、そうすることで危険な感染症などが予防できるわけですからね。最近は医療についてさまざまな情報が飛び交っており、中には効果が疑わしいような情報を信じ込んでいるような方もおられます。そういう方はいくら一生懸命説明してもなかなか理解してもらえない場合もあり、残念なこともありますが、予約の外来も設けてこまやかにサポートできる体制を整えておりますので、積極的に受けていただきたいですね。
小児科の医師として子どもの健康をトータルに診る
お忙しいとお聞きましたが、リフレッシュ方法はありますか?
現在、枚岡医師会の活動に尽力しています。小児医療のみならず、この地域の皆さまの健康を守るためにクリニック運営だけでなく、医師会活動にも取り組んでおりますので、医師会関係の予定を優先していくとなかなか自分の時間を取れないのが現状です。好きなゴルフの回数も随分減りましたよ(笑)。今は、合間を縫って友達とゴルフを楽しんだり、食事をしたり、旅行へ行ったりすることが主なストレス解消になっています。
昨年、開院20周年を迎えられたそうですね。
昨年、開業して20周年だったので、スタッフとスタッフの子どもさんとお祝いがしたくて全員で鳥羽へ旅行に行きました。これは、私が幼い時に父の会社の慰安旅行に連れて行ってもらったことが非常にうれしく思い出に残っていたので、同じように子どもさんの記憶に残る旅行にしたいと計画したものなんです。もちろん、いつも頑張ってくれているスタッフをねぎらう気持ちもあります。今後、少子高齢化が進みお子さんの数がどんどん増えるということはないので、新しいことに意欲的に挑戦するというよりも、自分ができることを通してこれからも地域のお子さんや、親御さんのために貢献していければと考えています。
子育て世代の方にアドバイスをお願いします。
小児科はかかりつけ医としてお子さんの健康をトータル的に診る診療科です。最近は医療が細分化・専門家している影響か、小児科より他の専門家をいきなり受診されるという保護者が多いのですが、そうした診療科のふるい分けをするのは小児科の役割です。小児科の医師が全体的に診て、専門的な診療を受ける必要があると判断して専門の科へ受診を勧めるというのが本来の順番です。ところが、症状から自己判断して他の診療科を受診したものの良くならず、病気をこじらせてから小児科を受診するというケースが少なくないのが現状です。子育て世代は忙しいので、家に近い、待ち時間が少ないなどの理由で、受診する医療機関を選ぶという事情もわかりますが、こうした状態を避けるためにも、まずは子どもを専門的に診られる小児科医に相談されることをお勧めします。