不登校も小児科に相談を
身体症状への対処で悪循環にアプローチ
うかじ小児科医院
(糟屋郡志免町/須恵駅)
最終更新日:2022/11/02


- 保険診療
子どもがある日から登校しなくなることは、珍しいことではなくなっている。一日二日のこともあれば、数週間から数ヵ月と長期間続くこともある。「登校しない日が増えて、頭痛、腹痛、だるい、具合が悪い、朝起きれないなどの身体症状の訴えがあれば、かかりつけの小児科に相談してください」と語りかけるのは「うかじ小児科医院」の宇梶光大郎院長だ。身体症状を対処することが心理的ストレス軽減につながることも大いにあるという。同院では身体症状を窓口に、学校に行けない期間をなるべく少なくできるよう診療を行いながら、医療や教育、福祉の専門、支援機関へつなげる役割も担っている。「大事なのは本人、親御さんが一人で抱え込まないこと」と語る院長。現在も日々勉強を続ける院長に、不登校に関する疑問について答えてもらった。
(取材日2022年9月1日)
目次
身体症状が数日続くなら小児科に相談を。症状への対処の他、各機関への橋渡し役を担い、親の不安に寄り添う
- Q子どもの不登校の相談は、小児科でもしていいのでしょうか?
-
A
▲光が差し込む待合室
もちろんです。背景に心理的な問題が疑われる場合も、まずは身体疾患がないかどうかのチェックが必要ですから。登校しなくなったお子さんは何らかの心理的なストレスを抱えていますが、そのストレス自体の特定や軽減は簡単ではありません。不安や落ち込みは腹痛や頭痛、朝起きれないといった身体症状を引き起こし、その症状はさらにストレスをエスカレートさせます。例えば、腸脳相関の考え方では、緊張や不安があるとおなかが痛くなり、腹痛はまた不安や緊張を引き起こします。心理的な原因はともかく、お子さんやご家族の訴えを聞き、頭痛、腹痛、朝の低血圧などの身体症状に対処することは一般の小児科医にも可能ではないでしょうか。
- Qどのような症状で小児科を受診すればいいですか?
-
A
▲腸脳相関を説明する宇梶院長
頭痛や繰り返す腹痛・便秘・下痢などの腹部症状、立ちくらみ、めまい、嘔気といった症状です。それが学校に行けない理由になっていないかを確認します。「どうしても朝起きられない」といった起立性調節障害では、起立試験といって、寝ているときと立っている時の血圧を自動で連続的に測定することで病型鑑別していきます。それらの改善が見込める、血圧を安定させていくための薬や漢方薬もあります。やはり身体に症状が出ると、より心理的ストレスを感じてしまうものです。身体症状を取り除ければ、ストレスと身体症状の悪循環を断ち切ることが期待できるでしょう。何らかの身体症状があるならば、受診をためらうことはありません。
- Q不登校のお子さんに対してどう接するべきでしょうか?
-
A
▲診療室。地域のかかりつけ医として、患者に寄り添う診療を行う
不登校の要因はさまざまで、それがわからなくとも問題を解決に導くアプローチはできます。もちろん症状を取り除き登校できることが望ましいのですが、症状と付き合いながらできることを少しずつ増やすことも可能です。学校へ行きたくても体調的に行けないというお子さんも多いため、登校を無理強いをしたり、無理な詮索や詰問は避けましょう。お子さんが自分の思いをノートなどに書き出すのもお勧めです。言語化するとストレス発散にもなり、周囲に対処を頼めるようになれます。学校の先生やスクールカウンセラーはもとより、地域には不登校の子どもと親支援を行う施設や学校以外の居場所を提供してくれるところなど、頼れる人は身近にいます。
- Q小児科から、他の機関につなぐこともありますか?
-
A
▲落ち着いた空間で待ち時間を過ごせる
繰り返しになるかもしれませんが、小児科で対応できるのは、身体症状への関わりが可能なケースです。強い不安や抑うつがみられるなど精神疾患が疑われるケース、食事の量が減り、痩せが心配な摂食障害などを伴う場合は専門的な医師のいる医療機関に紹介することも考えられます。発達障害の可能性が考えられる場合も同様です。また、不機嫌で家族ともほとんど会話をしない、ひどい昼夜逆転が3ヵ月以上続く場合は専門機関への紹介を、と小児心身医学会のガイドラインで記載されています。ネットやゲーム依存で不登校の場合は、児童精神科の先生も入院できる施設がいいとおっしゃる方が多いです。
- Q幅広い内容の相談をできるのが小児科なのですね。
-
A
▲気軽に相談してほしいと話す院長
不登校の問題は家庭内で抱え込みがちです。相談できるひとつの場として、地域の小児科を頼っていただければと思います。当院では、診察の中でご家族の訴えをすくい取り、子どもたちが自分の想いをはき出せるよう、より専門的な機関につなぎます。2022年8月末に福岡市で開催された日本外来小児学会年次集会では、不登校のシンポジウムの座長を務めました。それぞれ立場の違う4人の先生方に講演をお願いしました。教育大学、小児科クリニック、大学病院、不登校支援施設と立場は違えど、不登校で困ってるご本人、ご家族をなんとかしたいという想いは一緒です。支えようとしてくださる人たちは数多くいます。