福田 聡一郎 院長の独自取材記事
ふくだ泌尿器科
(宮崎市/宮崎駅)
最終更新日:2021/10/20

JR宮崎駅東口から車で約5分。吉村町の久保田バス停のすぐ近くに、れんが色の外壁とパステルグリーンのサインボードのコントラストが印象的な「ふくだ泌尿器科」がある。広々とした敷地内には30台分の駐車場も用意され、車でのアクセスに便利だ。福田聡一郎院長は、鹿児島大学を卒業後、大学病院などでの勤務医経験を経て、自分の専門分野で生まれ育った地域に恩返しがしたいと1999年に同院を開業。前立腺肥大症や前立腺がん・膀胱がん、膀胱炎や頻尿など、腎臓および泌尿器系領域を専門に受け持つ医院として地域医療への貢献を続けている。患者のことを第一に考え、最善の医療を日々続けることが大切だと思いを語る福田院長に、泌尿器科を専門分野に選んだ理由から今後の展望まで、いろいろと話を聞いた。
(取材日2021年8月3日)
PSA検査による前立腺がんの早期発見に注力
泌尿器科を専門に選ばれた理由と、こちらで開業した経緯を教えてください。

泌尿器科を専門にしたのは、腎移植に携わりたかったのが理由です。しかし、大学で教授から最初に与えられた研究テーマががんだったので、ちょっと遠回りをすることになりました。その後、腎移植のチームにも入れてもらいましたが、実践する前に開業することになりました。開業に関しては、学生時代は鹿児島県で過ごしましたが、いずれは出身地の宮崎県に帰ってこようと思っていましたね。自分の専門領域で、生まれ育った地域に恩返しをしたいと思っていたからです。開業する場所としては、何ヵ所か候補がありましたが、ここが良いだろうと勧められ、ここに決めました。
こちらの医院にはどのような患者さんが多いですか?
現在は超高齢化社会ということもあり、前立腺肥大症の患者さんが多いですね。前立腺というのは年齢とともに大きくなっていくものなんです。他に比較的多いのは、膀胱炎や前立腺炎といった感染症です。過活動膀胱とか尿意が抑えられないといった症状の方もいらっしゃいます。それ以外では、当院では透析もしていますので、そのために来られる患者さんですね。男性が6〜7割くらいと多めですが、テレビで頻尿や尿漏れに関するCMが多くなったこともあるのか、女性の患者さんも増えています。恥ずかしがる必要はないんですが、どうしても抵抗感はあるみたいですね。でも診療内容のほとんどは、問診と尿検査と、するとしても超音波検査くらいです。膀胱がんや特殊な膀胱炎などを除くと、内診をすることは滅多にありません。
最近増えている症例などはありますか?

やはり前立腺がんですね。統計でも男性の罹患数では上位に入っている病気で、それだけ増えているということです。前立腺がんの疑いはPSA検査という前立腺がん腫瘍マーカー検査でわかるようになりました。宮崎市では早い時期からPSA検査を健診に取り入れていましたが、これからも実施の数を増やしていくことが重要だと考えています。この検査の数値が高い場合はMRIなどの画像検査でさらに詳しく調べ、怪しいところが見つかったら組織検査をします。前立腺がんは男性ホルモンに依存して増殖するので、手術や放射線療法のほかに、男性ホルモンを減少させるためのホルモン療法など、いろいろな治療法があります。
地区全体で総合病院と捉えて泌尿器科の分野を担う
勤務医時代と開業してからとの違いはありますか?

勤務医時代は大学の医局の人事で、ほぼ1~2年ずつ違う病院に勤めました。病院によって部長先生の得意分野が違うので、それぞれの専門分野の勉強ができました。ただ、転勤によって自分の患者さんの治療を最後まで見届けられないという心残りはありました。その点開業してからは、患者さんの治療を全うできる充足感は得られるようになりましたね。数年前までは、がんの患者さんなど長期入院されていた方もいらっしゃって、看取りもしていましたが、自分も還暦を過ぎ、当直などスタッフの負担も大きかったこともあり、現在は手術の前後など短期入院の患者さんに限らせていただいています。
高次医療機関などとの連携体制はどのようにされていますか?
開業した時すでに、近くに病院や内科をはじめとする各科の医院がいくつもありました。当初は泌尿器科だけを標榜することに対して、経営面で心配する声もありましたが、自分としては逆に泌尿器科という科目名にこだわりました。当時から医療の分野は細分化が進んでいて、1つの医院で複数の科を診るということは少なくなっていました。この地区は、医師会の中では昭和班と呼ばれているんですが、その中にそれぞれ専門の医療施設があるので、昭和班全体で総合病院と捉え、その中で当院は泌尿器科という専門分野を受け持とうと考えたのです。また、透析の患者さんは脳血管障害や心筋梗塞などを起こしやすい傾向があるので、高次医療機関との連携をしっかりつくっておくことも欠かせません。
そういったビジョンは開業する時からお持ちだったんですか?

そうですね。当院も透析をしているので内科も診察していますが、自分の専門外の領域については協力をお願いしようと思っていました。またそういった先生方からの紹介でも患者さんがいらっしゃるので、当院も現在まで続けてこられたという面もあります。1人の医師が全部診られれば、患者さんとしてはありがたいかもしれませんが、やはり専門の先生に診ていただいたほうが、患者さんとしても良い結果が得られるだろうと思います。現在は新型コロナウイルス感染症の流行があって開催していませんが、以前は昭和班の先生方との懇親会も定期的に開いていたこともあって、お互いのコミュニケーションを深めることもできています。
自分にできる最善の医療を毎日続けていくことが大切
先生から何か情報を発信するような活動は行っていますか?

開業した当初は、地域の公民館の健康講座や老人クラブなどに出向いて、前立腺肥大症や前立腺がんの検査のことなどをテーマに、講演などを行っていました。それを機会に受診に来られた方もいらっしゃいます。ホームページも作りましたが、当院の患者さんは高齢の方が多いので、インターネットよりも実際のクチコミのほうが重要だと思っています。とは言え、実際にはいろいろな声があって、すべてに対処するのは難しい一面もあります。当院は午前の診療時間の前から患者さんが外に並んでお待ちになっていることが多いんですが、暑くて大変だという声があったので、順番に名前を書いてもらうようにしたところ、個人情報の面で問題はないのかという方もいらっしゃったり、なかなかうまくいかないですね。
今後の展望について考えていることはありますか?
いつも思っているのは、毎日の積み重ねが大事だということです。患者さんのことを第一に考え、自分にできる最善の医療を毎日続けていくことが大切だと思います。お金のことなどを考えていたら、結局は長く続かないのではないかと。これだけ経験を重ねても、まだわからないことも多いです。その意味では日々勉強ですね。患者さんが先生だと思って勉強させてもらっています。あとは、やはり私1人で診察していることもあり、待ち時間が長くなってしまうのをなんとかしたいと思っています。初診の患者さんが何人か来られたりすると、どうしても1時間くらいお待たせしてしまったりすることもあります。そこはなんとか改善していきたいですね。
読者に向けたメッセージをお願いします。

ご本人でもご家族でも、泌尿器に関したことで何か気になることや困ったことがあれば、気軽に受診してほしいと思います。前立腺がんはほとんど自覚症状がなく本人が気づかない場合も多いので、お父さんがある程度の年齢になったらご家族で「PSA検査受けてる?」と聞いてみるとか、前立腺が肥大すると夜中にトイレに起きることが多くなるので、そういったことに気づいたら受診を勧めるのもいいですね。でも今はテレビなどでもいろいろと宣伝していますから、開業した頃よりも泌尿器科のハードルは低くなっていると思います。また糖尿病に関しても、なるべく早い時期から専門の先生に診てもらうことをお勧めします。早い時期から治療を始めて生活を改善していければ、病気の進行を抑制することも期待できます。早い時期から良い状態で管理を続ければ、それだけ寿命を延ばすことができると考えられるのです。