桑島 靖子 副院長の独自取材記事
桑島内科医院
(東かがわ市/三本松駅)
最終更新日:2025/03/19

JR高徳線・三本松駅から徒歩5分の住宅街の中にある「桑島内科医院」。半世紀以上と長きにわたり、地域住民に親しまれてきたかかりつけクリニックだ。現在は、院長の娘である桑島靖子(やすこ)副院長が中心となって診察にあたっている。標榜科目は内科、漢方内科、皮膚科の3科目。靖子副院長は県内外の大型病院で内科医師としての経験を積んでおり、現在は日本東洋医学会漢方専門医として、漢方内科にも力を注ぐ。インタビューでは、クリニックの歴史や特徴、診療において大切にしていることなどを靖子副院長に聞いた。
(取材日2023年3月16日/情報更新日2025年3月13日)
世代を超えて、三本松の地域を支え続ける
こちらはとても歴史のあるクリニックだと伺いました。

始まりは戦前です。私の祖父が、内科のクリニックとしてこの場所に開業しました。軍医だった祖父が戦没した後は20年以上休院が続きましたが、1970年に、現院長である私の父が継承。建物も新たに建て替えて、再スタートを切りました。娘の私が副院長に就任したのは、2005年のことです。祖父も父も医師でしたから、私も自然に医師をめざしていましたね。実は、妹も松山市で医師をしているんです。幼い頃の父で思い出すのは、昼は外来の患者さんを診療し、夜は電話をもらっては往診に出かけていく、そんな姿。この辺りは医療機関も少なかったので、昼夜を問わず注射器を持って、患者さんのもとへ向かう姿が印象的でした。父は内科が専門でしたが、継承をする前に、茨城県の基幹病院で小児科と皮膚科の勉強をしたんです。そうして小さなお子さんからご高齢の方まで、幅広く診療できる今のクリニックの礎を築きました。
院内はとても落ち着く空間ですが、リニューアルをされたのでしょうか?
私が診療に加わるようになってから、リニューアルを行っています。患者さんを迎える院内は、できるだけ居心地の良い空間にしたいという思いがありましたので、真っ白で寒々しい印象だった壁に木目を多く取り入れました。今は母が趣味で描いた草花の絵もたくさん飾っていますね。待合室の椅子はオレンジ色をチョイスすることで、優しく温かな空間を意識しています。診察室などの扉も、患者さんが開きやすいようスライド式に変更し、トイレも患者さんが使いやすいように数を増やして、自動の洋式トイレを導入しています。
現在はどのような患者さんが多いですか?

内科をはじめとした一般外来については、ご高齢の方のご相談が中心です。咳や発熱などの一般的な症状に加えて、湿疹やじんましんといった皮膚疾患を抱える患者さんもいらっしゃいます。漢方内科では、40~50代の女性の患者さんが多いですね。更年期に入ると、めまいやむくみ、頭痛、冷え、便秘など、なんとなく調子が悪いことが増えていきます。そうした不定愁訴のお悩みを持つ患者さんに対して、西洋医学のお薬を出すことは難しいのですが、漢方であれば、体質や症状に合わせた漢方薬をオーダーメイドでお出しすることができます。様子を見るしかないと諦めていたケースでも、取り組めることがあるわけですから、患者さんは安心できますよね。当院では漢方の他にも、体の負担に考慮したさまざまな方法をご提案していますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
根本原因に向き合い、患者の気持ちを尊重する
先生が漢方に興味を持たれたきっかけを伺いたいです。

私自身が、30代の頃に体調不良を抱えたことがきっかけでした。内科の医師としての知識や経験から、「この不調は薬では治療できない」と確信して、漢方を勉強するようになったんです。当時はオンラインセミナーなどもありませんでしたから、飛行機に乗って東京まで行って、さまざまな勉強会に参加しながら意欲的に学びました。そんな中、ある四国の先生の講義に参加して、たいへん感銘を受けたんです。患者さんの症状をお聞きするだけでなく、患者さんの腹部に触れたり、舌を見たりすることで、より丁寧に正確に漢方薬の処方を決定する先生でした。この出会いをきっかけとして、先生がいらっしゃる徳島県の病院へ通うようになり、日本東洋医学会漢方専門医の資格を取得。当院でも、漢方内科を立ち上げました。先生から教わった腹診や舌診は、今の私の診療スタイルの基礎となっています。
現在は、薬に頼りすぎない治療をめざされていますね。
さまざまなお悩みに対して、なるべく少ないお薬の量で改善をめざしたいと考えています。例えばコレステロール値が高い場合、数値を下げるためのお薬を出すのは簡単です。でも、コレステロール値が高くなってしまった原因を突き詰めると、お食事などの生活習慣が関わってきます。その根本的な原因と向き合わずに、一時的に数値の減少を図っても、問題の解決にはつながりません。患者さんご自身が原因を理解していないと、いつかお薬でも治療ができなくなる可能性があります。そうならないためにも、当院では原因を突き止めるための検査をしっかりと行い、その結果を患者さんに丁寧にご説明するよう心がけています。お食事の内容を変えるだけで、お薬がいらなくなれば、それは一つの理想なのではないでしょうか。
先生が日々の診療で大切にしていることは何でしょうか?

医師として「こうしたらいいのにな」と思うことがあっても、自分の考えを患者さんに押しつけないということです。より良い選択肢を提示することはありますが、治療のやり方を最後に決めるのは、患者さんご本人であるべきだと考えて診療を続けています。患者さんのお気持ちを尊重することが、私がこれまでのたくさんの診療経験の中で学び、今大切にしていることです。
栄養指導によって体調不良をサポート
診療後や休日は、どのように過ごされていますか?

診療がない日は、SNS用の画像編集や、動画共有サービスの動画編集をしていることが多いですね。もともとはブログを書いていましたが、最近では画像や動画を投稿することで、患者さんのお役に立つ情報をわかりやすく発信しています。更年期などの不調でお悩みの方々が、少しでも元気になっていただけるよう、今後も情報発信には力を入れていくつもりです。書籍も出版させていただいていますので、どこかでお手に取ってもらえればうれしいです。その他の時間では、最近乗馬を始めました。大学生の子どもが馬の写真撮影を趣味にしているんですが、その影響で私も馬が好きになり、実際に馬とふれあいたいと思うようになりました。子どもとは離れて暮らしていますので、こうして共通の話題を作ることができて良かったなと思っています。
先生ご自身の健康法があれば、教えてください。
蜂蜜を飲むことです。お湯で溶いたものを、3時間おきに飲んでいます。合計すると、1日に大さじ6〜8杯分は飲んでいるでしょうか。蜂蜜を飲むようになってからは疲れにくくなったのか、たくさん仕事ができるようになりました(笑)。果糖とブドウ糖を主成分とする蜂蜜は、エネルギー源として素早く体内に吸収されていきます。手軽に取り入れられる健康法ですので、ご興味のある方はお試しください。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

何かしらの体調不良で悩まれている場合は、体からのサインだと考えて、まず食生活を見直していただきたいです。今の食生活の結果は、3年後の体に出ると言われています。体のサインを無視し続けていると、いつか大きな病気につながってしまうかもしれません。どんなに忙しくても、自分の体に今何がどれくらい必要なのか、耳を傾ける訓練ができているといいですね。例えば糖と塩分の取りすぎは良くないと言われていますが、ストレスがかかる状況では多めの摂取が必要です。人間の体はいつも同じ状態ではありませんから、「この食材をこれだけ食べれば良い」などと効能にとらわれるのではなく、体が本当に必要としているものを考える習慣をつけましょう。当院ではこうした栄養指導も積極的に行っています。これからも、私でないといけない。私だからこそ診てほしい。そんなふうに思っていただけるように、患者さんのお悩みと真摯に向き合っていきたいです。