原 正道 院長、三嶌 典子 先生の独自取材記事
原医院
(世田谷区/池ノ上駅)
最終更新日:2025/08/13

京王井の頭線の池ノ上駅から歩いて10分の「原医院」は、戦前から長く地域の患者の悩みに応えてきた。2代目の院長を務めるのは内科が専門の原正道先生であり、現在は姪で小児科を専門とする三嶌典子先生と2人で診療を行っている。2人のテーマは「患者にとってのファミリードクター」。乳幼児から高齢者まで、全世代のさまざまな悩みを受け入れている。患者の話をよく聞き、わかりやすく丁寧な説明を心がけているのも、2人に共通していることだ。「何でも聞けて、何でも相談できるかかりつけ医を見つけてほしい」と思いを語る2人に、診療時の心がけや医師としての互いの魅力などを聞いた。
(取材日2018年9月14日)
院外活動を積極的に行い、医療知識をアップデート
まずは診療所の成り立ちと、現在の患者層についてお聞かせいただけますでしょうか。

【原院長】当院は私の父が約90年前に立ち上げた診療所で、1989年に私が院長職を継承しました。いらっしゃる患者さんの多くは近くにお住まいの方で、年齢としては60歳以降がおよそ半数を占めます。家族ぐるみで来ていただいていることも多いです。当院は歴史が長いこともあって、親、子、孫と3世代にわたって通われるケースもありますね。体の悩みをお聞きすることはもちろんですが、患者さんの中には独居の高齢者も増えていますから、一人でどう暮らしていったらいいのかといった、生活全般のお悩みや将来への不安にも共感を示しながら耳を傾けています。
原先生が院長を継承した後、ご親族の三嶌先生が加わったと。
【三嶌先生】ええ。私は院長の姪です。2004年に杏林大学を卒業して、杏林大学医学部付属病院やここからも近い東邦大学医療センター大橋病院に勤めた後、2018年の7月に常勤医として原医院に加わりました。大学ではいろんな研究も行いましたが、私は目の前の患者さんに向き合う臨床のほうが好きなんですね。それで長く地域の患者さんを診ている伯父の診療所で働こうと思ったのです。今は常に院長と私の2人が診療をしている体制で、患者さんのご希望を聞きながらにはなりますが、基本的には内科が専門の院長が既存の患者さんや成人の患者さんを、小児科が専門の私が子どもを診ています。
院長は今までどんな診療所をめざして日々の診療に臨んできたのでしょうか。

【原院長】地域の患者さんにとってのファミリードクターでありたいと考えています。赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる世代のどんなお悩みでもまずは対応してお話を聞く。その上で当院でできる診断や治療は行って、重い病気の疑いがある場合などはふさわしい医療機関をご紹介するといった、開業医の役割を大切にしています。多世代にわたって診療するためには医師として幅広い知識が必要になってくるわけですが、開業医はともすれば独り善がりになりがちです。一方で医療の世界はどんどん進歩していますから、講習会などに積極的に参加をしたり医療雑誌に日頃から目を通したりして、自分の理解をアップデートするようにしています。
情報過多の中、患者に正しいことを伝えるのも仕事
三嶌先生が思う、ご自身の強みをお聞かせください。

【三嶌先生】内分泌疾患と糖尿病に対して専門的な診療ができるのが私の強みでしょう。院内完結が難しいと判断した場合は、東邦大学医療センター大橋病院といった医療機関を円滑に紹介できますのでご安心ください。また最近は、治療の幅を広げるために漢方薬の知見を深めています。さらに一般的な小児科診療も対応可能です。中でも、低身長症に対する検査・治療の提案や、食生活などのアドバイスを得意としています。核家族化によって身近に相談できる人がいないケースも増えていますし、ぜひご相談ください。
【原院長】それと、インターネットやテレビを通じていろんな情報が入ってきますから「どれを信じたらいいかわからない」と話す人が増えていますよね。痰に血が混じっていればがんだと即断してしまったり、サプリメントを飲まないとだめだと勘違いしていたり。そんな方に正しい情報を伝えるのも私たち開業医の役割でしょう。
診療時に心がけていることをお聞かせください。
【原院長】患者さんが何でも相談できるファミリードクターであるためには、患者さんとの信頼関係が大切です。「ひと昔前」には上から目線でものを言う医師が少なくなかったと思いますが、私は患者さんに寄り添い、自分の経験を踏まえながらアドバイスすることを心がけています。
【三嶌先生】患者さんが疑問を残したまま帰ることは避けたいと考えています。ですから患者さんが理解されているか、治療方針に納得されているかといったことを念頭に入れて話を進めるようにします。また「わからないことはありますか?」とこまめに尋ね、しっかりと患者さんのお話を傾聴することも大事にしていますね。お子さんには、なるべく怖い思いをさせないような、もし泣いてしまっても帰る時には笑顔になるような対応を心がけています。
原院長は内科の中でも呼吸器が専門と聞きました。

【原院長】呼吸と循環の関係、つまり肺と心臓の関係を専門としています。患者さんに詳しい話を聞かないうちからエックス線を撮ったりCT検査したりすることがあると聞いたことがありますが、機械任せの診療は危険だと感じています。ですから当院では、まず患者さんの症状をきちんと聞いて診察を行い、必要があれば検査を行う。そして経過を丁寧に追っていくことを重視しているのです。呼吸器関連でいえば、長引く咳の症状を訴える方が増えていますね。風邪だと思って咳止めの薬を飲んでいたけれど、実際によく診てみると咳喘息や慢性の感染症だというケースもあるのです。
医師としての互いの魅力は「丁寧な診療」
お二人が医師を志した理由もお聞きます。やはり家族、親族の影響を受けてのことでしょうか?

【原院長】そうですね。父だけでなく母も医師で、2人で一緒に診療していました。といっても2人とも昔の人ですから「医師とは何か」を私に語るようなことはしませんでした。「子どもは親の背中を見て育つ」と言いますが私はまさにそれで、両親の姿を見ながら自然と医師になりたい気持ちが生まれました。
【三嶌先生】私も親族に影響を受けましたね。私の実家はこの診療所のすぐ近くにあったんです。伯父と伯母からとてもかわいがってもらっていて、第二の親のような存在です。医師への志が生まれたのは高校生の頃、当院でカルテ出しのアルバイトをしていた時です。一人の患者さんが「先生の顔を見るだけで楽になったわ」と院長の母親に言っていたことは今でも覚えています。
お忙しい中、休日はどんなふうにお過ごしですか?
【原院長】建物の中にずっといる仕事ですから、休日はとにかくアウトドアを楽しんでいます。世田谷区医師会のメンバーと山に登ったりスキーに行ったり。山登りは大学生の頃から長く離れていたのですが、15年ほど前に医師会の仲間と「行こう」という話になり、再燃しました。そう考えると仲間というのはやはり良いものですね。
【三嶌先生】小学4年生の息子と一緒にやれることがないかと思って、3年ほど前からほぼ毎月行っているのが、山中湖にある牧場ですね。ここでは乗馬だけでなく馬のお世話もさせてもらえるんです。オーナーが情熱的な方で、子どもにあいさつの仕方からいろんなことを教えてくれるので社会性も身につくように思います。他にも飼っている犬と出かけたり、息子の野球を観戦したりと、いろいろ楽しんでいます。
最後に、医師として思う互いの魅力と読者へのメッセージをお聞かせください。

【原院長】三嶌先生は診療が丁寧なんです。私以上だなと思う時もあるほどなんですよ。読者の方に伝えたいのは、自分の健康を守っていくためにかかりつけ医を持ってほしいこと。合わないと感じれば変えていいので、何でも聞けて何でも言える医師を見つけてほしいですね。
【三嶌先生】院長は患者さんに良くなってほしいという思いが強く、患者さん一人ひとりに対して何度でも丁寧に説明している姿が印象的です。院長が言うように、あちこちの医療機関にかかるのではなく、トータルに診てくれる医師と出会うことが大切ではないでしょうか。私たちがそんな存在になれればうれしいですね。また私自身が自然好きであることから、子どもたちには自然の大切さや偉大さを知っていただけたらと。また人とのコミュニケーションを通じて、考え方の幅を広げながら成長していただけたらと思っています。