中村 裕子 院長の独自取材記事
松の木こどもクリニック
(さいたま市緑区/東浦和駅)
最終更新日:2025/07/31

さいたま市緑区の住宅街にある「松の木こどもクリニック」は、1999年の開院以来、地域密着の診療を続けてきた。2024年11月に院長に就任した中村裕子先生は、日本小児科学会小児科専門医・日本アレルギー学会アレルギー専門医。長年にわたって市中病院で小児疾患全般の診療をしてきた経験を生かし、同院では風邪などの身近な疾患はもとより、便秘や夜尿症など慢性の症状、アレルギー疾患にも幅広く対応している。中村院長は、外来で診察する子どもの心にも寄り添い「幅広い視野でお子さんを診ていきたい」と語る。そんな院長に、クリニックのめざす姿や診療で心がけていることを聞いた。
(取材日2025年6月20日)
患者が気軽に相談でき、安心して通えるクリニックへ
院長に就任した経緯を教えてください。

当院は、初代の院長が1999年に「にしもとこどもクリニック」という名で開院し、20年ほどこの地域に根づいた診療を続けてきました。その院長が私と同じ医局の方だったため、私は病院に勤務しながら当院に週に1回ほど非常勤の医師としてお手伝いに来ていました。その間に名称も「松の木こどもクリニック」に変更され、2024年11月に、前院長が新たな地で開院されることになったタイミングで、もともとご縁があった私が院長を務めることになったのです。
どんなクリニックをめざしていますか。
長く続いているクリニックなので、ありがたいことに地域ではそれなりに認知されていると感じています。今後も引き続き、お子さんの体のことであればどんなことでも気軽に相談でき、安心して通えるクリニックをめざしていきたいと考えています。また、やや重い症状でも、初期対応をしっかりと担い、専門的な治療が必要な場合には、適切な医療機関への引き継ぎを行う所存です。ちなみに今回院長に就任したタイミングで、医療ビルの3階から2階に移り、院内をリニューアルしました。ぬくもりの感じられるベージュ色を中心に、床は木目調にしています。お子さんはもちろんのこと、忙しい毎日を送っていらっしゃる保護者の方にも、緊張せずに少しでもリラックスしていただけるような空間になればと思っています。
先生のご経歴について伺います。

大学を卒業後、初期研修を経て順天堂大学医学部附属順天堂医院の小児科・思春期科に入局し、小児医療全般を学びました。その後はいくつか地域の中核総合病院に勤務し、近隣のクリニックから紹介されるお子さんを中心に、気管支炎、中耳炎、さまざまなアレルギー症状、尿路感染症、熱性けいれん、川崎病など、詳しい検査や入院が必要な段階の症状を幅広く診てきました。その中でも、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に関しては、特に強い関心を持ち、勉強を重ねてきたと思っています。その経験を生かし、アレルギー疾患等も含めて幅広い症状を診ていければと思います。
病院とも連携しながら、幅広い視野で診療を行う
小児科の診療の状況はいかがでしょうか。

発熱、咳、鼻汁、腹痛、嘔吐、下痢など日常的によく起こる病気の診療が中心で、感染症に関しては当院で一通り検査が可能です。長引く腹痛の中に便秘症が隠れていることもありますし、長引く咳や呼吸時に「ゼーゼー・ヒューヒュー」という音がしたりする場合は、気管支喘息の可能性も考えられます。早期に治療を開始することが重症化を防ぐことにもつながるため、早めの受診をお勧めしています。一方、アレルギー疾患の診療では、通常の血液検査に加え、スギ・ダニ・猫の3種類のアレルギーに関してのみ、指先からの少量の採血で検査が可能です。採血のための注射が苦手というお子さんは、ご活用いただければと思います。
先生は、子どもの心や発達の問題に関する勉強もされたと伺っています。
直近まで勤めていた獨協医科大学埼玉医療センターの小児科は、疾病への対応だけでなく、心や発達の問題まで総合的に診ることに力を入れていたため、心身症的な疾患などの診療にも数多く携わってきました。私自身、近年は核家族化やインターネット・スマートフォンへの依存、中学受験の過熱などで、大人同様に心に病を抱える子どもが多いことも気になっていました。そこで、子どもの心理発達、発達障害など、さまざまな領域の学びを深めてきました。長期間続く体調不良には心の状態が影響していることもありますので、当院においてもそのような症状に対しては心の面も合わせて幅広い視野でお子さんを診療していきたいです。
子どもの心に関する症状には、どのように対応していくのでしょうか。

持続する腹痛・頭痛、朝起きられず学校に遅刻してしまう、朝にトイレにこもってしまうなどの症状で相談してくださる方もいらっしゃいます。そのような場合には、まず命に関わる重大な病気が隠れていないかを確認し、そうでない場合は症状に応じて、お話を聞きながら診断・治療を行います。より詳しい検査が必要な場合には対応可能な病院を紹介することも可能です。病院で詳しく検査を行った後、当院で対応可能となった場合には引き続き当院に通っていただくなど、必要に応じて他の病院とも連携しながら、包括的にサポートをしていきますのでご安心ください。何より生活の中で不安を抱え続けることが一番良くないことだと思いますので、まずは気軽にご相談いただければと思います。
診療は一期一会。できるだけ子どもを褒めてあげたい
先生が診療で心がけていることは何でしょう。

お子さんに対しては褒めることを心がけています。例えば、注射のときにお子さんは泣いてしまうことが多いのですが、泣いてしまっても必ず「頑張ったね」と声をかけるようにしています。実は、私は小さい頃にお医者さんが苦手でしたので、診察を嫌がるお子さんの気持ちは理解しているつもりです。診療を通して、自分自身に少しでも自信をつけてもらう経験になってもらえたらと思っています。一方、保護者の方に対しては、時間が許す限りですが、不安な気持ちをできるだけじっくり聞くように努めています。お子さんの体調が悪い時には、保護者の方も非常に不安を抱えていらっしゃると思います。話すだけでも気持ちが少しすっきりすると思いますので、お話を聞いてから病気や治療についての説明をするようにしています。説明をする際には、専門用語などは使わずにわかりやすく説明し、納得した上で治療を受けていただくことを心がけています。
患者さまに心地いい時間を過ごしていただくために取り組まれているのですね。
スタッフにも患者さまに対して親切、丁寧に対応しましょうということを伝えています。1日1回は全員で集まって話す機会を設けていますので、スタッフとも連携しながらこれからも丁寧で誠実な対応を心がけていきたいです。先ほどもお話ししたように診療では患者さまのお話を聞くことを心がけていますが、混雑状況によってお話を聞く時間が短くなってしまったり、診療までお待たせしてしまうことがあるかと思います。待ち時間をできる限り短くするために、スタッフとも協力の上、効率良い診察の努力をしています。また、スムーズな診療を行うために通院履歴を確認できるお薬手帳や母子手帳をお持ちいただけますと幸いです。目の前の患者さまとはある意味、一期一会です。診療中であっても、せっかく同じ時間を共有しているのですから、少しでも心地良い時間を過ごしていただけるようにお待たせする時間の短縮やスタッフの気持ち良い対応に努めたいと思います。
最後に地域の方へメッセージをお願いします。

小児科全般のことでお困りのことがありましたら、どんな些細なことでも構いませんので、ご相談いただけると幸いです。また、小児科の医療でもっとできることがあるのではないかと常々感じています。例えば少子化に伴い、一人あたりの診療の時間が増えれば、早期に察知できることも多くなる気もします。それと、現在5歳児健診のニーズが高まっているように、いかに健康な状態の時に小児科医が相談を受け、心身の発達を含めた包括的なサポートにつなげられるかが、重要だと考えています。例えば、さまざまな悩みを抱える思春期の時期などに健診を設けてもいいのかもしれません。そのように身近にある小児科のクリニックが、広い意味で相談ができる場になればいいな、と心より願っています。