その症状、実は歯周病かも?
「治療」とメンテナンスで歯を守る
馬場歯科医院
(奈良市/富雄駅)
最終更新日:2025/06/13


- 保険診療
誰もが自身の歯を長く使い続けられるよう、治療だけでなく丁寧な説明やメンテナンスにも力を入れている「馬場歯科医院」。歯を失う原因として、現在馬場俊輔院長が特に気にかけているのが歯周病だ。「『歯周病予防』という言葉はよく見聞きするが、ご自身がすでに歯周病であることを知らなかったり、予防をすれば大丈夫だと思っている方が多いんです」と馬場院長は話す。さらに進行した歯周病では根本的な改善をめざした治療も必要になるが、「歯周病に『治療』があることもあまり知られていません」と表情を曇らせる。虫歯よりも歯周病になる人のほうが多い時代だからこそ、歯周病のことをよく知ってほしい。そう願う馬場院長に、普段から患者に伝えている歯周病の症状や治療とメンテナンスの関係についてわかりやすく説明してもらった。
(取材日2025年5月27日)
目次
症状は歯茎だけでなく、歯がしみたり噛むと痛みを感じることも。外科的な治療で根本的な改善をめざす
- Q歯周病になると、どのような症状が見られますか?
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A
▲半個室の診療ブースには座り心地にこだわった診療チェアを設置
「歯周病は歯茎の病気」というイメージが強く、確かに歯茎が炎症を起こして腫れたり出血したりします。ただ、歯周病になる人は歯磨きが適切でないことも多く、歯ブラシが患部に届いていないと出血しないことも。また初期の歯周病では「噛んだら歯が痛い」「歯がしみる」など、歯に変化を感じることもあります。これを「小さな虫歯だろう」とやり過ごしたり、歯磨き粉を変えて様子を見るなど、放置している方は多いですね。さらに怖いのは、自覚症状がないまま悪化する場合もあること。歯周病が進行すると、歯と歯肉の間に入り込んだ歯周病菌が歯を支える骨を溶かしてしまうので、気がついたときには抜くしかない……という状況もあり得ます。
- Q歯周病は全身の健康にも影響していると聞きました。
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A
▲「わずかな変化でも早めに受診してほしい」と話す院長
歯周病菌が歯茎から血管の中に入りこむと、血液に乗って全身を巡ります。そうすると動脈硬化を促し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めてしまう恐れや、アルツハイマー病との関係も指摘されています。さらに、以前は糖尿病の患者さんで歯周病が治りにくいと言われていましたが、実はその逆で、歯周病がインスリンの働きを低下させ、糖尿病を引き起こすこともわかってきました。歯周病そのものや、歯周病になりやすい食事・生活習慣が、さまざまな全身疾患の入り口になってしまっているのです。また、歯周病で歯が痛んだり歯を失ってしまいしっかりと噛めなくなると、食事内容に偏りや不足が起きて、全身の健康を損なう要因にもなります。
- Q歯周病はなぜ起こり、どのように悪化するのでしょうか。
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A
▲歯周病は進行を防ぐことが重要
歯周病の原因は歯周病菌です。赤ちゃんのお口の中にはいませんが、大抵の人では、大人になるまでに口腔内に歯周病菌が入り込みます。そして、歯についた汚れと歯周病菌が混ざりあって歯の表面や歯茎との付け根にバイオフィルムという膜を形成し、それがきちんと清掃されないまま蓄積していくと、歯周病菌の活動の場に。さらにこのバイオフィルムが歯と歯茎の隙間へと入り込むと、取り除きにくい環境で歯周病菌はさらに繁殖して、症状を悪化させます。僕の印象では20歳前後から歯周病菌が繁殖しやすくなり、歯科医院に来る機会が減る20代の間に徐々に進行。30代半ばぐらいには、本格的な歯周病になってしまう方もいらっしゃいますね。
- Q治療方法について、詳しく教えてください。
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A
▲時間をかけて丁寧な説明を心がけている
メンテナンスではスケーラーという道具を使って歯の根元のバイオフィルムを落とし、歯石の除去をしていきますが、それだけでは歯茎の奥深くの汚れを取ることはできません。そこで治療としては、麻酔を使用し、より深くまでスケーラーを入れて清掃します。それでも難しい場合は、歯茎を切開して歯の根っこを露出させて掃除をするという、外科的な処置を行うこともあります。進行した歯周病では、このような「治療」をしないと、炎症が落ち着かないことも多いのです。進行の程度によっては治療をしても歯を残せない可能性もありますが、当院では患者さんのご希望も聞きながら、抜歯までの期間を延ばす目的で治療を行うこともあります。
- Qメンテナンスでは歯科衛生士さんの役割が重要だそうですね。
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A
▲患者のニーズや思いを受け止めながら治療に取り組む
進行した歯周病では今お話ししたような「治療」も必要になりますが、そこまででなければメンテナンスで進行抑制を図ることもできます。定期的にメンテナンスを受けるメリットは何よりも、ご自身では見ることができない部分まで、口腔のプロである歯科衛生士に清掃してもらえることですね。歯科衛生士は歯茎の状態をチェックし、骨の減り具合なども推測しながら、治療の必要性を考えたり、セルフケアへのアドバイスを行います。患者さんのセルフケアの技術を高めるとともに、日々頑張って取り組めるようにモチベーションを高めてもらうのも、歯科衛生士の大切な役割です。これがうまくいくようになると、歯周病の予防も安定すると感じています。