中野 司朗 理事長の独自取材記事
中野司朗レディースクリニック
(奈良市/学研奈良登美ヶ丘駅)
最終更新日:2023/07/04
2006年に開業した「中野司朗レディースクリニック」は、自然豊かな奈良市北登美ヶ丘にある。産婦人科と女性内科を2本柱とし、産婦人科では分娩と妊娠中絶手術は紹介となるが、そのほかの女性内科診療、漢方や更年期障害に特化した外来、性感染症の検査・治療、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)の相談にも乗っている。理事長兼院長を務める中野司朗先生は、長年基幹病院の産婦人科部長として数多くの婦人科手術や分娩を経験してきたスペシャリスト。開業後は、気軽に相談できるホームドクターのようなスタンスを心がけながら患者と向き合う。婦人科検診にも注力しており、骨密度検査などでは信頼性の高い手法での検査を提供。中野先生に、クリニックの診療内容について詳しく話を聞いた。
(取材日2023年6月6日)
スペシャルゼネラリストでありたい
診療内容を教えてください。
当院では産婦人科診療と、脂質代謝に関する女性内科診療を2つの柱に、漢方や更年期障害に特化した外来、性感染症の検査・治療などを行っています。婦人科診療では、各種女性検診、骨粗しょう症検査、血栓リスク検査などの予防医学の実践・啓発のほか、漢方や栄養学の知識も役立てながら診療を実施しています。産科診療に関しては、当院は分娩や妊娠中絶手術には対応しておりませんが、妊娠で初診の方には適切なチェックを行ってから適切な分娩施設をご紹介しています。女性内科診療では、要介護の主要因の一つである血栓症の予防を目的に、脂質異常症の治療にも注力しています。
最近増えている主訴はありますか?
低用量ピルの処方や、更年期障害に対するホルモン充填療法を行う患者さんは増えていると感じます。また、最近耳にすることが増えた方もいると思いますが、PMS(月経前症候群)あるいはPMDD(月経前不快気分障害)といった、月経前のさまざまな不調を訴える方も増えています。PMSは、月経前にイライラしたり、落ち込んだりと精神症状を伴うケースが多く、月経が始まるとそれらの症状も治まるのが特徴です。社会における女性の役割が多様化したことで、ストレスが増えていることが要因の一つではないかと思います。
診療への想いをお聞かせください。
私は、産婦人科の医師の在り方は、大きく2つに分かれると考えます。一つは、気になることを気軽に相談できるホームドクター、つまりゼネラリストで、もう一つは、がん治療や腹腔鏡手術などの細分化された特殊な治療を行う専門家、つまりスペシャリストです。しかし私は、そのどちらの要素も兼ね備えた、「スペシャルゼネラリスト」でありたいと考えています。開業まで12年余り勤めた済生会奈良病院の産婦人科部長時代には、数多くの婦人科手術の執刀や分娩を経験しています。これらの豊富な臨床経験を持ちながらも、些細な悩みでも気軽に相談できる、ホームドクターのスタンスで診療に臨むことを心がけています。
病気にならないための生活習慣や病気の早期発見が重要
予防医学にも注力されていると聞きました。
日本の医療費は年々増加しており、このまま対策を講じなければ健康保険制度は破綻してしまいます。そのため、病気になってから高額な治療を受けるのではなく、病気にならないための生活習慣や病気の早期発見が非常に重要です。このような観点から、当院では子宮がん検診、乳がん検診、卵巣がん検診などの女性検診や、予防医学として特に血栓症と骨粗しょう症の予防・早期発見に注力しています。血栓症の予防としては、女性内科というカテゴリーで脂質異常症の治療を行っています。血管の状態は、頸動脈のエコーをするだけでもある程度は把握できますので希望する方に実施しています。また、必要に応じてEPA製剤の処方も行っています。
EPA製剤とは何ですか?
EPAとは、主に魚類に含まれているオメガ3脂肪酸と呼ばれる脂肪酸の一つで、それを製剤化したものがEPA製剤です。脂質異常症の治療に用いられます。それと対比される存在に、主に牛や豚に含まれているアラキドン酸という脂肪酸があり、血中のアラキドン酸に対するEPAの比率が低いと血栓のリスクが高まるとされています。現代は魚を食べる習慣が減っているので、患者さんの多くは血中のアラキドン酸に対するEPAの比率が低い数値です。当院ではEPA製剤を処方していますが、今後、コレステロール値だけでなく、EPAの数値に着目する医師がもっと増えるといいなと思います。
骨粗しょう症の予防はどうですか?
骨粗しょう症は、患者の約8割を女性が占める病気です。日本人女性の10人に1人が大腿骨と股関節をつなぐ大腿骨頸部に骨折を起こし、そのうち4割に後遺症が残ったり、要介護になったりするといわれています。そのため、40~50歳未満は5年に1回、50歳以上では毎年1回の骨粗しょう症検査が推奨されます。実は、女性はホルモンの関係で50代になると大幅に骨密度が下がるのですが、その時点で骨粗しょう症の危機感を持って、骨密度検査をきちんと受けている方は少ないんです。当院では、ガイドラインに則して、腰椎と大腿骨近位部の2ヵ所の骨密度をDXA(デキサ)法で測定しています。将来の要介護や寝たきりを防ぐためにも、ぜひ50代になったら検査を受けてほしいと思います。
セカンドオピニオンでも気軽に相談してほしい
婦人科検診について教えてください。
当院では子宮がん検診、乳がん検診、卵巣がん検診を実施しています。子宮がん検診に関しては、企業検診で来られる方は多いですが、個人で計画して来られる方は少なくなっていると感じています。これはご存じない方が多いかもしれませんが、企業検診や市町村の補助で受けられる子宮頸がん検診は、比較的若い人に受けてもらうことに意義があります。というのも、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの感染によって起こるので、性交頻度の高い人に発症しやすいからです。一方で子宮体がんや卵巣がんは、閉経後の50代以降に多いので、エコーを用いて子宮内膜や卵巣の状態をチェックするといったことも重要になってきます。ですので、子宮頸がんの検診だけで、「自分は検診をしっかりしている」と思い込むことはせず、ほかの検診にも目を向けていただきたいと思います。
休日のリフレッシュ法を教えてください。
昔からスポーツが好きで、学生の頃は野球小僧でした。野球って1球ですべてが決まるような場面も多々あって、例えば一打サヨナラのチャンスで自分に打席が回ってくると、燃えるタイプでしたね。今でも自分が打ったサヨナラヒットのことは、よく覚えていますよ。社会人になってからは、済生会奈良病院や奈良市のソフトボールチームでも汗を流しました。開業してからは、やるのはゴルフ、観るのはサッカーが楽しいですね。週に1回ゴルフのラウンドを回るのが、リフレッシュと健康維持に役立っています。75歳くらいになったら、1ラウンドを自身の年齢以下の打数で回るエージシュートを達成するのが一つの夢です。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
当院は、「20年後もいつもの笑顔がみたいから、あなたとの絆を大切に歩みつづけるクリニック」を理念としています。そのために、スタッフ一人ひとりがそれぞれの患者さんに100%向き合い、病気の現状だけでなく、予防医学にも注力した診療を展開しています。また、婦人科領域の治療方針に迷われている患者さんには、セカンドオピニオンを相談できる場を提供しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。