宮本 富郷 院長の独自取材記事
宮本歯科医院
(八幡市/石清水八幡宮駅)
最終更新日:2025/01/15

京都府八幡市の名所、石清水八幡宮の近くに「宮本歯科医院」はある。同院は1925年に開業し、3代にわたって地域住民の口腔内の健康を支え続けてきた。院内は白を基調とした明るい空間で、患者が安らげるような落ち着いた雰囲気だ。車で来院する患者のために5台分の駐車スペースを設けるなど、利便性にも配慮している。院長を務める宮本富郷(みやもと・ふきょう)先生は、大阪大学歯学部を卒業後、大阪市内の歯科クリニックで研鑽を積んだ豊富な経験を生かし、義歯の治療や予防歯科に注力している。宮本院長の優しい口調は、朗らかで飾らない人柄そのものだ。インタビューでは、先代と先々代が守り続けてきた歯科医院を受け継ぐ思いや、診療において大切にしていることについてじっくりと話を聞いた。
(取材日2024年6月13日)
昭和初期から続く地域密着型の歯科医院
こちらは歴史ある歯科医院だそうですね。

当院は昭和の初め頃に祖父が開院し、父から私が受け継いで現在に至ります。私が幼い頃は、祖父が私の歯の治療をしてくれていました。祖父は治療をする時も優しかったことを覚えています。私自身、父や祖父の姿を見て「人に感謝される仕事なんだな」と感じていましたし、自然と歯科医師をめざすようになりました。当院の診療室から庭が見えるのですが、これは父のアイデアです。患者さんにリラックスしてもらえるようにと考えて整備したのでしょう。今でもチェアに座った患者さんが庭を褒めてくださることもありますよ。それに、待合室には美術が好きだった父が選んだ絵を飾っています。基本的には、父のつくり上げた院内の趣向はそのままにしてあるんです。
これまでのご経歴と宮本歯科医院を受け継がれた経緯を教えてください。
私は大阪大学歯学部を卒業後、天王寺にある歯科クリニックに勤務していました。幅広い診療を手がけていましたから、日々仕事に追われているという感じでした。そこでは業務終了後、週1~2回の頻度で勉強会が開かれていました。先輩の歯科医師が自分の得意とする治療について教えてくださるので、専門的な知識や技術を吸収できる良い機会でしたし、そういった点では恵まれた環境で仕事をすることができました。実家の歯科医院を受け継いだきっかけは、祖父が他界したことでした。当初は1ヵ月ほどゆっくりしようと思っていたのですが、父から「患者さんが待っているから」と言われ、結局すぐに仕事を再開することになったんです。
長年この地で診療を続けてこられた印象はいかがですか?

最近は石清水八幡宮の観光客も増えてきていますが、この周辺は昔からお住まいの方がほとんどです。そんな土地柄もあり、ご近所同士のネットワークがしっかりしていて、助け合いの心が浸透しているなという印象があります。当院には父の代から何十年も通院してくださる患者さんもいますし、患者さんの年齢層はご高齢の方の割合が高いですね。フレンドリーな方が多くて、診療が終わって帰る時にも声をかけてくださいます。当院の患者さんの主訴は「歯茎が痩せてきた」「歯がしみる」「歯がグラグラして食べ物が噛みづらくなった」など、加齢による困り事が多いです。歯の健康を長く維持しようという意識を高く持ち、一生懸命に歯のケアをされる患者さんもいらっしゃいます。
患者の気持ちに共感する診療を大切に
先生が注力している診療内容について教えてください。

当院では義歯(入れ歯)に関するニーズが高いので、欠損補綴の分野に力を入れています。義歯の治療を行う際は、基本に忠実に、きちんとステップを踏むことを念頭に置いています。具体的には「印象」といって患者さんの歯型を採ることや、噛み合わせを決める際に重要になる咬合床の製作などが挙げられます。これらの段階を疎かにしてしまうと、後々の調整が難しくなってしまうんですよ。患者さんの中には、入れ歯安定剤のベトベトした使用感が苦手な方もいらっしゃいますので、なるべく安定剤を使わずに済む義歯をめざしています。安定剤を使っている方は歯茎がやせるリスクが高まりやすいので、定期的に歯科医院で状態をチェックすることをお勧めしています。
予防歯科にも重点を置いているそうですね。
はい。歯と口の健康を守るためには、やはり炎症をコントロールすることが欠かせません。歯石を取り、歯の表面をきれいにするPMTCが大切です。加えて、毎日の歯磨きも重要です。歯磨きはどうしても自己流になってしまいがちですので、当院では私と歯科衛生士のスタッフが協力して歯の磨き方をアドバイスしています。私は高校に出向いて歯科検診を行うことがあるのですが、歯の裏側が磨けていないなど、歯の手入れが不適切なままになっている生徒さんを見かけます。40代や50代の患者さんであっても、歯科で定期メンテナンスを行わなければ、歯周病のリスクが高くなります。歯を守るためには多種多様な手段がありますから、高齢になって苦労しないように若いうちから歯科医院でチェックを受けて、ご自分に合った適切な歯のケアの方法を知ってほしいと思っています。
大人でも「歯の治療が苦手」という方もいらっしゃいますか?

もちろんです。多かれ少なかれ、どなたも歯科医院のチェアに座ると緊張されるのではないでしょうか。勤務医時代、治療中に自分の手の甲をギュッとつねっている患者さんを見たことがあるのですが、それは恐怖心を紛らわせるための行動だったのだと思います。私自身も、歯の治療を受けるのは苦手なんですよ。私は、特に注射の針を刺される瞬間が嫌いなので、患者さんの思いにはとても共感できます。ですから、恥ずかしいという気持ちを持つ必要はまったくありませんし、遠慮なく「歯の治療が怖い」とお伝えください。麻酔の注射をする際は表面麻酔をしてなるべく苦痛がないように配慮していますし、治療の進み方について丁寧な説明を心がけるなど、できる限りの対応をいたします。また、当院には女性歯科医師も在籍しており、非常勤ではありますが、希望をお伝えいただければご対応いたします。女性患者さんやお子さま連れの方にも安心して来院いただけます。
伝わりやすく口腔内の情報を届けたい
患者さんとのコミュニケーション面で大切にしていることは何ですか?

患者さんのご要望を丹念にお聴きすることと、納得していただけるような説明を心がけることですね。以前から耳の不自由な方やご高齢で声が聞こえづらくなった方には紙に書いて説明するなど、どうやったら情報が伝わりやすいかを考えてきました。IT化が進み、今はほとんどの方がスマートフォンをお持ちですから、文字や写真などを使い、情報を可視化してやりとりできる時代になったのは良いことだと感じています。私も専門の先生に習いながら、ホームページの作成に挑戦しました。当院に外国の方が診療に来られた際は、小型の翻訳機を使って対応することもありますよ。こうしたデジタル技術を使いながら、患者さんがわかりやすく情報を伝えて「治療は歯科医師にお任せ」という状態にならないよう工夫しています。
お忙しい毎日だと思いますが、休日のリフレッシュ方法を教えてください。
もともと運動が好きで、大学時代はテニス部に入って一生懸命にプレーしていました。その仲間と今でもたまに神戸の山間部に行ってゴルフをすることがありますよ。最近は、少しでもスムーズに体を動かせるようにランニングを始めました。それに、お酒を飲むことも好きですね。休日はビールを飲むこともありますが、夕食の時に飲むのは芋焼酎と決めています。というのも、私の体質も関係しているのか焼酎は翌朝の体調にまったく影響しないようなんです。次の日のコンディションも考えてお酒を楽しんでいます。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

歯科医師を長くやっていると、患者さんから「もっと前から治療しておけば良かった」と、後悔の声を聞くことが珍しくありませんから、症状がなくても歯の定期検診を積極的に受けていただきたいと思っています。虫歯であっても小さければ短期間の治療で済みますが、大きくなればなるほど処置が大変になってしまいますからね。また、入れ歯に関しても痛みが出ているのに我慢したり、外れやすくなったまま使ったりしていると、歯や歯茎にダメージが生じやすくなることから、定期的なチェックが必要になります。患者さんご自身の歯のデータを紙に印刷してお渡しすることもできますので、ご要望がありましたらお申しつけください。お気軽に足を運んでいただける歯科医院をめざしていますし、皆さんの歯の健康維持のためにお役に立てれば幸いです。