新海 研太郎 院長の独自取材記事
新海歯科医院
(大阪市西区/西長堀駅)
最終更新日:2025/08/01

大阪市西区にある「新海歯科医院」は、初代院長の頃から地域に根差した診療を1972年から行ってきた歯科医院だ。2代目の新海研太郎院長が後を継ぎ、患者とのコミュニケーションを重視した丁寧な治療で地域の患者の健康をサポートしている。患者にとってのメリットを優先して考え、工夫しながら保険診療内での治療に尽力する。料理や音楽など趣味も多彩な院長。クラシック音楽にも造詣が深く、院内にはいつも院長が選りすぐった音楽が流れている。患者の好みに合わせた曲をかけておくこともあるそうで、患者と音楽の話ができるのも楽しみだという。患者に寄り添った治療を続けてきた院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2018年11月8日)
父から受け継いだ「患者に負担をかけない治療」
先生は2代目と伺っています。代替わりで苦労されたことはありますか?

以前この向かいにあった日本生命病院の歯科医師だった父が、1972年に開院しました。1998年から僕も一緒に診察するようになったのですが、2006年に父が突然倒れて3週間で亡くなってしまったんです。自分の仕事に加えて父の患者さんまで1人で引き受け、そこに父の見舞い、そして葬儀、廃院、開業手続きなどが重なり、また新しい機器やシステムの導入もあり、文字どおり寝る間もない忙しさでした。休みの日に5時間半寝たら寝すぎで体が痛くなったくらいです。3ヵ月後くらいに健康診断があったのですが身長が3cmも縮んでいて、体を横たえる時間が少ないと身長も縮むらしいということを初めて知りました(笑)。
お父さまからはどんな影響を受けたのですか?
治療の面では時代の違いもあり意見の食い違いもありました。父がそれまでしてきて、患者さんも納得されていることを否定はできない。でも新しい知識や技術に照らし合わすと疑問を感じることもあって、気を使いながら少しずつ望ましい形に変えていきました。父から厳しく言われたのは「お金儲けのための治療は絶対にするな!」ということで、今もそれが基本です。だから保険適応外の治療はほとんどしていません。今の時代「患者さま」という呼び方が一般的ですが、うちではお金儲けの対象としての「お客さま」としてではなく、相手の立場に立って、プロフェッショナルとしての治療方法を考えるパートナーとして、「患者さま」ではなく「患者さん」をモットーに、患者さんに負担をかけずに工夫して保険内での治療をしていくのが父の代から変わらない姿勢です。
先生も子どもの頃から歯科医師をめざしておられたのですか?

代々医者の家系で、小さな頃から医師になるようにと周りからは言われていました。でも、僕は歴史学や哲学を研究したかったんです。でも高校の先生から「そういう学問は趣味にしておいて、お父さんの後を継いだほうがいい」と強く勧められました。それなら医学部に行って精神医学や大脳生理学の勉強をしようかと思ったのですが、父や医師である伯父たちからも説得され、母が僕に内緒で願書を出していた大阪歯科大学を受験したら合格して。そこで腹を決めたというわけです(笑)。
全身の健康を意識して「食べられる歯」を重視
診察の際に心がけておられるのはどんな点ですか?

当院は70歳以上の患者さんが多いので、「しゃべること、食べること」を大切にしつつ、全身の健康を考えた治療を心がけています。考え方はもちろん、食べ方も経済状況もそれぞれ違うわけで、総入れ歯の方、入れ歯を入れたくないという方、残った歯と1本ずつの入れ歯をうまく使いたいという方も。一人ひとりに応じた治療法を提示し、できる限り意向に沿った治療をしています。それで感謝してもらえるとやりがいを感じますし、人間はまず「食べられる」ことが大事です。食と全身の健康は直接結びつきますから。もう一つは治療方法を決めつけないことです。先日ドラマで「虫歯を抜歯して、あとはブリッジにして削るかインプラントしかありません」と歯科医師が言っていたのですが、僕なら他の方法も示したいと思います。
「食べること」を大切にした、個々人に応じた治療がモットーということですね。
自分自身が「食」への関心が強いことも関係しています。土日の夕食は僕がシェフになるんです(笑)。直売所にこだわりの材料を買い出しに行って、ワインを選び、フランス料理を全部1人で作ります。特に肉料理が得意で、鶏を丸ごと買ってきて料理することも。食べる楽しみがよくわかるからこそ、患者さんにも口の中をできる限り良い状態にして食べることを楽しんでほしいと思うのでしょうね。以前勤めていた歯科医院での経験もきっかけになっています。1日に多い時には60人も患者さんを診るということもあって、じっくりと一人ひとりの患者さんのケースを考える時間もなく、このケースはこれといったパターン診療に陥りやすいんです。その時に将来的には、自分自身の頭もやわらかくしてさまざまな発想ができるようになりたいと感じていました。それが今の治療方針になったのです。
他にも気を配っておられることはありますか?

病院の紹介ですね。がんの疑いなどで病院で診てもらったほうがいいだろうと思う患者さんに受診をお勧めすることがありますが、受診先の病院で検査に見落としがあったり、説明不足で患者さんにきちんと伝わらないということがあってはいけません。そういう考えから、どこの病院を紹介するか、患者さんの症状を考慮した上で特に気を配るようになりました。単純な外科処置で済む場合とは区別して、遠かったり診察に時間がかかったとしても、僕が信頼できる病院をご紹介するようにしています。
長期的な視野に立った質の良い治療をめざす
先生の得意とされているのはどんな治療ですか?

顎関節症に関心があり、大学卒業直後から勉強しています。当時は関西では専門にしている歯科医師がほとんどいなかったので、指標がなく文献を読みあさりました。今は良い素材のマウスピース型装置も出てきましたが、その頃は素材を工夫して対応していました。最近は顎の運動が推奨されるなど、情報が得やすくなってきましたね。また、歯周病治療にも自信を持っています。これまでは歯周外科を手がけてきましたが、今後は外科的治療より長期的に見て健全な状態を保っていくことに尽力したいと思っています。歯周病は全身疾患ともかなり関係しているということがいわれているためです。
歯周病治療にもいろんな方法があるのですね。
そうですね。うちは高齢の方が多いし、3年・5年・10年後を考えて一緒に治していこうと、患者さんにも伝えています。効率を優先しすぎないということで、例えば超音波で歯石取りをする時に、一気に全部取ろうとして強いパワーをかけると、超音波スケーラーが傷を作ってしまうんです。歯にギザギザができてしまって余計に歯石がつきやすくなるんですよ。ある程度のパワーで処置し、仕上げはハンドスケーラーでデコボコをなくさないといけない。でもそうすると時間がかかるから、お忙しい人などは特に、患者さん側も歯科医師側も早さを選んでしまいやすいんですね。本当に患者さんのためになる治療とは何かを考えて、僕は、患者さん自身にもブラッシングなどを頑張っていただいて、時間はかかっても長い目で見て効果につながる治療をしたいと思っています。
今後の展望をお聞かせください。

週2回、妻がお弁当を届けてくれて経理的なことや受付や助手的なことを手伝ってくれていますが、他にスタッフは入れず基本的に1人で全部しているので仕事が多いんですね。朝6時半くらいにここへ来るから、夜は早く帰って家族の時間を大事にしたい、子どもの教育をきちんとしたいと考えてきました。それで今までは積極的に広告は行わず、ホームページもここの場所がわかる地図を載せるためだけに作ったようなもので。でも子どもが来年就職なので、これからはもっと積極的に仕事をしようと思っています(笑)。外に看板も作って、新しい患者さんにも来てもらえるようにしていきたいですね。