下田 典子 院長の独自取材記事
下田歯科
(大阪市東淀川区/新大阪駅)
最終更新日:2025/04/10

新大阪駅は、新幹線をはじめ、関西の各都市へとつながる在来線や地下鉄が乗り入れる主要駅。「下田歯科」が入るビルは、そんな多くの人が行き交う新大阪駅東口から約1分歩いた場所に立つ。歯科医院があるのはビルの8階。診療室の大きな窓からは、新幹線の線路が見下ろせる。下田院長がこの歯科医院を開業したのは1998年。先代である父親の仕事を受け継ぎ、院長に就任した。同院では虫歯や歯周病の治療と予防といった一般歯科を扱うほか、入れ歯や義歯治療の相談にも応じている。「話を聞くこと」を重視する下田院長に、診療のモットーなどについて話を聞いた。
(取材日2025年3月24日)
先代から通い続ける患者や、オフィス街で働く人が来院
歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

父が歯科医師で、お隣の東淀川駅で歯科医院を経営していました。私は4人きょうだいの3番目なのですが、他の3人が異なる職業を志す様子を見て、自分は歯科医師になろうと考えました。当時はなぜだか、「私が後を継がなければ」という使命感を持っていたんです。歯科大学を卒業した後は、大阪府内の歯科医院に入職しました。学生時代の友人の中には、大学に残る人が多かったのですが、私は元から父の歯科医院を継ぐつもりだったので、開業した先生のもとで働きたいと考えました。技術はもちろん、歯科医院の運営などについて、多くのことを勉強させていただきました。
歯科医院を継いだ当時のお話を教えてください。
1995年頃から、父の代診を務めるようになりました。1998年に父が他界し、継承しました。ありがたいことに、患者さんの中には、父の専門的な技術を頼ってくださる方もおられ、当時は大阪市外から通ってこられる方も大勢いらっしゃいました。父が引退するタイミングで後を継ぎ、院長として「下田歯科」を開業した頃には、そんな方々を引き続き支えていきたいという気持ちも強くなっていました。当時から今に至るまで、ずっと当院に通い続けてくださる患者さんがいらっしゃることは、本当にありがたいことです。そんな方々の健やかな姿や、楽しそうにおしゃべりされる姿を見ると、幸せな気持ちになります。
どのような患者さんが来院されますか。

一番多いのは、先代から続けて受診してくださる患者さんです。私が院長になってから20年以上たっていますから、中高年の方ばかりでなく、80代以上の方もいらっしゃいます。そのような患者さんが、ご自身のお子さんやお孫さんを連れて来られるケースもありますね。新しい患者さんは、若い方が多いです。おそらく、近所のオフィスで働いている方々や、このエリアに単身で暮らしている方々ではないかと思います。新大阪駅に近いこの地域は、大阪のオフィス街に通うにも、出張で全国に出かけるにも便利です。やはり、ビジネスパーソンが多い街なのでしょうね。時々、他府県の方が飛び込みで来院されることがあります。「新幹線でお弁当を食べていたら、かぶせ物が取れました!」や、「出張で数日間大阪に滞在するんですが、歯が痛くなってしまって……」など、緊急事態がほとんど。そんなご相談をしていただけるのも、この場所ならではなのかもしれません。
問診から、虫歯や歯周病につながる生活習慣を探る
診療内容と、診療をする上で心がけていることを教えてください。

診療内容は一般歯科です。虫歯や歯周病の治療と予防、入れ歯や義歯の治療などを行っています。診療する上で大切にしていることは、問診です。どの部分が、どの時期から、どのような状態なのか……といった症状に関する情報はもちろん、生活習慣についても伺うようにしています。生活習慣について伺う理由は、症状をより多角的に把握するためです。どうしてこの症状が現れたのかを理解し、どうすれば再発を防げるかを考えるためには、その方の日々の行動を知る必要があると考えています。
生活習慣を知る必要性について、詳しく教えてください。
虫歯や歯周病を進行させやすくする要因として、その方の生活習慣と関係している場合があります。例えば、健康のためにヨーグルトや果物を積極的に摂取している人は、ヨーグルトに含まれる乳酸や果物に含まれるクエン酸が、歯を溶かす原因になっているかもしれません。右手で頬づえをつく癖がある人や、頭の右側を下にして寝る習慣がある人は、知らず知らずのうちに右側の歯に負担をかけているかもしれません。せっかく治療をしても、虫歯や歯周病を招く生活習慣を続けていれば、症状が現れる可能性があります。私は「ヨーグルトを食べるな」「頬づえをつくな」と言うつもりは決してありません。ただ、健康的な歯を保つ第一歩として、虫歯や歯周病を引き起こし得る生活習慣をご本人が知ることは、非常に大切なことだと考えています。
問診のほかに、力を入れていることはありますか。

入れ歯・義歯の治療に力を入れています。入れ歯・義歯は、最初の型採りだけでなく、特にその後の調整が重要だと考えています。というのも、初めて入れ歯・義歯を作製するときは、噛み合わせを確認するために、その場で歯をカチカチ噛んでいただきますよね。でも、このときのカチカチするだけの歯の動きと、実際に食べ物をもぐもぐ咀嚼している歯の動きは、まったく異なるわけです。初めて装着したときにぴったりだと感じていても、咀嚼や発音をするうちに違和感が出てくることはよくあります。100分の1ミリの噛み合わせのずれが痛みの原因になったり、積もり積もって健康な歯の破壊につながったりする恐れもあります。細かい調整を重ねていくことを重視して、入れ歯・義歯の治療に取り組んでいます。
女性の歯科医師ならではのメリットとは、何だと考えられますか。
正直に言いますと、私自身は、女性の歯科医師であることを、そんなに特別なことだと感じてはいません。ただし、患者さんの中には「女性の先生だから来ました」と言ってくださる方や、女性ならではの悩みを打ち明けてくださる方もいらっしゃいます。ですから、女性であることが、患者さんにとって安心できる条件の一つになっているのであれば、それは幸いだと思います。男性の歯科医師に相談しにくいお悩みを持つ方がいらっしゃるなら、お気軽にお越しいただきたいですね。
「食べる幸せ」を、いつまでも体感するために
休日の過ごし方を教えてください。

たいていは書類の整理に追われていますが、月1回は歯科医師会ボウリング部の活動に参加しています。ボウリングの魅力は、年齢を重ねても続けやすいところ。ボウリング部のコンペで80代の先生が大活躍される姿を見ると、自分はまだまだだと感じます。ボウリング歴は約20年になりますが、今後も続けていきたいと思っています。
お仕事のやりがいを教えてください。
やはり、患者さんが喜ぶ姿を見るのが一番のやりがいです。例えば、入れ歯を入れている高齢の患者さんが「この間、焼肉を食べたんですよ」と、ニコニコしておっしゃる様子を見るとうれしくなります。硬すぎるものを噛むと、入れ歯が破損してしまう恐れもあるのですが、「細かいメンテナンスでサポートするので、思いきり食べてください。でも、少し加減して噛んでくださいね」などとお伝えしています。好きな物を好きなように食べられるのは、幸せなことです。その幸せが長く続くように尽力することが、私たちの仕事だと思います。
読者の方々にメッセージをお願いします。

前述のとおり、好きな物を思いきり食べられるということは、本当に幸せなことです。できるだけ長くこの幸せを続けるために、どうか歯を大事にしてください。そのためには、定期的に歯科医院に通う必要があります。数ヵ月に1回、お口の中を確認させてもらえば、小さな変化にも気づけます。定期的に通っていただければ、あなたの生活や体質を理解して、あなたに合う治療法やアドバイスを提示することもできます。歯科医院通いを、ぜひ習慣にしてください。私も、患者さんとそんな関係を築くことができるように、そして、お一人お一人に合わせたより良い治療やアドバイスができるように、今後も努力していきたいと思います。