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梅原 実 院長の独自取材記事

うめはらこどもクリニック

(世田谷区/三軒茶屋駅)

最終更新日:2021/10/12

梅原実院長 うめはらこどもクリニック main

開院10周年を迎えた三軒茶屋の「うめはらこどもクリニック」。梅原実院長は長年小児医療に携わり、呼吸器疾患、アレルギー疾患の診療、小児救急にも精通するベテラン医師だ。気さくな人柄が魅力的で、「以前の勤務先ではウメちゃんと呼ばれていました。子どもたちにとって何でも話せる大人でいたいので、この愛称も大歓迎」と語る笑顔は優しい 。どんなに忙しくても、「当たり前の医療を当たり前に」を信念とし、ママたちの疑問や不安にも時間をかけて答える院長。小児科医療にかける思いもじっくり語ってくれた。

(取材日2018年9月13日)

患者に選ばれるクリニックであるためのチーム医療

今年で開院10周年を迎えられたそうですね。

梅原実院長 うめはらこどもクリニック1

はい。10周年のお祝いに、スタッフのみんながポロシャツをプレゼントしてくれました。カンガルー親子をモチーフにした当院のロゴと、私のネーム入りで、本当に感激しました。当院に勤めていて妊娠・出産をしたスタッフはたくさんいますが、みんな子どもを連れて通ってくれるんです。幸せですよ。僕たちは常に患者さんに選ばれる立場。だからこそチーム医療を大事にしてきました。医師、受付、看護師、みんなが同じ方向を向いて、患者さんのためになることを考える。これからも追求していこうと、気持ちを新たにしました。

カンガルーのロゴにはどんな意味があるのですか?

おなかの袋の中でわが子を大切に育てるカンガルーのように、子どもをしっかり抱き締めてあげてほしいという気持ちを込めました。キッズスペースを設けていないのも、子どもと親御さんがそれぞれの世界に入るのではなく、子どもを膝に抱いて絵本を読んであげたり、一緒に折り紙をして楽しんだりしてほしかったからです。あとこのロゴには、おなかの中の子とは別に、元気に飛び跳ねている子が描かれています。小児科は病気の子だけでなく、健康な子どもも診てあげられる場所だということを意味しているんですよ。僕のスタンスはあくまで「応援」。ここは、子どもとママを応援するクリニックです。

先生は呼吸器が専門だそうですね。

梅原実院長 うめはらこどもクリニック2

小児喘息は気管支の炎症、主にアレルギー性の炎症だといわれています。時に命を奪う厄介な病気で、呼吸の状態が突然悪化して救急に運ばれる子も珍しくありません。アレルギーに関しては、今も原因が解明されたわけではありませんが、農村の子どものほうが、都会の子どもよりもアレルギー発症が少ないという報告があります。どこで暮らしていてもできるのは、室内の掃除や寝具の手入れをこまめに行い、アレルゲンを除去して悪化を防ぐこと。そうしたアドバイスも当院では行っています。僕が呼吸器専門だと知って受診される方も多く、頼りにしていただきありがたく思います。一方、遠くから来られるなどして、1回の診察ですべて済ませたいという親御さんもいますので、しっかりとした治療を行うには複数回の通院が必要になることもあるという点を、ご理解いただけるよう努めています。

子ども全般を診る小児科の医師に憧れて

なぜ医師の道へ進まれたのですか?

梅原実院長 うめはらこどもクリニック3

父が内科・小児科の医師で、僕にとって医師は身近な職業だったんです。尊敬できる数学の先生に出会ったことで、同じ道に進むことを考えたこともあります。人との出会いが人生に与える影響は大きいですね。小児科を専門にしたのは、人間全体を診たかったからです。当時は専門性の高い医療の必要性が問われ、内科といっても消化器、循環器などいろんな専門に分かれて進む時代でした。小児科は、子どもを診察するという点で専門家でありつつ、科学的にはその子の体全般を診察できる。そこを魅力に感じました。

小児科医はハードな印象がありますが。

僕の中に「楽か、つらいか」という考え方はありません。実際、勤務医時代も眠れないほど忙しい時や、当直の日は頻繁にありましたが、嫌だと思ったことはないんです。むしろ、自分の力が役に立つことがやりがいだった。医師に限らずどんな職業も、大変なのは同じでしょう。それに小児科医は本当に子ども好きが多いです。僕は日本小児救急医学会の代議員になっていて、脳死判定に対する取り組みにも携わっています。日本で子どもの脳死移植が遅れたのは、小児科の医師が「この子の命はここで終わり」と踏んぎれなかった部分が多かったからではないかとも考えています。そんな真摯な思いで診療にあたってきたので、自分が選んだ道を後悔していません。

長年小児科の医師として診療して来て、子どもを取り巻く環境に変化は感じますか?

梅原実院長 うめはらこどもクリニック4

夫婦共働きが珍しくない時代、最近では平日でも、お父さんが子どもを連れて来る様子がよく見られます。ベビーシッターさんが代わりに付き添われることもありますね。今は便利なサービスがたくさんあって、それをどう利用するか、ご家庭ごとに価値観は多様かと思います。ただ私としては、子どものことを理解していてほしい、子どもの病気に対して関心を持ってほしい、という思いがあります。熱が上がったのはいつからか、下痢は1日に何回あって、どんなやわらかさか、お子さんの状況を把握していないお父さん、お母さんは残念ながら多いです。もちろん医師側の対応も考えるところはあります。1週間分の薬を出して終わりで良いのか。僕にはそんなことはできません。5日分をお出ししたとして、なくなる頃に再度経過を見たり、「良くなったらもう飲まなくていいですよ」といった説明をしたり、患者さんごとに適切な対応を心がけています。

親子にとって、何でも話せる存在をめざして

大切にしている考えはありますか?

梅原実院長 うめはらこどもクリニック5

開業前に務めていた病院の先輩から教わった、「子どもと同じ目線で接すること」「自分の子を育ててこそ一人前の小児科の医師」という大きな柱を今も大切にしています。子どもと同じ目線というのは、“目の高さ”だけではないんですね。子どもは成長するにつれ、視界も広がるもの。大人から一方的な期待を寄せられ、ストレスフルな毎日を過ごす、そんな子どもたちにとって、僕は何でも話せる大人でいたいです。

子どもの視点も大切なんですね。

「子どもは悩みがなくていいね」と思うかもしれません。けれど本当は子どもだからこそ我慢していること、我慢できることだってあると思います。大人はお酒などでリフレッシュできても、子どもはストレス解消法を簡単に見つけられるわけではありません。僕はわが子から本当にたくさんのことを教わりました。振り返ると、僕たち親が突っ走って、子どもたちに付いて来させていた時期もありました。でもいつからか、それぞれの視点や視界を尊重しながら、親子の良い距離感を見つける努力ができるようになりましたね。

今後成し遂げたいことはありますか?

10年ほど前まで、子どもが病気であっても世話をするのは親、特に母親というのが常識でした。それではママたちが疲弊してしまう。そう考え、小児在宅医療の発展に取り組んできました。例えば、1人の子どもを10人の医師で診れば、在宅医療を担う先生方の負担を減らせます。しかし、在宅酸素を利用している、気管切開しているなど、医療ケアが必要な子どもたちがいる中、どう対応していいかわからないと断るクリニックは少なくありません。障害の有無にかかわらず、同じように子どもをクリニックに連れて行ける環境を整えたい。大きな声を上げてしまうたび、気まずそうにする親御さんの姿が気になっていたんです。バリアフリーというのは、設備面のことだけを指すのではありません。ソフト面のバリアフリーも必要だと考えています。

最後に読者へメッセージをお願いします。

梅原実院長 うめはらこどもクリニック6

当たり前のことを当たり前にやる。そして、つらい状態で来た子どもたちに元気になってもらい、ママたちには安心した表情で帰っていただく。私はこのことを常に心に置いて診療にあたってきました。どんなに忙しくても決して流れ作業にはできませんし、むしろ親御さんの話をじっくり聞くようにしています。だから、僕の初診は少し時間がかかるかもしれません。それをご理解いただける方にとって、いつも頼れる存在でありたいと考えています。今はテレビやインターネットの情報を信じて、不安を大きくする方もいますが、当院に限らずもっと僕たち小児科の医師を上手に利用してほしいです。大切なお子さんの健康を考えるなら、どんなことでもぜひ話してください。

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