永田 篤 院長の独自取材記事
ながた歯科
(茨木市/茨木市駅)
最終更新日:2025/04/02

阪急京都本線茨木市駅から徒歩2分の場所にある「ながた歯科」。前院長の代から50年以上、地域に根差してきたクリニックだ。2000年に現院長の永田篤先生が継承して以来、一般歯科、小児歯科を掲げるほか、障害者歯科にも対応し、障害のある患者を積極的に受け入れている。永田院長はこの分野で研鑽を積んできた歯科医師だ。大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部に現在も籍を置き、連携体制を整えている。クリニックのコンセプトとして、できるだけ保険診療でより良い治療を行うことをめざし、「声を上げにくい人々へ十分な治療を届けたい」と話す永田院長。その使命とともに歩み続ける院長に、診療についてのさまざまな思いを聞いた。
(取材日2024年3月5日)
社会的に弱い立場の人へも十分な治療を届けたい
お父さまからこちらのクリニックを継承されたと伺いました。

そうなんです。以前のクリニックを全面的にリニューアルした上で、2000年に私が院長に就任しました。父が開業してから、50年以上になりますね。実は父から「歯科医師になれ」と言われたことはなく、私自身は建築や美術に関わる仕事に就きたいと思っていたのです。それでもやはり影響があったのか、結果的には歯科医師の道に進みました。建築を仕事にする夢があったので、リニューアルの際は、院内の動線をはじめ、設計やデザインのアイデアをいろいろ考えたんですよ。もう24年前のことなので、今作ったらまた違う空間にしたかもしれませんが、いずれにせよ、患者さんが落ち着いて過ごせるような雰囲気を重視することは変わらないでしょう。
大学卒業後は、どのようなご経歴を歩まれてきたのですか?
初めは個人の歯科医院に1年間勤め、その間、休日には私の出身校でもある大阪歯科大学附属病院の麻酔科でも働いていました。ところが1995年の阪神・淡路大震災で自宅が全壊してしまい、仕事どころではなくなってしまって……。当時勤務していた歯科医院は退職し、働ける時だけ大学病院に顔を出させてもらっていました。状況が落ち着いた頃、麻酔科の先輩の先生に歯科クリニックを紹介していただき、当院を引き継ぐまで勤務していました。
麻酔科で働かれていたのですね。

口腔外科の手術で必要になる全身麻酔を現場で学びたいという思いから、麻酔科で働きました。糖尿病や高血圧、狭心症、心筋梗塞といった全身疾患がおありの方の歯科治療を「有病者歯科」と呼ぶのですが、治療時に配慮すべき点が多く、注意が必要です。治療中に急変することもあるので、全身疾患に関する知識を勉強するという意味でも、歯科麻酔科は適切な場所でした。当院では障害者歯科にも対応しており、学んだ知識や技術を生かしています。
こちらのクリニックの特徴を教えていただけますか。
基本的には保険診療の範囲で、なるべく良い治療を提供しようと取り組んでいます。当院の患者さんは大半が保険診療での治療を受けられているのではないでしょうか。自由診療をご希望の方には相談の上で対応することももちろん可能ですが、無理にお勧めすることはしません。誰もが高額な治療をできるわけではないですし、障害のある方はもちろん、生活保護の方など、社会的に弱い立場にある方々へもきちんとした医療を提供したいという思いです。その一環として、大阪府歯科保険医協会でも活動しています。保険医療の充実・改善を通じて国民医療を守ることを目的の一つに立ち上げられた協会で、同じ志を持った先生がたくさんいらっしゃいますね。
歯の「基礎工事」ともいえる根管治療に注力
障害者歯科を始められた背景には、どのようなきっかけがあったのですか?

私がいた大学病院では、障害のある方の治療の窓口が麻酔科だったので、自分の専門とすることにハードルはありませんでした。そして、実は最も大きなきっかけが、私の家族も当事者であることです。親御さんの気持ちが「他人事ではない」と感じる私こそ、やる意味があるのではないかという思いで取り組みを始めました。現在は大阪大学歯学部附属病院の障害者歯科治療部にも在籍し、週に1回診療を担当。当院では難しい症例の際などは大学とも連携しながら治療を行っています。
障害のある方への治療は、通常の治療とどのような違いがあるのですか?
障害のある方は「痛い」「つらい」と自分で言えないことも多いので、周りの方も気づくことができず、重症化してから歯科にかかるケースをよく見ます。また、治療の際に私たちでも大変な「口を開けてじっとしていること」が難しい場合もあり、暴れたり、飛び出したりしてしまうこともあります。一般歯科では対応できないと言われてしまい、困っている方が多くいらっしゃるので、障害者歯科の必要性を大きく感じています。一方で経営上の観点から個人クリニックでの対応には限界があるので、公的機関との連携が欠かせません。歯科医師会や大学などとも連携して、障害者歯科のために10年以上前から声を上げ、取り組んでいるところです。本当に一歩一歩にはなりますが、障害のある方が安心してかかれる歯科医院が増えるよう、実現させていきたいです。
その他に、こだわっている治療についても教えてください。

根管治療にこだわっています。虫歯などの原因により歯の内部の神経や血管を治療するもので、細菌を除去したり、痛みや腫れなどの症状を取り除いたりするための処置を行います。これは、歯を残すためになくてはならない「基礎工事」です。歯を抜かずに保存するためには、精度の高い根管治療を行うことが大切なため、重視している治療です。親知らずの抜歯など、外科的処置を行うことも多いですね。また、CAD/CAMシステムも、最近になって導入しました。これにより、セラミックなどの素材から修復物を作る際に、質の良い物を数時間で仕上げることにつながっています。仮歯の必要がないので、感染リスクの低減にもつながり、審美面にも配慮しています。なるべく予防中心に行っていくほうが結局治療のお金もかかりませんし、歯の健康にとって一番良いことだと思います。
患者さんと接する際には、どのようなことを心がけていますか?
うそのない対応をすることです。患者さんには十分な説明を行い、納得した上で同意を得る、インフォームドコンセントを前提としています。しかし患者さんの希望する治療だけを行うわけではなく、プロから見て「こうしたほうが良い」と考える部分があれば、きちんと理解してもらえるまで丁寧に説明することを大切にしています。一般の方でもわかりやすいように、利点と欠点を伝えるよう心がけています。患者さんに、そしてスタッフに対しても、堂々とした治療をしていきたいという思いです。いい加減なことをしていると、誰もついてきてくれませんので、一番意識しているところですね。
何でも気兼ねなく聞いてもらえる歯科医院に
今後の展望をお聞かせください。

私ももう57歳ですから、徐々に引退についても考えないといけない年齢です。今、当院には私のほかに、女性の先生が常勤で一緒に働いてくれています。彼女も障害者歯科を専門としているとても優秀な先生なんです。その上、コミュニケーション能力も素晴らしく、どちらかというとお笑い系でもあります(笑)。みんなと仲良くできるすてきな人柄ですし、当院を引き継いでもらえたらいいなという思いもありますが、違う場所に行きたい場合は後押ししてあげないといけませんね。そういった先々のことも考えていきたいです。また、私が注力している、茨木市で障害のある方が気兼ねなくかかれる診療所の設立についても、実現できるようまだまだ頑張っていきたいと思います。
お忙しいかと思いますが、休日はどのように過ごされていますか?
最近はなかなか時間が取れないのですが、運動することが好きです。50歳を超えてからテニスを始めました。以前はスノーボードなんかもしていましたが、体力的にもう限界です(笑)。春先からはロードバイクに乗るなど、スポーツを楽しんでいます。あとは車も好きで、ドライブが息抜きになっています。
最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

治療について疑問があれば、気兼ねなくどんどん聞いてください。誠心誠意、ご理解いただけるよう説明させていただきます。患者さんがご自分のされていることをわかった上で治療を受けてもらうことが、歯への意識を高めるためにも一番大切なことだと思います。歯科医院に「ぜひいらしてください」と言うのもちょっとおかしいかもしれないのですが、何でも気軽にご相談いただきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはセラミックを用いたかぶせ物/7万7000円~
ホワイトニング/4万4000円~
インプラント/11万円~