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山田 俊彦 院長の独自取材記事

森の子キッズクリニック

(横浜市緑区/中山駅)

最終更新日:2023/02/16

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック main

「ほのぼのとした家族を見ると幸せを感じるんです」と見るからに優しげな笑顔で語る「森の子キッズクリニック」山田俊彦院長。開業前は、ハイリスクな新生児に対する迅速な対応や家族へのきめ細かな支援が求められる新生児医療に長く携わってきた。多くの新生児とその家族の笑顔と涙に出会い、単に子どもの病気を診るだけでなく家族と一緒に喜びや悲しみを共有することの大切さを学んだという。「森の子キッズクリニック」という院名にも、子どもたちが健やかに育ち、自然の中で元気に遊べるようにという願いが込められている。親しみやすい朗らかな笑顔の中に、小児科医療に携わる医師としての強い責任感と、次代を担う子どもたちへの深い愛情が感じられるドクターだ。

(取材日2013年5月15日)

新生児高度医療で身につけた、家族にも配慮した小児科診療を実践

小児科医を志されたきっかけを教えてください。

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック1

父が小児科医で、この場所で小児科医院を開業していました。父の背中を見ながら育ち、物心がついた頃から、自分も医師になるのかなと思っていましたね。父の時代は医院と自宅が棟続きで、昼も夜もなく患者さんが来たり、急に往診に出掛けたりという姿を見ていたので、大変というよりはそれが医師としては当たり前のことなんだ、と思っていました。成長していくにつれ、そんな医師という職業に魅力を感じ、自分に向いていると思えるようになってきたので医学部に進んだのです。医学生時代は、脳神経外科と内科、小児科のうちどれを専攻するか迷いましたが、救急医療に興味があったことと子どもが好きということから、小児科のNICU(新生児特定集中治療室)を選びました。首都圏の基幹病院などで最前線の新生児医療に携わる一方、研修の一環として、長崎県対馬でへき地医療も経験しました。対馬では島の人にとても親切にしてもらって楽しく過ごし、今でも忘れられない思い出となっています。

NICUではどんなことを学ばれましたか。

NICUには、そこにいないとわからないこと、そこでしか学べないことが山のようにあり、貴重な経験をしました。何よりも命の大切さというのを教えてもらいましたね。NICUには、いろんな家族がいろんな思いで、病気の赤ちゃんと共に来られます。生きるか死ぬかという状態で緊急搬送されてくる赤ちゃんと、その家族にどう対応するかというのは、とても難しい課題でした。命が助からないお子さんもたくさんいましたので、家族にとってどういう形でお別れするのがいちばんよいのか、家族をどうケアするのかということも、小児科医として考えなければならないことだと学びました。今も診療の際に、科学的な根拠というより、「この子は緊急のケース」「この子は大丈夫」というパッと見た時に直感のようなものを感じるのですが、これもNICUで鍛えられたのだと思います。

開業を決意された経緯を教えてください。

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック2

NICUの仕事には大きなやりがいを感じていましたが、年齢と共に体力的には少しきついなと感じるようになってきました。また父が亡くなった後は医院を閉院したままでしたので、小児科医として地域の方への責任も感じ、2007年に開業しました。父は厳しい人だったので若い頃は反発もしましたが、自分が開業して医院経営に携わってみて、父が院長として多くのものを背負っていたことも理解できるようになりました。今は先輩医師としての生き方を見せてもらったこと、この建物を残してくれたことに大変感謝しています。そして今度は自分が父親となる番になりました。自分なりに父親像を考えているつもりですが、それは将来僕の3人の子どもが成人し、娘はどんな彼と結婚するのか、息子はどんな父親になるのかを見れば、自分の父親像が良かったのかどうかが分かると思います(笑)。

家族の不安やつらさに共感し、喜びや安心を共有

開業の際は、どんなところに配慮されましたか。

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック3

まず、お子さんもお母さんも来やすいクリニックにしたいと思いました。「森の子キッズクリニック」という名前には、近くに森があり緑豊かなことと、自然の中で元気に遊んでほしいという願いを込めました。そして、いちばんこだわったことは、バリアフリーです。NICUで障害や先天性の病気を持っているお子さんとご家族に関わることがとても多く、皆さんの苦労を見ていたので、開業する時にはぜひバリアフリーにしたいという思いがありました。また、待合室には具合の悪い子が横になれるスペースを作りました。これはよく使われていてお母さん方にも好評ですね。僕自身の子育ての経験を生かし、トイレには子ども用の小さな便器を設置したり、授乳室を設けたりしました。駐車場も12台分用意していますので、車で来院される方も多く、少し遠方の方も来てくださっていますね。

診療する上で大切にされていることは何ですか。

まず、患者であるお子さんの顔色や顔つきを見て、この子は今どういう状態なのか、その雰囲気を感じ取ります。次にお母さん、お父さんがどういう思いで来院されたのか、僕に何を期待し、求めているのかをくみ取ります。例えばお母さんと一緒に心配する方がよい場合と、逆にこちらは冷静に接する方がよい場合があります。助言してほしいのか、じっくり話を聞いてほしいのか、何か不安があるのか、そうしたところを見極めて先方に合わせるように心がけています。また、来院されたお子さんやご家族には、安心や満足感など、「あー来てよかった」と思えるようなものを持って帰っていただきたいと願っていて、その思いはスタッフも共有しています。僕と同じNICUで働いていた仲間や、NICUの経験のあるナースもおりますが、それ以外のスタッフも全員が僕の小児医療に対する考え方を理解して対応してくれているので、安心して患者さんや家族のサポートを任せています。

小児科医としてのやりがいは何だと思われますか。

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック4

まずは、子どもたちの笑顔ですね。僕は、クリニックの中でお母さんやお父さんがお子さんを可愛がったりする様子や、ほのぼのと楽しげな親子の風景を見るのが大好きなんです。そこに、小児科医としてのやりがい、僕自身の幸せを感じるのですね。親御さんがお子さんに愛情をかけているのを見ると「一生懸命診なくてはいけない」という気持ちになりますし、親御さんのつらい思いや不安に共感し、治ったときの喜びや安心を共有するのが僕のやりがいなのだと思います。ご家族やその子どもたちと接していると毎日楽しいこととたくさん出会えます。重い病気を経験した子どもたちが元気になって行く姿を見るのは大きな喜びですし、子どもたちのなんとも言えないかわいい仕草や、しばらくぶりに来院した子どもの成長を感じたり、ご家族が新しい赤ちゃんを連れてきて「また、宜しくお願いします」と言われると、自分の家族が増えたようにうれしく思います。

元気な子どもを育てるために。母親たちをも優しく見守る

ところでお忙しい毎日ですが、お休みの日はどう過ごされていますか。

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック5

子どもが大好きなので、娘や息子が小さい頃は一緒に遊んだり出かけることが多かったのですが、残念なことに最近は子どもたちが成長して、あまり付き合ってくれなくなってきて(笑)。もっぱら一人でジムで汗を流したり、ジョギングをしたりしています。走ることが大好きになり、そのおかげでダイエットもできたんですよ。診察時に「先生、大丈夫ですか?」とお母さん方から反対に心配されたぐらい痩せました(笑)。登山も好きなので、今後は、トレッキングやトレイルランニングに挑戦したいと思っています。

医療の面で、これから取り組みたいことはありますか。

開業してびっくりしたのは、アレルギーの子どもが多いこと。もう特別な病気とは言えないほど多い気がします。大人の花粉症が当たり前になっているように、子どもたちも湿疹や卵アレルギーが体質のようになっている印象があり、新たな取り組みが必要なのではないかと考えているところです。また気になっていることとしては予防接種の種類が増え、クリニック側も対応が大変なことです。同時接種の薬剤も開発が進んでいるので、そのうちに種類が整理されてくると思いますが、現状の中でもスムーズに予防接種ができるように考えていきたいですね。クリニックとしては今の状態を維持しつつ、在宅医療や病児保育への取り組み、家族のスペースづくりなどを視野に入れています。現状を維持するというのも意外と難しく、同じことをくり返していては維持できません。新しい情報を入手したり、世の中の流れや環境に対応したりということも必要なので、それを心がけていかなければならないと考えています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

山田俊彦院長 森の子キッズクリニック6

僕は、母親という職業はとても素晴らしいと思っています。小児科医として、母になることが、どれほどその人を成長させていくかを目の当たりにしてきました。お母さんは人を育てるという重要な使命を追っています。ぜひ誇りを持って、育児を楽しんでいただきたいと思います。一方で、最近の若い世代には「いい人」が増えた気がします。気持ちの優しい人というのでしょうか、お母さんやお父さんが優しくなっている気がします。素晴らしいことですが、優しいということはある面では弱さにつながり、人との付き合いが苦手な方や、人間関係がストレスになるという方が増えてきている気がします。心療内科にかかったり、睡眠薬などを服用されているお母さんも多いようなんですね。お母さんの心身の健康は子どもに影響を与えるので、お母さんにも元気でいてほしいと思います。次の世代を支える子どもたちをしっかりと育てることは大切な仕事です。でも頑張りすぎないで、肩に力を入れすぎずに気軽にマイペースで楽しんでいきましょう、とお伝えしたいですね。

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