福渓 康人 院長の独自取材記事
フクタニ歯科医院
(八尾市/近鉄八尾駅)
最終更新日:2025/05/02

近鉄八尾駅西口から南西へ歩いて6分。本町1丁目の交差点のビル1階にある「フクタニ歯科医院」は、院長である福渓康人(ふくたに・やすひと)先生が2代目を継いでから15年。地域に根差した歯科クリニックとして、周辺住人を中心に幅広い層に親しまれている。「気軽に通えるというのがうちの一番の特徴。歯科に関することは、ほぼなんでもやります」という院長の言葉どおり、一般歯科はもちろん、インプラント治療や入れ歯治療、口腔外科までその守備範囲は広い。そんな同院で大切にしている診療モットーや患者との向き合い方などを聞きながら、福渓院長の明るく誠実な人柄にじっくりと迫ってみた。
(取材日2019年7月16日)
自分がされたくないことは患者にもしない
ずいぶん昔にお父さまが始められたクリニックなのだそうですね。

父がこの医院を開業したのは今から50年以上前のことで、もともとは隣のビルの2階にありました。2004年に父が急逝し、私が後を引き継ぐことになりました。当時、私は他の開業歯科に勤めていましたが、父が治療中の患者さんを放っておくわけにはいきませんから、その日に辞めて父の代わりに診療室に立ちました。立ったら立ったで患者さんに「あんた誰?」という顔をされますし、経緯を説明をすると、そのまま帰ってしまう人、泣き出してしまう人、仕方がないから治療してくれという人もいて、そういう患者さんたちを引き継いで治療していくのは、正直、悩んでいる暇がないぐらい大変なことでした。
そこからどのような歯科をめざしましたか?
駅の近くにある「地域に根差した診療所」という基本スタンスはそのままに、やはり時代に合った、自分のやりたい医療を提供していきたいという思いはありました。今の場所へ移ったのは、私が院長になって半年後のことです。ここのオーナーが父の患者さんで、「1階が空いたら教えてください」と父からつねづね言われていたらしいんですね。すると父の死後2、3ヵ月で本当に空き、二つ返事で移転させていただきました。ある意味、父があとの道筋をちゃんと残してくれたように思います。診療室はチェア3台で、あえて個室にはせず低めのパーティションで仕切っています。また、歯科用CTやレーザー治療器、口腔外バキュームなどを少しずつそろえていきました。以前はインプラント治療は他院に頼んでいましたが、CTの導入後は当院で行っています。
こちらの診療コンセプトを教えてください。

「自分がされて嫌なことはしない」。それを一番に掲げ、自分の身内にするような治療を常に心がけています。「嫌なこと」の筆頭は、歯を抜かれること、削られることです。痛いことは誰でも嫌ですよね。もちろんやらざるを得ない場合もありますが、それは最低限に抑えるようにしています。あと、治療の選択肢をきちんと提案することも大切です。治療には必ずメリットとデメリットがありますから、その両方を必ずお伝えします。例えば歯を失った時に入れ歯にするのかインプラントを入れるのか、治療時のリスクや痛みだけではなく、将来、寝たきりや認知症になった時に誰がケアするのか、現実的な部分と経済的な部分も含めてしっかり説明することが重要ですね。
治療が完了するまで必ず通い続けてほしい
特にニーズの高い治療はありますか?

この地域には幅広い層の方が満遍なく住んでおられますが、やはりご高齢の方が増えているようで、入れ歯治療を希望される方が多いですね。当院で入れ歯を専門に依頼している歯科技工所があるのですが、そこの技工士さんに言わせると、当院は歯科医師1人でやっている歯科の中で入れ歯の外注数がかなり多いほうなのだそうです。あまり自覚はないのですが、それなりに評価されているのであれば幸いなことです。歯科医院で一番わかりやすいのは、歯を抜かれる時と入れ歯を入れた時。これは私が最初に教わった先生のお言葉です。入れ歯は、入れた瞬間に感じがわかるといいますが、言い換えればごまかしが利かない治療なのだともいえるでしょう。
院長が診療時に心がけていることは?
たわいもない世間話をすることでしょうか。近頃はご高齢で一人暮らしの方が大勢いて、今日一日、誰ともしゃべらなかったみたいなこともあるようです。そんな方は、受診がてらに気軽にしゃべりに来ていただければ、私がいつでも話し相手になりますよ。それから、小さなお子さんを抱えていて、連れていけば迷惑をかけると思っているお母さんが多いようです。当院は狭いためキッズスペースはないのですが、連れて来てもらっても一向に構いません。それに小さいうちから歯科医院の雰囲気に慣れていれば、将来その子が虫歯になっても怖がらずに済むかもしれません。ちなみに、「そんなにイヤイヤ言うんだったら先生に痛いことしてもらうよ」なんてお子さんに言うのだけはやめてほしいです。私、そんなひどいことは決してしませんから(笑)。
患者さんに対して望まれることはありますか?

特に初めて来た方に必ずお伝えしているのは、痛くなったら予約外であっても遠慮せずに連絡してほしいこと。もう一つは、まだ治療が終わっていないのに中断するのだけは絶対にやめてほしいということです。10人患者さんがいて10人とも私に合うとは限りませんし、お互い人間ですからウマが合わないというのは絶対にあると思います。ただ、途中でやめないでいただきたいんですね。まだ治療の途中なのに、痛みがなくなれば来なくなる方がまれにいらっしゃいます。治療が合わなかったのか、私のことが気に入らなかったのか、こちらにも責任があるかもしれませんが、もし用事があって治療に間が空いてしまっても決して怒ったりしませんから、必ず最後まで治療を完遂させていただきたいと思います。
コミュニケーションは互いに培うもの
プライベートはどうお過ごしですか?

現在の住まいは大阪市内で、妻と4歳の息子の3人家族です。休日はなるべく家族で過ごし、時間があれば子どもにかまうようにしています。45歳で子どもができて、こう見えてもすでにアラフィフです。運動会の父兄競技で走る時は、足がもつれないように気をつけねばなりませんね(笑)。趣味はスキーやゴルフもしますし、車や音楽鑑賞も好きです。ちょっと興味を抱いたら、とりあえず手を出してみるタイプです。やらずにああだこうだと言うのではなく、やってみて面白ければ得じゃないかという発想ですね。どんなことにも面白さはあると思います。歯科の仕事というのは同じようなことの繰り返しで、外部からの刺激がなければモチベーションが続きません。好奇心や向上心を失うことなく、センスを磨くことも必要ではないでしょうか。
今後に向けた展望はありますか?
私は人に任せられないタイプの人間ですから、今後も歯科医師は私1人でやっていくでしょう。ただ、私1人だけではすべてが完璧にこなせるわけではありません。よくチーム医療といいますが、まさにそのとおりです。現在、当院には歯科衛生士2人と受付1人がいますが、先ほどお話しした技工所を含め、本当にいい出会いがあって恵まれていると思います。開業医というのは医療だけでなく経営もやらねばなりませんが、患者さんもスタッフも、そのご家族も、もちろん私や私の家族も、みんなが幸せになることが一番の目標です。これまで、いろんな方とのめぐり合わせがあり、さまざまなサポートを皆さんからいただきました。それらを何らかの形でお返していければと、いつも考えています。
最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。

まず、今は医療も進んできていますから、歯医者の「痛い、怖い」というイメージからは、そろそろ脱却したいですね。また、インターネットなどの情報がたくさんあり、例えばヘアサロンなども、評判のいいところ、お得なサービスがあるところを探して変える時代になりました。もしかしたら、歯科をそのような感覚で捉えている人もいるかもしれません。しかし、髪の毛は切ってもまた伸びますが、歯は一度削ったら元に戻りません。たとえいろんな情報が得られたとしても、判断はやはりプロである私たちにお任せいただき、決めるべき部分はご自身でしっかり決めていただきたいと思います。やはり一番大切なのは、お互いの信頼関係でしょう。コミュニケーションは一方通行では成り立ちませんから、私も十分に気をつけながら、皆さんのお役に立っていきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/33万円~