池田 賀剛 院長の独自取材記事
池田歯科医院
(松原市/河内松原駅)
最終更新日:2023/08/03

近鉄南大阪線・河内松原駅から徒歩5分。戸建てと商店が立ち並ぶ一角に「池田歯科医院」がある。院長の池田賀剛(いけだ・よしたか)先生が生まれ育った地元、河内松原で1996年に開業。院内はアットホームな雰囲気でどこか懐かしさを感じる居心地の良い空間だ。池田院長は持ち前の明るさと、親しみやすい語り口で、古くから通う患者の信頼も厚い。モットーは「一生自分の歯で食べてもらうこと」だという池田院長に開業までの経緯や診療に対する思いなどを聞いた。
(取材日2018年5月14日)
一生自分の歯で過ごすことの大切さを伝える
歯科医師をめざされたきっかけと開業までの経緯を教えてください。

もともとはここで父が歯科医院を開業していましたので、子どもの頃から歯科医師という存在が身近ではあったと思います。大阪歯科大学卒業後は2年間勤務医として働き、その後大学院へ進み歯周病学を学び学位取得、そしてまた2年ほど勤務医として働きました。父は1978年頃に一旦医院を閉院していましたのでブランクがあったのですが、再びこの地で1996年に「池田歯科医院」として開業しました。
大学院ではどのような研究をされていたのでしょうか?
細胞接着がどうやって起こるのか、という研究をしていました。細胞自体は独立して存在することができないので、すべての細胞は細胞同士が接着していろいろな組織や器官を作っています。接着のメカニズムに何が関与しているのかがその頃まだわかっていなかったのでその研究や、歯を支える骨である歯槽骨の研究をしていました。歯周病になることで歯槽骨が吸収され、歯肉だけになることで歯がグラグラします。そうなると当時は歯を抜いて義歯にするしかなかったんですよね。だからどうすれば歯を抜かずに自分の歯で一生過ごせるのか、日々研究していました。
当時は歯が悪くなると抜くのが主流だったのですね。

25年ほど前のことですが、当時は世界的に予防歯科の重要性が徐々に広まり、虫歯が減り出した頃。でも日本は遅れていて、虫歯で歯がグラグラしたら抜いて義歯にするのがまだ主流でしたね。大学を卒業後、スウェーデンの歯科医師の話を聞く機会があったのですが、北欧では日本と比べ物にならないくらい歯が残っていたのです。他にも海外の先生の話を聞く機会があったのですが、海外では朝開院し、夕方閉院するまでの間、来る患者のほとんどが予防中心だと言うのです。治療よりも予防がメインのクリニックと聞いて当時は衝撃を受けましたね。日本もいつかそんな時が来るのかなと思っていましたが、まさに予防歯科の時代が来ましたね。今ではどこのクリニックも予防歯科の大切さをお話ししていると思います。
歯だけでなく、全身の健康を意識することも重要
患者さんの層と多い主訴はどんなことですか?

古くから通ってくださっているご高齢の患者さんが多いですね。最近では年を取られてからも健康のために前向きで、歯を大事にしようという意識の高い患者さんも多く、1本でも自分の歯を長く大事にしようと予防歯科として来られる方が多いです。若い方も虫歯のある方は少なく、ご自身で予防をしっかりされている印象ですね。タバコを吸う方も少なくなりましたし、口臭で悩まれる方も減ったように感じます。今は完全予約制で診療しておりますので、電話で予約を取ってから来ていただくようにお願いしています。土曜の午後も19時30分まで診療していますので、平日お仕事で忙しい方も来院してください。
予防歯科として患者さんにどのようなアドバイスをされますか?
とにかく自宅でのセルフケアをしっかりしてもらうことですね。フッ素入りの歯磨き粉を使ってしっかり丁寧にブラッシングしてもらうよう指導しています。あとは生活習慣病になるような生活をされている方は、少しでも見直してもらえればと思っています。やはり歯が悪くなりやすい人はどうしても食生活の面で1日中食べたり、飲んだりされている方が多いように思います。せっかく1日3回しっかりブラッシングしてもだらだら食べたり、時間帯を気にせず食べたりすると虫歯を防ぐのは難しいです。糖分はやはり歯にはよくないので甘いものを適量に控えてほしいですね。歯だけでなく、全身の健康を気にすると自然と糖分の摂取も減り、体も歯も健康になると思います。自分の歯をいかに残すかを日頃から意識してほしいですね。
患者さんとのコミュニケーションで気をつけておられることはありますか?

上から目線で偉そうにならないように気をつけています。実は昔、若いにもかかわらず歯がとても悪くなっている患者さんに、とにかく歯を大事にしてほしい、という叱咤激励のつもりで少しきつめに注意してしまい、患者さんの気を悪くしてしまった経験があるんです。私は悪気なくとにかく一生自分の歯で食べられるように気をつけていきましょう、という思いで少しきつい言い方になってしまったのですが、患者さんの受け取り方は違ったようでその時に反省しました。だから普段の診療では決して偉そうにならないように、患者さんと対等な目線で話すように心がけています。
歯科医師の出番が減るのはうれしいこと
患者さんとの印象に残っているエピソードを教えてください。

74歳の鉄筋工の方でお仕事をバリバリされていて、仕事が忙しくしばらく通えなくなっており、その間に歯がどんどん悪くなって痛みに耐えられず再び受診されたのですが、もう上の歯が全部ダメになってしまっていて、下の歯も悪くなりかけていました。その後は、ずっと通ってもらっていたのですが、その後突然倒れられ亡くなってしまいました。タバコ、お酒が大好きな方でしたので、歯だけを診るのではなく、もう少し生活習慣の面でもアドバイスしていれば何か変わったかな、と悔しい気持ちです。歯を残すだけでなく、その後健康に生活してもらうためにもう少し何かできたんじゃないか、と思うことがありますね。
休日の過ごし方と先生がご自身の健康のために気をつけていることを教えてください。
休みの日は1時間ほど散歩をしています。実は2年前にくも膜下出血で倒れ、5ヵ月入院しました。ありがたいことに後遺症もなく日常生活を送ることができていますので、自分自身の健康を見直すことにしました。倒れる前は血圧が高く、今考えるとやはり食生活が原因だな、と思うので、今は薄味を意識して食事をするように心がけています。もちろん歯科医師として自分自身の歯の健康も気をつけて正しい食生活と、毎日のブラッシングはしっかり磨いています。私自身も一生自分の歯で食べられるよう皆さんのお手本になれるよう頑張っていきたいと思います。
今後の展望をお聞かせください。

虫歯がどんどん減って治療の必要がなくなってくるとクリニックに来院する人が減るでしょう。私は皆さんが自分の歯を大事にしてくださって治療の必要がなくなり、歯科医師の仕事が減って暇になるのはとてもうれしいことだと思っています。とにかく一生自分の歯で食べてもらう、歯科医院に長く通う必要がないように毎日のブラッシングを徹底し、歯だけでなく体調が悪くなれば病院にかかったり、栄養士さんの指導を受けたりと、体全体の健康を意識してほしいですね。自分の歯でおいしいものを食べて、睡眠もしっかり取る、そういう当たり前の生活を送れることが幸せだと思うんです。お金をかけて良くするのではなく、自分の歯をしっかり手入れして、一生自分の健康な歯で食べてもらえれば歯科医師としてこれ以上うれしいことはないですね。