田中 伸明 院長の独自取材記事
吉田矯正歯科クリニック
(神戸市中央区/三ノ宮駅)
最終更新日:2024/12/24

阪急神戸本線と阪神本線の神戸三宮駅、JR神戸線の三ノ宮駅から北へ向かって歩いてすぐのサンキタ通り沿いに立つビルの8階に、「吉田矯正歯科クリニック」はある。1990年に前院長の吉田建美(よしだ・けんみ)先生が開業した矯正専門の歯科クリニックを、2023年に田中伸明(たなか・のぶあき)院長が引き継いだ。矯正歯科の普及に尽力した吉田前院長から継承した技術によるマルチブラケットでの矯正に加え、マウスピース型装置を用いた矯正などの新しい技術も積極的に導入する同院。専門性に加え、できる限り患者の希望に沿った矯正を提供できる体制を整えている。矯正歯科への思いや診療におけるこだわりなどについて、田中院長に聞いた。
(取材日2024年10月29日)
矯正歯科の面白さに惹かれ、矯正専門の歯科医師に
田中院長が歯科医師を志した理由と、矯正歯科を専門に選んだ理由を教えてください。

親戚に歯科医師がいて身近な職業だったことと、中学生か高校生の頃から何か技術が必要な専門職に就きたいと考えていたことでしょうか。中でも他の人が簡単にできないようなことをしたかったんです。矯正歯科を専門にしたのは、何より面白いと思ったからですね。矯正は歯科の中でも少し特殊な分野で、好きか嫌いかが分かれやすい領域といえるのですが、僕は非常に興味深いと感じました。大学で学んだ当初から、歯が三次元的に動くよう図って、きちんとした噛み合わせになるように矯正していくのが面白くて。過程が目に見えて、患者さんに喜んでもらえるのもやりがいを感じるところですね。
広島大学でも長らく矯正歯科を専門に研究されていたのですね。
広島大学の矯正科に先輩がいたこともあり、大学卒業後に、広島大学大学院医歯薬学総合研究科へ入学しました。広島大学では、矯正の基本であるマルチブラケットというワイヤー矯正について、まずは基礎からきちんと勉強しました。今は、マウスピース型装置を用いた矯正など新しい技術も登場していますが、まずはワイヤー矯正が学問としてのベースになるので。広島大学には13年近く在籍していて、顎関節症の研究もしていたんです。顎関節症は関節の病気ですが、矯正歯科とも深く関わるものですし、現在の診療にも生かせていると思います。
こちらには、どのような経緯で入職されたのですか?

広島大学に10年以上在籍して、そろそろ臨床を中心に取り組みたいと考えるようになったんです。大学はやはり学術機関なので、研究が中心でした。研究でやれることは一通りやったと思えたこともあり、今度は臨床をきちんと勉強したいと思ったんです。加古川市の出身なので、関西に帰りたいなと考えていたところ、広島大学の教授に紹介してもらったのが前院長の吉田先生でした。紹介してくださった教授と吉田先生は、出身大学が同じ大阪大学で先輩、後輩の関係なんですよ。吉田先生のことは前から存じ上げていたので、しっかり臨床を学ばせてもらおうと、当クリニックにやってきました。そこからもう15年近く診療しています。
可能な限り、患者のニーズに沿った治療法を
院長に就任されてから、クリニック内で何か変化はありましたか?

吉田先生から「変えていって」って言われたから変わったんです。表向きは大きく変わったように見えるかもしれませんが、クリニック内では徐々に移行していったので、それほど大きな変化はないように感じます。吉田先生も毎日診察されていて、もともと担当されていた患者さんをそのまま診ていらっしゃいますね。僕自身がやるべきことも、院長就任前と変わらず患者さんに向き合って治療していくことなので。ただ、僕のやりたい治療をやらせてもらうようにはなりました。
田中先生が院長に就任されてから、マウスピース型装置を用いた矯正を導入されたのですね。
はい。やはり矯正の基本は、マルチブラケットによるワイヤー矯正なのですが、最近は若い方を中心にマウスピース型装置を使った目立ちにくい矯正を希望される方が増えてきました。これまで、当院ではマルチブラケットによる矯正が中心でしたが、そういった昨今の傾向を踏まえて、患者さんのニーズに合わせた選択をできるようにしたいとマウスピース型装置を用いた矯正の導入を決めました。矯正を希望して来ていただいた場合、まずは患者さんの特に気になることや改善を図りたいこと、どんな装置での治療を希望するかをヒアリングすることから始めます。もちろん、症例によっては患者さんの希望どおりの方法ではできないこともありますが、できる限りいろいろな選択肢を示して、ご提案するようにしています。
お子さんの矯正についてのお考えを聞かせてください。

すぐに矯正を行う必要があるケースと、矯正を行っても将来的に再矯正が必要になるケースがあり、その見極めが大切だと考えています。例えば、顎のずれがあるというような場合は、矯正は早いほどいいと思います。通常、前歯が大人の歯に変わっていく7~8歳が矯正開始の一つの目安ですが、受け口など幼稚園生くらいから矯正したほうがいい場合もあるので、気になる場合は早めに診てもらうことが大切です。その後は、永久歯が生えそろう中学入学頃が目安ですね。最近は中学生になると勉強や部活動が忙しいので、小学生のうちに矯正が終わることを希望される方もいらっしゃいます。しかし、一生使う大切な歯である前歯から7番目の12歳臼歯(第二大臼歯)までは、中学生以降にすべて生えそろうので、通常、最終的な矯正はそれ以降に行います。
どんな患者さんが多く来られますか?
お子さんからシニア層まで幅広い年齢の方が受診されます。症状によっては就学前のお子さんの矯正もあれば、60代の方の部分的矯正まで、また矯正方法もさまざまです。当院では、歯の表側から装置を着ける標準的な矯正や裏側から着ける矯正(リンガル矯正)、マウスピース型装置を用いた矯正といった代表的な方法に加え、アンカーと呼ばれる小さなネジを一定期間顎の骨に埋め込み、より精密さにこだわるインプラント矯正、さらに外科的矯正まで、幅広い方法に対応しています。それぞれにメリット、デメリットがあるので、患者さんの症状や年齢、ご要望に応じてどの方法が適しているかを判断していきます。
患者が納得できる治療を、できるだけ少ない負担で
こちらでは、顎変形症治療に関連する矯正を保険診療で受けることができるそうですね。

はい。当院は、そのための施設基準を満たしています。これにより当院では、受け口や顎のずれなど顎変形症の治療を受けられる患者さんには、手術も矯正も、すべて保険診療が適用されます。このことを知らない患者さんがまだまだ多くいらっしゃるのですが、保険が適用されることは大きなメリットです。悩まれている方は、ぜひご相談いただければと思います。
田中先生が、診察する際に心がけていることを教えてください。
当たり前のことですが、しっかり説明をすることです。患者さんの不安を拭うためにも、今から何をして、どうなっていくのかということをきちんとお伝えします。「少し噛みにくくなります」など、デメリットも伝えるようにしていますが、ご本人が別のことを気にされている場合もあるので、こちらからも尋ねるようにしています。何でも気軽に聞いてもらえるよう、フラットな姿勢で接することも意識していますね。また、矯正は患者さんにとって、時間もお金もかかることです。特にマルチブラケットを使うと痛みもありますし、大変です。その分、患者さんが納得できるように行わないといけないと思っていますし、可能な限り矯正期間を短くして、患者さんの負担が少しでも軽くなるようにしたいというのは、ずっと心にあります。「自分の子どもならするかな、しないかな」ということを判断基準にして、患者さんへも提案させていただいていますね。
最後に、今後の抱負をお聞かせください。

イノベーションがどんどん起こっている業界でもあるので、常にアンテナを立てて、情報のアップデートは怠らないようにしようと思っています。新しい技術も次々に出てきますし、患者さんにとって良いと判断できる技術であれば、積極的に取り入れていくつもりです。逆に、使ってみて駄目だと思ったものは使いません。吉田前院長が築かれた土台の上に、新しいものをプラスして、これまで通ってくださっている患者さんにも、新しく通ってくださる患者さんにも信頼していただける歯科クリニックにしたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはI期治療(22万円~)、II期治療(33万円~)、表側の矯正(70万円~)、裏側矯正(100万円~)、マウスピース型装置を用いた矯正(50万円~)、インプラント矯正(66万円~)
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。