内木 重光 院長の独自取材記事
内木歯科医院
(世田谷区/三軒茶屋駅)
最終更新日:2024/07/12

三軒茶屋駅から徒歩5分。歴史を感じる「内木歯科医院」の建物は、院長の内木重光(ないき・しげみつ)先生が先代である義理の母から受け継いだものだという。「お話をするのが好きなんです」と語る内木院長は、穏やかな笑顔が印象的。「歯内療法学」のスペシャリストとして、歯の神経を取ったり、細い針で歯の中を削って消毒したりする、根管の治療を得意としている。そうした歯科治療を苦手とする人がいるからこそ、その道を究めて患者のために尽力したいと考えたそうだ。そんな真摯な姿勢を貫く内木院長に、診療や患者への思いなどを聞いた。
(取材日2014年4月15日/情報更新日2024年6月25日)
「好き」を仕事にしたいと、歯科医師の道へ
待合室に書の掛け軸とは粋ですね。

ありがとうございます。この掛け軸は、「こういう作品があったほうが和めるのでは」と、自らも横浜に診療室を持つ、同じく歯科医師の妻が選んでくれました。歯科医院ですから、患者さんに医療情報を知っていただくための通知ポスターは必要です。ただ、待合室に貼ってあるのがポスターだけでは味気ないですよね。それで、少しでも患者さんにリラックスしていただければと思い、インテリアには工夫を凝らしています。
院長が歯科医師をめざしたきっかけについて教えてください。
僕は高知県出身で、祖父と父が高知市内で歯科医院を営んでいます。小さい頃は歯科医院が遊び場で、よく患者さんにも怒られたものです。同時に、つらそうな顔で来院した方が笑顔でお帰りになっていく姿もよく見ていました。そんな環境で育ったので、「人のためになる仕事に就きたい」という気持ちはとても強かったですね。医師になろうかと考えたこともありますが、結局は歯科医師を選びました。父たちの仕事ぶりを近くで見ていて、やはり身近な職業だったのだと思います。また、父たちの仕事も大好きだったので、自分がその仕事に就けることもうれしかったですね。実は兄も歯科医師なんですが、とても器用だし勉強家で、今は大学病院の口腔外科にいます。これまで歯科医師として仕事を続けてきて思うのは、技術と知識は努力すれば身につくということ。好きでなければ、何事も続けられないですよね。
ご専門の歯内療法学とはどのような学問でしょうか。

歯の内側にある神経の病気や治療についての学問です。僕は東京歯科大学を卒業後、そのまま歯内療法学講座に入局し、歯の神経がどうなると病気になったり、治ったりするのか、またそれを踏まえた上で、どう治療していけば良いのかという研究をしていました。歯内療法学は、歯の治療の基礎中の基礎です。歯の中は直接見ることはできません。いい加減な診療をしないためにも、見えない歯の中の治療をしっかりと勉強したいと思いました。現在では歯を削っていけばそこでどういった反応が起きているのかが推測できます。神経を抜いた後の治るまでの過程や、どんな薬を使えば患者さんの負担軽減につなげられるかもよくわかっているので、当時の勉強はとても役立っていると思います。
めざすのは幸せのレベルが1つ上がるような診療
開業の経緯を教えてください。

ここは義母が開業した歯科医院で、僕に代替わりしてからも含めれば、30年くらい診療を続けていますね。もともとは自分で開業する場所を探していましたが、義母の体調が悪くなり、継承する話が浮上しました。それまでここを手伝っていた経緯もあり、勝手はだいたいわかっていたんです。義母も「しっかりやってくれればいいよ」と言ってくれたので、そのまま受け継ぐ決心をしました。妻と結婚していなければ、おそらく高知県に戻って開業していたと思います。でも、どこにいても歯科医師としてやるべきことは変わりません。当院は年配の患者さんも多く、長く通ってくださっている方がほとんどです。どんなに古いカルテも取ってありますから、久しぶりに来られた患者さんのカルテも出すことができます。そうした部分が患者さんの安心につながっていればうれしいですね。
診療の際に心がけていることはありますか?
自分がされて嫌な治療を患者さんにしない。それが僕のモットーです。自分が「こんな治療が受けられたらいいな」と思う治療だけを行うよう心がけています。新型コロナウイルス感染症の流行以前は、初診の患者さんと接する際、必ずマスクと手袋を外し、正面に立ってお話しするようにしていました。治療する歯科医師がどんな人なのかわかれば、患者さんは安心できますよね。僕にとっても、患者さんとのお話を通して知ることは多いです。歯が痛かったら話し方に違和感があるものですし、お顔を正面から見れば腫れているかどうかもある程度確認できます。僕にとっては、「話す」ということ自体が第一診察のようなもの。その後に、どんな器具を使って、どんな治療をするのか丁寧に説明します。そうすれば、緊張していた患者さんも少しはリラックスでき、満足度の高い治療を受けていただけると思うんです。
診療方針についてお聞かせください。

基本的には抜かない治療を心がけています。実際には抜かなければいけない場合もありますが、できるだけ自分の歯を残し、生涯自分の歯で食べることをめざした治療をしていきたいです。80歳になっても全部の歯が残っている方もいますよね。僕もそのような状態を理想とし、今ある歯を減らさないように患者さんへ指導していくことに力を注いでいます。目標とするのは、幸せのレベルが1つ上がったように感じていただける診療です。患者さんが安心して治療を受けられるよう、いつも心を配っていますし、診療後は、にっこり笑ってお帰りいただけるように力を尽くしています。
院長が歯科医師として尊敬している方はどんな方ですか?
学生の頃に指導してくださっていた2人の先生です。1人は、インプラントの勉強でスウェーデンに留学されていた方です。僕が補綴の技工スペースにバイクの写真を貼っていて、バイク好きな先生の目に留まったのがきっかけで親しくさせていただきました。仕事がとても丁寧な先生であり、歯科医師としての姿勢を学びましたね。2人目は歯内療法の医局の先輩で、当時はまだ大学院生だった方です。年も僕とあまり変わらないのに、難しい症例の対応も的確に素早くこなしていて、技術面でたいへん勉強させていただきました。東京歯科大学は基礎実習時から少人数クラスで、講師の諸先生方がつきっきりで指導にあたる学校だったんです。当時は大変なこともありましたが、勉強する環境にとても恵まれていましたね。あらゆることをしっかり学べたことに感謝しています。
定期的な受診と適切なセルフケアで歯の健康を守る
歯の健康を保つために、こちらでご指導されていることを教えてください。

歯間ブラシやフロス、歯ブラシによる口内の掃除です。歯を悪くして、抜いたり削ったりして治療するよりも、まずはいかに自分の歯を長く残していくかが大切ですので、「後磨き」のポイントなども指導させていただいています。ただし、どんなケアであってもやりすぎれば歯茎を傷めてしまいますので、注意が必要です。僕がいつも患者さんに言うのは、「何事もちょっとずつ」ということ。例えばフロスが上手に使えない場合も、決して無理やり押し込もうとしてはいけません。少しずつ慣れていけば上手になるので、焦らないでいただきたいですね。
お忙しい毎日だと思いますが、休日はどのように過ごされていますか?
昔はバイクに乗るのが好きだったんですが、今はもっぱらレコード鑑賞が趣味です。CDではなく、レコードでジャズを聴くのが好きなんです。普段はそれほどまとまった休みは取れないので、家でゆっくりしていることが多いですね。あとは健康のためにプールで泳いだり、ウォーキングしたりしています。水泳はとても疲れますが、全身の筋肉を満遍なく動かせて関節を痛めないので、いい運動になっていると思いますよ。
最後に読者へメッセージをお願いいたします。

早期に対処したほうがお金も時間もかかりません。予約の変更もできますから、少しでも気になることがあれば気軽に相談してほしいです。その後も3・4ヵ月に1回を目安に来てくだされば、大きな虫歯になる前に対処でき、歯石なども取りやすいんです。難しい方は半年に1回でもいいので早めにお越しください。小さいお子さんがいるお母さん方は、なかなか検診に来られないかもしれませんが、歯の健康をステップアップさせていくためにも、時間を見つけて来ていただけるとうれしいです。近年増加している歯槽膿漏については、専門の歯科医師が相談や治療に対応しますので、気になる方は遠慮なくお声がけください。