岡本 里恵子 院長の独自取材記事
岡本歯科医院
(大和高田市/高田駅)
最終更新日:2024/07/01
「岡本歯科医院」は、JR和歌山線・高田駅から徒歩約5分、近鉄大阪線・大和高田駅と近鉄南大阪線・高田市駅からは徒歩約10分の、商店街にほど近い位置にある。レトロな街並みの一画になじむ、時代を感じさせる看板が目印だ。古民家の雰囲気を残す外観とは裏腹に一歩中に足を踏み入れると、白と木目を基調とした明るい院内に、近代的な医療機器が並ぶ洗練された空間が広がっている。100余年続く同院で、祖父、父に続き3代目を務める岡本里恵子院長。気さくでハキハキとした口調の裏側には、通い続ける患者の歯に最後まで責任を持ちたいという意思が感じられる。そんな岡本院長に、地域に根差し、長年愛される同院について話を聞いた。
(取材日2024年5月23日)
地域に根差して100年以上。老舗の歯科医院
院長先生で3代目と伺いましたが、子どもの頃から歯科医師を志されていたのですか?
私は子どもの頃から運動が好きで、高校1年生の終わりまではバレーボール部に入って毎日ずっと練習ばかりで、学生の頃は歯科医師になることは考えていませんでしたが、母からの「あなたは手先が器用だから歯科医師に向いてると思う」という言葉をきっかけに歯科医師になることを意識し始めました。強豪校だったので毎日朝から夜遅くまで休みもなくバレーボールの練習をしていましたので、それまで歯科医師として働く父の姿をあまり見る機会もなかったのですが、祖父の代から続くこの歯科医院で引き続き地域の患者さんの歯の健康をお守りしていきたいと思い、歯科医師になることを決意しました。
後を継がれるまで、口腔外科で経験を積まれたそうですね。
大学卒業後口腔外科の医局で2年間初期研修を受け、滋賀県にある病院の歯科歯科口腔外科に勤めました。そこの歯科部長は先進的な考え方の先生で、私の歯科医師人生において大切なことを教えていただきました。インプラント治療や摂食嚥下機能(食物を認識して口に入れ、飲み込むまでの一連の動作)を保つことの重要性、在宅診療など、今でこそ重要視されていますが、当時はまだ一般的ではなかった分野についても、先生のおかげで学ぶことができました。臨床では、虫歯の治療や義歯の作製などの一般歯科に加え、口腔外科手術や救急科外来でのトラブル対応、幼稚園の歯科検診まで、さまざまな経験をさせていただきました。それらの経験を通して、緊急時の対応や自分が治療できる症例かという見極めができるようになり、今の診療に役立っていると感じます。地域の医療機関との連携も大切に診療を行っています。
医院を継がれたのはいつ頃ですか?
当院には2006年から勤務し始めました。当初はまだ子どもも小さかったので父の手伝いとして働き始め、3年ほどたって院長になりました。父は現在も体調に合わせながら一緒に働いてくれています。私は患者さんの要望に「これできないの?」と聞かれた時にできる限り対応できる環境を用意しておきたいと考えています。そのため、できる限りの機器をそろえ、勤務先で学んだ知識や経験を生かして、今後もあらゆる選択肢に対応できるようにしていきたいと思います。
患者の歯は一生診るつもりで診察する
こちらで勤務し始めた際にリフォームされたとのことですが、こだわったポイントはありますか?
3台あるチェアユニットの配置です。リフォームの際には個室にしようかとも考えたのですが、患者さんの状態をすぐに把握できる今の状態にしました。最近は個室の歯科医院も多いですが、個室にしてしまうと患者さんと歯科衛生士がどのようなやりとりをしたのか私は把握できず患者さんに同じ話を何度もさせてしまうなどの手間をおかけすることになります。メインとなって診療する歯科医師は私一人ですし、当院を選んで通ってくださる患者さんのお口を一生支えたいという気持ちを持っていますので、常に全体を把握しておくことを大切にしています。スタッフとも力を合わせて、すぐに患者さんのお声に耳を傾けられる環境づくりを大切にしておりますので安心して通っていただけるととてもうれしいですね。
歴史ある歯科医院ですが、長く通われている患者さんも多いのでしょうか?
父の代から長く通ってくださっている患者さんも多いです。年齢から内科的な疾患のある方も多いので、診療中も体調の変化には気をつけています。また、当院では、駐車場も備えていますので、車で奈良県内のあちこちや大阪府から通ってくださる方もいます。近隣の高田小学校の学校歯科医師をしていることもあり、お子さんもいらっしゃいます。歯科医師である前に母親、主婦でもありますので診療時間がどうしても短く、皆さまにはご迷惑をおかけしていますが痛い、義歯が割れたなどの急を要する症状の場合はできるだで素早く対応できるようにしております。
お子さんの治療では、どのようなことに気をつけていますか?
嫌がるお子さんを無理やり押さえつけて治療をすることはせず、親御さんにもすぐに治療ができず回数がかかることがあることを事前に説明し了承を得てから診療することを大切にしています。無理やり治療をして、その子が歯科医院を嫌いになってしまうことは避けたいですね。まず、歯科医院は怖い所ではないということを知っていただくように心がけています。なので怖がっているお子さんの場合、最初は診療室で機器に触れて遊んで帰ってもらうだけのこともあります。親御さんには、どうか「歯科医院は怖い所」というイメージを子どもさんに持たせないようにしていただきたいですね。「怖くない」「痛くない」などの言葉はお子さんが不安を持ちやすい言葉でもあるので、「お口の中をきれいにしてくれる所」「歯の虫さんを退治してくれる所」と、ポジティブな言い方をすると、お子さんも安心して治療に積極的になれると思います。
一人ひとりの状況に寄り添った治療をしたい
患者さんに接する上で、特に気をつけることはありますか?
スタッフにも伝えていますが、一方的に指導や指示をするのではなく、患者さんのお話をしっかりと掘り下げて聞き、考えることを大事にしています。仮に歯科衛生士が歯磨き指導をして、次の来院の際にうまく磨けていない患者さんがいたとしても、同じ指導を繰り返すのではなく、どうしてできないのかをまず考えるということを意識しています。冬場は洗面所が寒くて膝が痛み、立っているのがつらいのかもしれませんし、障害やご病気で細い歯ブラシをうまく握ることができないのかもしれません。事情がわかれば、患者さんが歯磨きしやすい別の方法を提案することもできます。できない理由や背景を丁寧に聞き出すことが、お口の状態の改善につながると考えています。
患者さんがご自身でメンテナンスしやすい状態にすることを第一に考えているのですね。
はい。もちろんお手伝いはしますが、自分の体は最後は自分で守ることしかできません。ご高齢の方に限らず若い方でも育児が大変だったり、お仕事が忙しかったりで歯磨きなどのお口のケアがおっくうに感じる方もいるでしょう。私も子育てしながら仕事をしていますから、気持ちはよくわかります。でも、歯磨きしないという選択肢はありませんので、その人にとって頑張れる環境をつくれるようサポートしていきたいと考えています。例えば、お子さんを寝かしつける時に一緒に寝てしまってお口のケアができないのであれば、後で目が覚めた時やお風呂で湯舟に浸かっているタイミングなどでも構いません。具体的な方法は診療時にご相談に乗ることもできますので、どうかご自分のお口を大事にしていただきたいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
口は自分の体に物が入る最初の入り口です。お口の中をきれいにすることは、自分の健康のために一番にすべきことだと思います。歯科医院に怖いイメージをお持ちの方も多いですが、当院は気持ち良く診療を受けていただけるように取り組んでいます。今痛みがなくても、かかりつけ歯科を持って定期的に検診に通っていただきたいですね。今年の保険改正で高齢者や小児のお口の機能に着目することを重要視されるようになりました。当院でも高齢者の口腔機能低下に対する訓練、小児の口腔機能の発達不全による訓練を実施しております。高齢者は誤嚥性肺炎の予防、小児は顎骨の成長や歯並びに大きく影響していくことです。歯科医院では歯だけでなくお口に関わるあらゆることに対応できるようになっています。今後は、歯科のデジタル化も進んでいきます。時代に流れに遅れることないような体制を整えていきますのでお気軽にご相談ください。