井戸西 規雄 院長の独自取材記事
井戸西歯科医院
(奈良市/西ノ京駅)
最終更新日:2021/10/20

風致地区に指定された奈良市内の西ノ京・六条エリア。閑静な住宅街の一角に「井戸西歯科医院」はある。1983年に同院を開業したのは、ユーモアたっぷりの語り口が魅力の井戸西規雄院長。勤務医時代から変わらない歯科医としてのポリシーは、一つの治療方法に固執することなく幅広く対応することで、義歯やブリッジの治療、虫歯治療、歯周病治療、小児歯科、予防歯科とオールマイティーに取り組んでいる。「患者さんが望む治療を、患者さんに満足いただけるように全力で取り組んでいます」と語る井戸西院長。これまでの道のりや、診療スタンス、休日のリフレッシュ方法などざっくばらんに語ってもらった。
(取材日2021年8月2日)
先進治療の技術を学び、1983年開業
先生が歯科医師になられたきっかけからお聞きします。

僕の母が内科医で、親戚も医師が多い家系だったんです。だから僕も医師になろうと思ったんですが、途中、政治家に憧れていた時期もありました。結局、下積みが長くたいへんな覚悟がいると聞かされ諦めましたが、高校生になると将来のことをそろそろ決めなくてはならず、どうしたら家族を養っていけるかなと真剣に考えた時、やはり医師がいいかなと思ったんです。幼い頃から母や親戚が勤める病院によく遊びに行ったりしていましたから、抵抗はありませんでした。医科でなく歯科を選んだのも「うちにはまだ歯科医師がいないからどう?」と勧められ、その話がとんとん拍子で進んでいった感じです。とはいえ、大学在学中までは、まだ医師のほうが良かったかなという迷いも正直ありました。「歯科医師になって良かった」と確信したのは、卒業後、開業歯科医院に勤め始めてからでしたね。
勤務時代にどんな経験を積まれてそう思うようになったのですか?
大学を出て入ったのが、京都の西京区にある「河野歯科」でした。今から40年前のことですね。院長を務めておられた河野正気郎先生は、当時すでにインプラント治療に取り組んでおられて、東京でも勉強会の講師を務めるようなインプラント治療の専門家だったんです。当時まだ一般のクリニックでインプラント治療を行っている所は少なかったので、患者さんが大勢来られていました。中には舞鶴から京都市内にホテルを取って、泊まりがけで受診される方もいたくらいです。この河野院長に僕は歯科の“いろは”を仕込んでもらいました。歯科医師としての自覚が芽生え、仕事が楽しくなったのはこの勤務医時代があったからです。河野院長は僕にとってまさに父親のような存在。進むべき道を示してくれた院長には今も感謝しています。
京都の歯科医院を経て、開業されたんですね。

最初は河野院長のお膝元である京都で開業するつもりで、場所を探していたのですが、もともと僕の出身は奈良の大和郡山市で、奈良にいる母からちょうど良い物件があると紹介されまして。見に行ってみたら、僕が中学校の時に自転車通学で毎日通っていた町だったんです。だから土地勘があったし、町そのものの落ち着いた雰囲気が気に入って、ここで開業を決めました。1983年のことです。
豊富な選択肢を提示し、患者のニーズに全力で応える
歯科医として貫かれていることはありますか?

勤務医時代から40年にわたりインプラント治療に関する研鑽を続けています。その頃はまだ、歯科の中でも専門色が強すぎる分野でしたから、インプラントを扱っている歯科クリニックは少なかったんです。しかし僕は河野院長のもとで院長の治療を見て学び、自分でも経験を積んできましたから抵抗感はありませんでした。だからと言って、自分が開業したクリニックはインプラント専門にしようとは考えませんでした。患者さんにさまざまな治療の選択肢を提示することで患者さんのニーズに応えること。こちらを重視しています。開業当初からずっと変わらずこの姿勢を貫き続けています。
それはどうしてですか?
町の開業医というのは、患者さんのニーズに幅広く応えられるようにしておくべきだと考えているからです。だから開業後2年間、月に1度東京で開かれる補綴、歯周病、小児歯科の勉強会に参加していろいろな分野で研鑽を続けました。あと、難しい親知らずの抜歯も対応していましたね。大学病院の歯科口腔外科に紹介することもできますが、大学病院は通院にかかる時間や待ち時間も含めると一日仕事。なので、どんな症状でもまずは一通り診られるスキルを備え、できる限り当院で対応する「来る患者さんは拒まず」の精神で診療してきました。「この設備がないから治療できない」ではなく、設備がないなら、その中で何とかしようと考える。僕の息子も今大阪で歯科医師をしていますが、今の若い世代とは考え方もかなり違うのだろうなと思います。
現在、力を入れている治療は何ですか?

何かの治療に特別力を入れているということはなく、来た患者さんに応じて、患者さんが希望する治療を提供しているので、こちらが選ぶということはあまりないんです。来てくださった患者さんに診療のメニューを広げて、そこで患者さんに選択してもらい、入れ歯がいいという人には入れ歯を、ブリッジにしてほしい人はブリッジを提供します。もちろん診療の最終的な責任は歯科医師にあるわけですから、プロとして必要なアドバイスはしますし、選択肢も複数ご用意しますが、選択権は患者さんにあります。僕は患者さんが選んだ診療に沿うように、誠心誠意、全力で努力して100%に近いかたちで提供する、それだけです。
一生懸命取り組むべきは「治療」よりもまず「予防」
歯の健康のために先生ご自身がなさっていることは?

大事なのはやはり基本的なことで、ブラッシングと定期検診です。ただ、こんなこと言うと意外に思われるかもしれませんが、僕も歯科の先生に診てもらいたいと思うときがあって、僕と同じように困っている歯科の先生は結構多いかもしれません。だって僕が休診日の時は、周りの歯科医院さんもだいたいお休みでしょう? 診てもらいたくても診てもらえない。この場合どうしたらいいんでしょう(笑)。幸い僕の場合は、息子が歯科医師になってくれましたから、今までメンテナンスが疎かになっていた分しっかり診てもらうつもりですが、それまではひたすらブラッシングに励むのみです。
今は患者さんも予防意識が高くなったのでは?
定期検診に来られる人は増えました。ご自分で自己管理できる人はやはりお口の状態も良いですよ。歯槽膿漏という症状は人類である以上誰もが持つ症状ですが、重要なのはその度合いで、軽い症状の人がいれば、抜歯するしかない人もいます。そこで歯科衛生士によるクリーニング、ブラッシング指導を行うことによってコントロール可能だと考えます。一方虫歯の場合は、歯茎より上の部分であれば補修できますが、根っこまで侵されると治療は難しく、治すことに一生懸命になればなるほど削る部分を広げてしまい、クラック(ひび)のリスクが増します。つまり治療することで歯に負荷をかけてることに。だから皆さんには、治療しなくても済むようまずは予防に努めてほしいです。
ところで、休日はどのように過ごしていますか?

釣りですね。若い時から釣りが趣味で、川釣りから海釣りまでなんでもやります。川はアユ、海だとイシダイ、グレ、イカ。長崎県の五島列島から3時間ほど南西に行った男女群島には年に1回行っています。瀬渡し船で島まで行き、礒場で釣る磯釣りです。昔は船で片道5~6時間かかりましたが、高速船の登場で2時間半~3時間ほどで行けるように。民宿も店もお風呂もない無人島で、仲間と2〜3日滞在し、日中は釣り、夜は焼肉などを食べながら酒盛り。これが楽しいんですよ。よく食べ、よく飲み、よく寝て、よく遊ぶ。これが僕のリフレッシュ法であり健康維持の秘訣です(笑)。
最後に、先生が診療で大切にしていることをお聞かせください。
一番良いのは、毎日初心に戻ることなのでしょうが、それはなかなか難しいので、せめて流されないように大事なところは押さえています。例えば、患者さんの話をよく聞いて差し上げること。あと、歯科医師の目線と患者さん目線は違うことを理解し相手の立場になって考えることです。患者さんが何を悩んでいるのか、どんな治療を望んでいるのかをつかむために、しっかり話を聞き、その上で一人ひとりに親身な対応を心がけるようにしています。どの仕事もそうですが、やはり最後に問われるのは人間性ではないでしょうか。