佐武 正朗 院長の独自取材記事
M’s Dental
(和歌山市/和歌山市駅)
最終更新日:2021/10/12
南海本線の和歌山市駅から車で4分ほど。「M’s Dental(エムズデンタル)」は2020年4月の院長交代に伴い、院名と施設を一新した。「スタッフの中で自分が一番年下で新人」と笑うのは、新院長の佐武正朗先生。歯科医師である父を尊敬し、自身も医療人として「地域の人たちの健康を保ち、幸せにしたい」との熱い想いを持つ。診療では患者のデータを蓄積して分析し、原因を明らかにして根本からの解決をめざしている。予防歯科に注力し、「継続して通ってくださることが何よりうれしい」と語る佐武先生に、歯科医療や患者への想いを聞いた。
(取材日2021年6月23日)
口の中に違和感を感じる前に、定期的な検診を
初診の流れを教えてください。
最初は問診票をもとにお話しを聞いて掘り下げることと、データ収集をします。痛みなどで緊急の処置が必要な場合を除いて、初診ですぐに治療に入ることはありません。お口の中を見せてもらったり、検査をしたりして患者さんの違和感の原因を明らかにした上で、その方がどのような治療を求めているのかを聞き取り、治療計画を組み立てます。皆さんに知っておいてほしいのですが、症状があるのは、すでに進行した状態です。些細な違和感でもご近所のかかりつけの歯科医院に早めに行くことをお勧めしますし、できれば違和感を感じる前に定期検診を受けてください。定期的な管理をしている上で状態が悪くなったのであれば、すぐに対処ができるはずです。
定期検診を受けることが大切なのですね。
はい。例えば成人の7~8割が罹患しているともいわれる歯周病は、治療をしても歯周病菌がいなくなるわけではないので、悪化しないように定期的にメンテナンスすることが大切です。当院の予防歯科では、歯周病が進みやすい、虫歯になりやすいなど、個々の患者さんに合わせた予防プランを作成します。虫歯の場合、原因は歯磨き不足と食生活が考えられるため、その方の病態や年齢などに応じた歯磨き方法や食生活を指導しています。しっかり歯磨きをしているのに虫歯になる人は、砂糖を摂取する頻度が多いのかもしれません。虫歯菌は糖分をエサに酸を出して歯を溶かしてしまいます。ジュースやスポーツ飲料には砂糖がたくさん含まれるので、就寝前後の水分補給はお水やお茶などの糖分を含まないものにしましょう。初期の虫歯であれば、削らなくても管理だけで済む場合もありますよ。
歯周病はどのような病気ですか?
歯周病は、歯周病菌が歯を支えている骨を溶かす病気です。骨が溶けると歯茎が下がり、歯が揺れてきて最終的に歯を失ってしまいます。ゆっくりと悪くなるので気がつかない間に進行して、40~50代で抜歯しなければいけない人も。また全身の病気とも関連があり、糖尿病と歯周病はお互いに悪化させ合うことがわかっています。他には脳梗塞や心筋梗塞など、血管を詰まらせる病気との関係も深く、妊婦さんだと早産、低体重児出産のリスクにつながりやすいともいわれています。お口は消化器官の入り口で、最初の内臓。そこに菌がたくさんいるのは、体に良くない状況です。歯周病菌のエサはプラークですから、日常の歯磨きはとても大事。また噛みしめなどの力も関係するので、その方に合った歯ブラシ選びから磨き方、生活習慣をアドバイスしています。
患者にうそや隠し事はせず、正直に向き合う
診療で注力していることを教えてください。
写真や記録をしっかり残すようにしています。口腔内カメラ、マイクロスコープ、それから姿勢を撮影できるカメラなどがあり、ミクロの世界から全身まで撮影できます。姿勢を撮影するのは、噛み合わせとの関係が深いと考えているため。診療中に何かおかしいと感じたら患者さんの了承を得た上でデータを採り、その時は瞬時に判断することは難しくても、必ず原因を追究します。原因を除去しなければ、一時的に良くなってもまた再発してしまいますからね。原因がわかって、当院で対処できることであればそのまま治療しますし、必要に応じて口腔外科などにご紹介して、根本から解決することをめざします。
患者さんとはどのようにコミュニケーションをとっていますか?
自分の考えや、調べてわかったことは全部お伝えするようにしています。私が思う理想的な治療についてもお話ししますが、無理強いはせず、患者さんのご希望に沿った治療を計画していきます。ただし医療としておかしいと思ったときは、はっきりと「それはできません」とお伝えしますね。また歯科治療は患者さんご自身では見えないので、何の治療をされているのかわからないという人も。当院では治療の前後や過程を写真に撮影して、患者さんにお見せしながら説明しています。痛くないのに虫歯はあるのかと疑問視される方もいますが、虫歯を染色液で染めて、治療の前後の比較写真をお見せすると納得しやすいと思います。データをしっかりと集めて開示することが、私なりのコミュニケーションになっています。
子どもの患者さんと接する際に心がけていることはありますか?
当院の小児歯科は、基本的に母子分離です。保護者の方と一緒だとできないお子さんが、一人になると意外と頑張れるもの。子どもたちは大人が思っている以上に賢く、いろいろと状況を理解しています。特に雰囲気や感覚を察する力は大人よりも敏感だと思いますので、うそやごまかしは効きません。例えば麻酔で「痛くないよ」と言うのは痛みがあるからで、そこは正直に「ちょっとチクっとするよ」「少ししみるよ」と教えます。理解できる年頃のお子さんなら、一人で乗り越えていきますよ。最初にうそをつくと、子どもたちはずっと疑います。彼らは大人より経験がないだけで、私たちも初めての治療は怖いですよね。一人の人間として扱い、きちんとコミュニケーションを取って「ここならまた来てもいいかな」と思ってもらえるような雰囲気づくりを大切にしています。
医療人として、地域医療に貢献をしていきたい
先生はなぜ歯科医師を志したのですか?
歯科医師で前院長の父の存在が大きいです。子どもの頃は歯科医院に行くのも、治療も嫌いで、血を見るのも怖かったので歯科医師という仕事に興味はありませんでした。けれど父が患者さんにきちんと説明して、健康に導いている姿を見ているうちに「これは世の中に必要な職業だ」と尊敬するように。歯学部卒業後はいくつかの歯科医院に勤務しましたが、それぞれの先生に個性があり、多くの影響を受けました。先生によってめざすもの、生き方、考え方などが異なるのですが、共通していたのは勉強と経験を重ね、日々反省して次につなげていく姿勢です。患者さんやクリニック、地域医療を良くするために努力されていて、私も働けなくなるその日まで同じように続けていかなければと肝に銘じています。それが医療人としての使命ではないかと思うのです。
どんな時にやりがいを感じますか?
患者さんが治療完了後も継続してメンテナンスに来てくださると、とてもうれしくなります。治療期間中の患者さんは、痛みなどがあって「来ないといけないから来ている」状態。お仕事や生活がある中、治療後も意識して定期的に通うのは大変なことで、私がその立場だったら続けられないかもしれません。もちろん、「痛くなくなった」「きれいになった」と喜んでくださることもうれしいものですが、その後も良い状態をキープするために通い続けてくれると感慨深いものがあります。歯磨きに意欲がなかった人が、メンテナンスに通い、意識してきちんと磨けるようになる。これは些細に見えてとても大きなこと。地域の方が健康を保つための力になっていきたいと考えています。
今後の展望をお聞かせください。
当院では患者さんの健康と幸せを第一に考える医療をめざしています。それはスタッフとも共有する思いであり、いつもサポートしてくれる皆には感謝しかありません。この患者さん第一主義の精神は父から教わったもの。父は最近まで体が不自由な方の診療をしていたのですが、常に一生懸命患者さんのためにできることをしていて、あの年齢になってもブレることなく患者さんを真摯に想う気持ちを持ち続ける姿に、同じ歯科医師として尊敬の念を抱きました。技術や知識は努力で手に入りますが、気持ちはそうはいきません。医療人としての根本の考えは決して曲げないことを自分に言い聞かせ、その上で技術や知識を身につけて患者さんの選択肢を増やし、幸せになるお手伝いができればと思っています。