山本 一人 院長、山本 大介 副院長の独自取材記事
山本歯科医院
(笠岡市/笠岡駅)
最終更新日:2025/06/02

笠岡駅から徒歩約15分の閑静な住宅地にある「山本歯科医院」。1984年に院長の山本一人(かずひと)先生が開業した同院は、約40年にわたり地域住民の歯の健康を支えてきた。2024年には岡山大学大学院で歯周病治療の研鑽を積み、同大学の関連病院で11年ほど高齢者医療に携わっていた、息子の山本大介副院長が診療に加わった。一人院長は幅広い診療にも対応してきたベテランの歯科医師。長年の経験で培った知見と技術を生かし、義歯や補綴の治療において難しい症例であっても対応する。一方、大介副院長は歯周病治療を得意とし、笠岡市の高齢化が進む中、「なかなか来院できない方のために訪問診療に力を入れていきたい」と話す。そんな2人に、これまで経緯から今後の展望まで幅広く話を聞いた。
(取材日2025年4月7日)
笑顔で食事を楽しみ、健やかに生きられるようサポート
こちらのクリニックは一人先生が開業されたのでしょうか。

【一人院長】そうです。1984年4月に私が開業しました。当時、この辺りには歯科医院が少なかったんです。私は北木島という笠岡諸島の島の出身で、笠岡高校に通っていました。高校を卒業後は神奈川歯科大学に進学。大学卒業後は横須賀市と横浜市の歯科医院に計2年勤務し、笠岡市に帰ってきました。そして笠岡市の歯科医院に2年間勤務する間に開業したいとの思いが募り、こちらの土地を笠岡市に融通してもらい購入したんです。
【大介副院長】私は2024年10月から当院に勤務しています。埼玉県の大学を卒業後、岡山県に帰ってきて岡山大学大学院に入り、歯周病の研究をしていました。大学院卒業後は岡山大学の関連病院に勤務し、11年ほど高齢者医療に携わっていたんです。その間、将来的には実家を継がずに勤務医として高齢者医療をやっていきたいという思いが芽生えてきていましたが、考え直して、実家に戻ることを決めました。
こちらのクリニックの診療方針を教えてください。
【大介副院長】私は当院を継ぐタイミングで「笑顔で食事を楽しめて、健やかな人生を歩んでいただくお手伝いしたい」という気持ちを理念にしたいと考えているんです。「痛みなく、よく噛める」状態をサポートしたいなと。大学院で歯周病について学んでいた関係もあって、年を重ねた状態でもしっかり噛んで食べられるという状態を維持していくことの大切さを、歯周病予防のケアを続けていくことで、若い世代に伝えていきたいと思っています。また、高齢者医療に携わり、食形態を含め摂食嚥下について学んできたことを当院の診療に生かしたいですね。今はそれらのことをめざして診療を行っています。
来院されるのはどのような患者さんが多いですか。

【一人院長】今は高齢の方が多いですね。開業した当初は笠岡市の人口が現在の倍近くで、さまざまな世代の方が住まれていました。当院の患者さんも、お子さんから高齢者まで年齢層の幅が広かったです。開業した40年近く前は歯科医院が不足していたこともあって、一日に60人から70人の患者さんが来院されていたんです。80人近くに応じた日もありました。朝8時に診療を始めて、夜の8時30分から9時に終えるという毎日でした。20年くらい前でも4、50人の方が来院されていました。それが時代とともに笠岡市は高齢の方が多い街になりましたね。
なかなか来院できない患者のため、訪問診療を
診療の際に心がけていることを教えてください。

【一人院長】患者さんからどういったことを求められているのかを知るために、主訴を引き出すことを心がけています。
【大介副院長】患者さんは来院された時点で緊張していると思うので、それをほぐすために3~5分、雑談を交えながら主訴を聞くなど話をするようにしています。患者さんがどのような方かというのも知りたいですし。そして緊張がほぐれてきたなというところで椅子を倒して、診療を始めています。
お二人が力を入れられている治療は何ですか。
【一人院長】私は若い頃から幅広く治療をやってきました。でもあえて挙げるなら、この年だと外科的な治療よりも、入れ歯とか補綴ということになるでしょうか。患者さんが1日に何十人も来院されていた頃は、どんな主訴にも対応していましたね。
【大介副院長】高齢者医療に長年携わってきたので、訪問診療のニーズに対応していきたいですね。院長から、長年お越しになっていない患者さんがいると聞いていますので。また笠岡市は高齢化が進んでいるため、間違いなく歯科医院に行きたいけど行けないという方がいらっしゃるはずなんです。そういった方たちを歯科衛生士と車で訪問し、当院と同様の治療をさせていただきたいと思い、必要な設備を準備しました。
大介先生は歯周病の治療にも注力されているのですね。

【大介副院長】歯が痛い、入れ歯が合わないといった主訴の患者さんのお口の中を拝見すると、歯周病が進んでいることがあるんです。そういった場合は歯周病の状態や、今後どういうことが起こるのかを説明した上で、歯周病の治療をしませんか、とお尋ねしています。治療は歯石を取ったり、歯周病の進行を早める不正な噛み合わせの調整をしたりということになるのですが、どうされるかはご本人の意志を尊重しています。歯周病は、歯磨きがちゃんとできていないことが大きな原因の一つであるため、セルフケアの大切さも伝えていきたいと思っているんです。
歯で困ることのない人を増やせる歯科医院でありたい
歯科医師をめざした理由をお聞かせください。

【一人院長】本当は工学系、電子工学系の道に進みたかったんです。ロケットを飛ばすとか、車を作るとか。それが「歯科の業界の景気が良い」と父から勧められて歯科大学に進学しました。でも工学系が好きだから、大学を卒業して歯科医師をしながらも、2人の子どもに工学系の話ばかりしていたんです。
【大介副院長】私も工学系、電子工学系の道に進みたいという気持ちがありました。でも国家資格を得て手に職をつけたいというのと、人のためになることが好きなほうだったので、歯科医師をめざしたんです。
お互い、こういうところがすごいなと思う点はありますか。
【一人院長】まずは若さと、それによるパワー。そして、新しい知識をいっぱい蓄えているところでしょうか。思ったよりも勉強しているなと妻と感心しているんですよ。新しいことを教えてもらうことが多くて。義歯など経験が物をいうところは、まだまだ私がやっていかないといけないとは思っていますが。
【大介副院長】大学病院では準備、診療、片づけ、カルテ打ちと全部歯科医師がやりますし、患者さんお一人に1時間を取るというスタンスが基本ですが、院長の場合そこをそつなくこなし、難症例も2~30分で対応できるところがすごいなと思います。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。

【一人院長】今はもう副院長主体でやってもらえるようにしています。本当は今年の夏、70歳になったら身を引いて譲ろうと思っていたのですが、もう少し待ってほしいと言われたので、しばらくは頑張ります。
【大介副院長】歯で困ることのない人を増やしていきたいです。歯周病の予防から関わり、当院まで通えない方は訪問診療する。そんな、患者さんの人生における歯科治療をフルカバーさせていただけるような歯科医院にしていきたいですね。また、虫歯になって歯を削ると、どんどん悪くなるという流れになってしまいやすいです。歯を削る、詰め物をする、そこがまた虫歯になって神経を取る。そしてかぶせ物をして、そのうち根っこが割れて抜歯する。そういったことを未然に防ぎたいので、無症状でも歯が痛くなる前に歯科検診にお越しください。