田中 亮三 理事長の独自取材記事
旭橋歯科クリニック
(広島市西区/福島町駅)
最終更新日:2022/01/19

広島市を流れる太田川に沿った南観音地区。「旭橋歯科クリニック」は国道2号線から少し入った、ビルの2階にある。開業は1987年。田中亮三理事長は「35年くらいやっていると、当初来ていた患者さんがお子さん、お孫さんを連れてきてくださり、世代をまたいでお付き合いができるようになります」と話す。地域に住む人たちの頼れるかかりつけ歯科医院として、虫歯や歯周病の治療や歯に関する悩みのほか、口内炎や睡眠時無呼吸症候群の相談も受ける。時代とともに変わっていく患者の希望にできるだけ添いたいとの思いから、田中理事長は新しい知識や技術を学び続け、フィールドを広げてきたという。そんな田中理事長に、診療に対する心構えや大事にしていることについて聞いた。
(取材日2021年11月18日)
地元で開業。患者との長い付き合いを大切に
開業までの道のりを教えてください。

大学は千葉県だったので、関東で修業してから広島に帰ろうと思っていたんですけど、父にできるだけ早く広島に戻って開業してはどうかと話を持ちかけられたんです。それで卒業後すぐに広島に帰り、広島大学歯学部の保存修復科で研修を受けました。そこには2年間在籍し、最後の半年は島根の隠岐の島にある隠岐病院に出向しました。隠岐の島は日本海の隠岐諸島の島の一つで、冬は寒さが厳しいそうなんですが、私が勤務したのは夏で、海もきれいでとてもいいところという印象でしたね。その後、広島市の歯科医院に勤務した後、1987年に開業しました。
開業に、この場所を選ばれた理由は何ですか?
もともと祖父の代がこの地に小さな農地を持っていて農業をしていたんです。父の時代ではもう農業はやっていなかったんですが、所有していた土地を有効活用するために歯科医院が入った複合ビルを造ろうという話になり、それで私が呼び戻されたのです。開業当時のこの辺りは、自動車メーカーの販売会社が集まっていて、そこに勤めている人が多く住んでいました。しかし近隣には歯科医院も少なく、立地的にも条件が良かったので、この場所に開業することにしました。その後、会社のいくつかは移転し、そういった会社に勤めていた方々は分散していったものの、古くからの戸建ての家もまだ結構残っていて、昔から通ってくださっている高齢の患者さんが多いですね。その方たちがお子さんやお孫さん、知り合いの方などを連れて来られ、ご縁が広がっています。
そもそも先生が歯科医師になったきっかけは何だったのでしょう。

小さい頃はプラモデルを作るのが好きでしたが、中学の時にはアマチュア無線に夢中になったんですね。海外とつながって情報交換できるのが当時とても魅力に感じ、船乗りになって船の通信室で通信したりできるといいなと思ったんです。しかし、よく考えると私は金槌で泳げないし、船酔いもするので、船乗りになる夢は諦めました。ちょうどその頃、母親がこのエリアにあった歯科医院が人気だという話から、手を動かすのが好きなら、歯科医師はどうかと勧めてきたんです。手を動かすことは嫌いではないし、ほかに大きな目標がなかったので、やってみようかと思ったのが始まりです。だから、半分は母親の勧めですね。
患者の希望を引き出すことを心がける
治療において、心がけていることはなんですか?

まず、患者さんの希望されていることは何なのかを引き出すことを第一に考えています。治療法というのは1つじゃないと思うんですよ。一応、自分の頭の中には一番いい治療はこれかなというのはあるんですけど、患者さんには「これが駄目ならこういう方法があるよ、それも駄目だった場合、次はこういう方法が……」という具合に、3つほど治療法の選択肢を提案したいと思っています。例えば、歯がぐらぐらになっている場合、普通であればすぐ抜歯をすると思いますが、当院ではすぐには抜かずに、ひとまず接着剤でとめて1ヵ月の猶予期間を設け、その間に抜歯をするのかしないのか、もし抜歯をした場合は、それを補う手段として入れ歯がいいか、ブリッジがいいか、インプラントがいいかまで患者さんにじっくり考えていただくのです。1ヵ月後もやはり抜きたいと思ったら、その時は抜歯しましょうとお伝えしています。
できるだけ歯を保存する考えなんですね。
そうですね。歯が折れた際、歯が根元から4分の1ぐらいしか残ってなかったら通常は抜いて入れ歯にするんですけど、実は根っこを残したまま入れ歯を入れることもできるんです。入れ歯は着脱式なので、本当に抜く必要が起きたときに入れ歯を外して抜けばいいんですね。ただ、ブリッジの場合はそうはいかないんです。「ブリッジにするんだったら、抜いてからになりますよ。入れ歯にするんだったら、歯の根っこを残したまま入れ歯を入れておいて、邪魔になったら抜くということも可能です。インプラントにする場合は、歯を抜いて半年から1年たってから治療開始になります」と、それぞれの選択肢について説明し、患者さん自身にどれが自分にとって一番いい方法かを考えてもらうようにしています。
虫歯以外の相談も増えていると聞きました。

そうですね。虫歯や歯周病が原因じゃない歯のトラブルや相談というのは、最近すごく多いですね。例えば、噛みしめからきている場合や、歯ぎしり、日中の食いしばりから起こっている場合、あと、今よくいわれている睡眠時無呼吸症候群の患者さんも内科の先生から紹介を受けるので、歯ぎしりや歯の食いしばりから歯を守るためのマウスピース型器具などを作製します。そのほか、口臭の相談を受けたり、レーザーの機械を使って口内炎の治療もしたりもします。昔はなかった病気も含めて、とにかく幅広くいろんなことに取り組んでいます。
長く通える居心地の良い歯科医院をめざす
院内環境でこだわっていることはありますか?

新型コロナウイルスが流行する前から、空間除菌にすごく興味があったので、院内に業務用の低濃度のオゾンの発生装置を置いて衛生管理を徹底しています。このほか、各チェアの横にも業務用の空気清浄機を設置しています。これはなぜかというと、治療で削るときに粉が結構飛び散るんですが、その時ににおいも拡散するので、それを避けるためです。空気がよどんでいる状態で治療したくないですから、常に空気が流れている状態にしておきたかったんです。チェア横には口腔外バキュームも置いていますから、粉やにおいはほとんど漂わなくなったと思います。
長いキャリアをお持ちですが、新しい治療や技術の習得にもチャレンジされてきたそうですね。
どんなに長く経験を積んでも、新しい治療法は取り入れていく必要があると思っています。例えばインプラント治療は、今でこそ大学のカリキュラムにも入っていますが、私の学生時代は、まだインプラント治療が一般的に知られておらず、大学でもまったく習っていないんです。卒業後2年ぐらいたってインプラント治療が登場し始めたので、専門の先生のところへ勉強に行き、それからほとんど独学のようなかたちで経験を積んできました。一方で、取り組んでみたものの習得が難しかったものもあります。矯正は歯科の中でもまったく別分野で、これに関しては矯正専門の歯科医院で取り組んだほうがいいと感じました。同じように特殊な外科手術がいる口腔がんなども、連携する大学病院に紹介するようにしています。
今後の展望を聞かせてください。

開業して35年近くもたつと、開業当初から来ていた患者さんが、自分のお子さんやお孫さんを連れてきてというふうに、世代をまたいでのお付き合いになります。年月を重ねながらお互いの間には信頼関係ができ、治療をする側としてもやりやすいですね。というのも、お付き合いの長い患者さんだと、患者さんのお口の傾向はもちろん過去に自分で行った治療の経過がわかるからです。そうした長年の積み重ねがデータとなり、良い治療に結びついていくのだと思います。その分責任を感じることもありますが、こういった関係性は一朝一夕では築けないので、すごく大事だと思います。その場限りではなく、ずっと患者さんに寄り添って、口腔内の健康を支えていきたいと考えています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/22万円~、セラミックを用いた治療/8万8000円~