山田 ミチ子 院長の独自取材記事
山田歯科クリニック
(世田谷区/等々力駅)
最終更新日:2024/11/29

世田谷区深沢のバス通りに位置する「山田歯科クリニック」は、歯科医師と患者だけでなく患者同士のコミュニケーションが生まれる場としても、長年地域住民に愛されている歯科医院。26歳の時に玉川田園調布にクリニックを立ち上げ、1987年に現在の場所に移転して同院を開業した山田ミチ子院長は、今では当たり前のように活躍する女性歯科医師の先駆け的な存在だ。「開院当時は右も左もわかりませんでしたが、スタッフに支えられ、患者さんに大きく育てていただきました」と周囲に対する感謝を忘れない山田院長。持ち前の明るさで患者との信頼関係を築き、私生活では母親として2人の子どもを育て上げた。常に前向きな山田院長に、開院当初のエピソードや普段の診療に関することまで幅広く話を聞いた。
(取材日2019年10月2日)
長年地域に愛されるアットホームさが魅力の歯科医院
開院から40年と伺っています。

1977年に鶴見大学を卒業し、勤務医を経て1979年に玉川田園調布でクリニックを開業しました。あの頃はまだ26歳。女一人での開業だったので、少しでも安心できる場所をと探したのが玉川田園調布でした。すでに婚約していた夫は、隣の多摩川駅で開業していましたので、一人で開業したとはいえ、近くに心の支えがいたことは心強かったですね。当時はとても助けられました。私は埼玉県の秩父出身ですから、見知らぬ土地での開業ということで、右も左もわからず迷うことが多かったのですが、その分、とにかく自分のできる範囲で誠心誠意やらせていただきました。週3回夜間診療をしていた時期もありましたね。おかげさまで、田園調布時代の患者さんが今でも来てくださっています。
診療室に飾られているお花がとてもきれいですね。
ありがとうございます。抜歯など痛いことも多い歯科医院は、緊張感や恐怖心を持って来る方が多いですから、ユニットの前に生花を飾れば、少しでも和めるのではと思い長く続けています。「今度はどんなお花かなと楽しみにしているんですよ」とおっしゃる方もいて、患者さんの癒やしになっているのかもしれませんね。華やかにしようか、季節感を出そうかなど、あれこれ考えて月に3回くらい花を買いに行き、生けたお花はスタッフがお水を取り替えるなどお世話をしてくれています。
女性ならではの視点ですね。診療で生かされていることもあるのでは?

小さなお子さんがいらしても、問題なく対応ができるところでしょうか。当院では治療中は女性スタッフが、歯科衛生士がスケーリングしている時は私が、子どものお世話をしますので、お子さんはウェルカムですよ。私にも2人の息子がいるのですが、これまでの自分の子育て経験がそういったところで生きているのかなと思います。息子たちがまだ幼い頃、私が仕事をしている間は診療室で遊んだりすることが多かったのですが、通い続けてくれている患者さんたちは皆さんそういった環境を理解してくださり、本を読んだり一緒に遊んだりしてくださったこともありました。今改めて振り返ると、本当に患者さんたちに感謝ですね。昔からこういったアットホームな雰囲気があるのが、当院の良さでもあるかと思います。
口腔の健康にとって大切な話を繰り返し発信していく
患者さんの層や診療体制について教えてください。

幼稚園の年少くらいから90代の高齢者まで、いろんな方がいらっしゃいます。最近は近隣にマンションが建ったためか若い住人の方が増え、お子さんも少しずつ多くなりました。玉川田園調布で開業していた頃も含めると40年以上がたちますが、ずっと通ってくださっている患者さんも多いんですよ。幼児だった患者さんが大人になったのを見て、自分が年を取ったことに気づかされます(笑)。私が歯科医師になったときは研修医制度がなく、幅広く診ることを求められていたので、虫歯や歯の根っこの治療、補綴、ホワイトニング、入れ歯などできる限り自分で診ていますが、インプラント治療などの口腔外科は息子の山田秀典先生が月に一度診療し、女性の竹下恵先生が隔週で補綴を担当してくださっています。
先生が診療で大事にしていることを教えてください。
開院当初から変わらず心がけているのは、インフォームドコンセントに比重を置くことです。患者さんのお話によく耳を傾け、治療についてしっかりとお話しをし、納得していただいた上で歯科治療を進められるように努めてきました。お互いが気持ち良く治療にあたれるよう、患者さんとの関係は大切に考えています。そのせいか、当院の場合は診療中に「笑い」が多いですね。少しでも和やかな雰囲気のほうが、患者さんもリラックスできるのではないかと思っているので、治療とまったく関係ない話もよくします。おしゃべりは頭に残りますから、次に来院されたときに話題が広がるし、話しているうちに患者さんの緊張感もほぐれていくのではないでしょうか。スタッフも長年勤めている人が多いので、患者さんと私の架け橋になってクリニックを盛り上げてくれています。スタッフのおかげで当院はあるようなものだと思いますね。
最近、気になる患者さんの傾向はありますか?

昔は歯が痛いと言って来院される方が多かったのですが、最近はメンテナンスの方が増えていますね。いつも思うのは、テレビの力は凄いなということです。テレビで「メンテナンスに行ったほうがいいですよ」という話をすると、翌日には患者さんがお見えになって「テレビで言っていたから来ました」って報告してくれることもあります。「前から私もそう言っているじゃない」と返すと、「え?」って(笑)。伝えていることは同じですが、テレビだと視覚的効果もあって一度で記憶に残るのかもしれませんね。歯間ブラシのコマーシャルなども役立っていると思いますよ。患者さんのお口の健康を守るために大切なことは、私からも繰り返し発信していこうと思います。
「ありがとう」の言葉が最高のモチベーション
先生が歯科医師をめざしたのはなぜですか?

手に職をつけたいと思っていた時、親戚が勧めてくれたのがこの仕事でした。当時の鶴見大学は女子大学だったので、比較的入りやすいかなと思い(笑)、2期生として入学しました。歯科に対してとりわけ動機があったわけではなく、昔は特に歯科治療は痛いという印象しかなかったので、むしろ歯科医院は嫌いでしたね。だから、やりがいを見出したのは歯科医師になってからのことです。卒業後、できたばかりの昭和大学歯学部の医局員を経て、南武線平間駅にあるクリニックの開設者を任されました。卒後2年目の子に任せるなんて無謀ですよね(笑)。でも、責任を感じました。患者さんから、喜びの声をいただけるようになった時は、本当にうれしかったんです。「ありがとうございます」と仰っていただけるのは、今でも最高のモチベーションになっています。
印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
開業前のことですが、たった一度だけ、「女性の歯科医師には診てほしくない」と患者さんから言われたことがありました。当時はまだ女性歯科医師が少なかったため、抵抗感を持たれる方も少なくはなかったのかもしれませんね。その時は、歯科医師としては「そうなんですね」と言うしかなく、来ていただいたからには治療するしかありませんでしたので、対応はさせてもらったんです。確か、虫歯の治療だったと思います。でもその後、数回の治療を経た最終日、患者さんが「すみませんでした」と言ってくださって。その言葉を聞いた時は驚いたと同時に、うれしさがこみ上げました。実際に治療を受けて、男女に差がないということをわかってくださったのではないでしょうか。
最後に今後の展望をお願いします。

患者さん一人ひとりがお口の中の正しい知識と好ましい生活習慣を身につけていただき、全身に調和した形で何でもおいしく食べられ、見た目も美しい歯の環境で、豊かな人生を送っていただきたい。そういうQOLのお手伝いを誠心誠意させていただければと考えております。今は、一日一日の診療を大事にしていきたいですね。年齢を重ねてくると体力的に不安になりますが、70歳になっても変わらず診療に励んでいるので、やはり働いているほうが楽しいですね。おばあちゃんになってもここにいて、患者さんとは茶飲み友達というのもいいかもしれません(笑)。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/35万円~、ホワイトニング/3万円~