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志村 俊一 院長の独自取材記事

志村デンタルクリニック

(札幌市中央区/バスセンター前駅)

最終更新日:2021/10/12

志村俊一院長 志村デンタルクリニック main

札幌市営地下鉄東西線のバスセンター前駅から徒歩5分。「志村デンタルクリニック」は札幌市内でも長い歴史のあるクリニックとして、地域からの信頼も厚い。3代目院長の志村俊一先生は先代、先々代に尊敬の念を抱きながら、患者と対等な目線に立って関係を築いている。歯科医師、スタッフ合わせて20人ほどが在籍する大所帯だが、開店休業状態の10年を乗り越えて、スタッフや患者とともに成長してきた。患者の中には初代である祖父の頃からの患者もおり、「初代や2代目の歯科医師としての仕事や姿勢を聞くと感慨深いです」と志村先生。クリニックの歩みやスタッフとの関係などをざっくばらんに語ってもらった。

(取材日2021年7月20日)

札幌の地で80年続く歯科クリニック

歴史のあるクリニックだそうですね。

志村俊一院長 志村デンタルクリニック1

当院は1932年に母方の祖父が「石井歯科医院」として開院した札幌でも古い歯科医院です。祖父、伯父、そして私と3代にわたって当地で診療を続け、私の代になって「志村デンタルクリニック」としてリニューアルしました。今でこそこの辺りは街中ですが、祖父が開院した当時は札幌市の外れで何もなくて、私が生まれた頃も似たようなもの。昔は一軒家ばかりで、2代目の時代にはドーナツ化減少で郊外に人口が流出し、苦労したと聞いています。私が後を継いだ頃にマンションが建ち始め、かつての住民が戻ってきたり、若い家族が住み始めたりして、人口がどんどん増えていきました。更地ばかりだったのが、これほどマンションが立ち並ぶようになるとは思いもよりませんでした。

患者層に特色はありますか?

メインはだいたい40~60代の患者さんですが、祖父の代からの90歳の患者さんも。昔と比べると今は患者さんの健康意識が高くなり、痛みがなくても定期検診やメンテナンスで通う方が多くなりました。中には4世代で通ってくれているご家族もいます。祖父の代からの患者さんは皆さん高齢になり、通院が難しくなって往診にも対応しています。祖父や伯父のことを聞くことができるとうれしいですね。私が保育園に入る前は、歯科衛生士の母に連れられて診療所の中で面倒を見てもらっていたので「あの時の坊やが先生かい」といろいろなエピソードを教えてくれます。2人ともどの患者さんでも平等に接する歯科医師だったと皆さんが評価してくださることを誇りに思います。

代々引き継いでいる精神はありますか?

志村俊一院長 志村デンタルクリニック2

祖父は私が中学生の時に亡くなり、後を継いだ叔父も私が高校生の時に脳梗塞で突然倒れて、母の強い希望で高校生の私が急きょ後を継ぐことになったので、私が戻るまでの10年間は開店休業状態。ですから2人の歯科医師としての現役時代を私はほとんど知りません。けれども3代続けて東京歯科大学で学び、同校の「歯科医師である前に人であれ」という教えは2人も胸に刻んでいるはず。これは患者さんに上から目線で接するのではなくて、患者さんの生活背景にも目を向け、その方にとって何が最善の治療法か、寄り添って考えていくということ。昔からの患者さんから2人がどんな歯科医師だったか教えてもらうことが多いのですが、客観的な立場から良い評価を聞くと、感慨深いです。

できる限り削らず、歯を温存していく治療

診療の基本方針を教えてください。

志村俊一院長 志村デンタルクリニック3

当院ではなるべく患者さん自身の歯を残すことを基本方針としています。私が歯学部を卒業した頃は、最先端の治療法としてインプラント治療が脚光を浴びた時期でした。私も若かったのでそれに惹かれたこともありましたが、自分の歯に勝るものはありません。大学卒業後は札幌医科大学の口腔外科に勤務していましたが、インプラントを埋入するために抜かなくてもいい歯まで抜いてほしいと紹介が来るようになり、「歯科医師は歯を守ることが仕事なのに、方向性が違うのでは」と疑問を持ちました。歯は患者さんの財産であり、残すために最大限の努力をするのが歯科医師の仕事。そこで北欧型歯科医療「スカンジナビアンアプローチ」を日本のエキスパートである弘岡秀明先生に学び、当院のリニューアルとともに導入し予防・メンテナンスに注力しています。

歯を残すために他に取り組んでいることは?

なるべく削らない治療を大切にしています。祖父の時代は削る機械が今のようにはなくて、削らずに銀歯をかぶせてセメントで接着するような不格好な方法が一般的だったのですが、これが意外と歯が残ることが見込めたそうなんです。それにならって、現代の材料や道具を使ってエビデンスのある極力削らない治療を行っています。歯は失うと二度と戻りません。失う原因の多くは歯周病や虫歯ですが、正しい歯磨きをしていれば歯は残していけると思います。抜くのはあくまで最後の手段。重要なのは毎日の歯磨きで患者さんがご自身で守っていくことです。子どもの頃、多くの人がお母さんから歯磨きを教わったと思いますが、お母さんは歯を失っていますか? もしそうなら歯磨きは上手ではないということかもしれません。歯科衛生士は患者さんと向き合い、適した磨き方を教えてくれます。きちんと磨けていないと、再発しやすいのでとても重要な存在です。

スタッフとの連携についてお聞かせください。

志村俊一院長 志村デンタルクリニック4

20人ほどいるスタッフは、全員家族のような存在。ミーティングもしますし、みんなでゴルフもして仲は良いです。お互いに信頼し、積極的にさまざまな治療に挑戦してもらっています。勉強会の後はアウトプットするために人に説明してもらうことも。1日の3分の1の時間をともに働いているので、人生の糧にし、楽しんでほしいです。開院したての頃は「自分があと3人いればどれほど効率が良いか」と思ったものですが、今では反対。自分が3人もいたら院内は滅茶苦茶でしょう。人にはそれぞれ得意・不得意があります。私が苦手な部分を得意なスタッフがカバーしてくれれば、私は得意なことに専念できます。1足す1から2以上の価値が生まれるわけですから、みんなの長所を伸ばすように心がけています。

スタッフとともに患者の歯を守りたい

院長就任当初は苦労されたのではないですか?

志村俊一院長 志村デンタルクリニック5

私は母方の孫で後を継ごうとは思っていなかったので、葛藤はありました。けれど受験の時、今まで進路に口出ししなかった父に「今なぜ自分がこういう環境にいるのか考えてみろ」と言われたんです。父は教師だったので「僕は学校の先生の子どもでしょ」としかその時は思わなかったのですが、祖父の歯科医院と私たちの家が昔はつながっていて、毎晩祖父たちと一緒に晩ご飯を食べ、お世話になっていたからこその言葉だったのでしょう。後を継いだ当初は設備も古くて、患者さんもごく少数でした。私にできることは患者さんとの対話だけでしたが、その中で祖父や伯父の仕事をたくさん聞かせてもらい、徐々に患者さんも増えて、経営が軌道に乗りリフォームすることができました。私が戻るまでの10年、苦労したのは母。患者さんが帰ってきてくれるかもわからないのに看板を守り続け、大変だったと思います。

休日の過ごし方を教えてください。

大学生の時にバスケットボール部に入っていて、50歳になる今も続けています。30歳でアキレス腱を切って、そこからゴルフも始めました。でも一番はやはりバスケ。チームスポーツが好きなんです。今から上手になろうとは思っていませんが楽しみたいし、でも試合には勝ちたい。勝ちを優先すると楽しくやりたい人が来れなくなってしまうし、負けるのは楽しくないので、すり合わせをして目標を掲げています。組織づくりと似ているんです。今は新型コロナウイルス感染症流行のさなかで制限はありますが、バスケやゴルフ、ときどき野球、ジムにも通って楽しくストレスを発散しています。

今後の展望をお聞かせください。

志村俊一院長 志村デンタルクリニック6

健康だと思っていても検査で悪いところが見つかるように、お口の健康も時々客観的にチェックしてください。平均寿命が延びていく中、ご自分の歯が残っている人はしっかり噛めて、健康寿命も長い傾向にあります。歯科医院は痛くなってから来る場所ではなく、定期検診のために来る場所に変わろうとしています。歯科衛生士は定期検診でのブラッシング指導、それに歯周病ケアも行えます。当院の歯科衛生士は担当制ですから、責任を持って患者さんのメンテナンスを行い、継続して患者さんのお口の中の変化を見ています。患者さんを大切にすることとスタッフを大切にすることはイコールです。北欧では歯科衛生士はクリニックを持てるほど地位があるといわれますが、日本でも彼女たちの地位を上げていきたいですね。

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