梅村 百代 院長、梅村 宜弘 先生の独自取材記事
漢一診療所
(横浜市青葉区/青葉台駅)
最終更新日:2025/12/09
青葉台駅から車で約10分。もえぎ野交差点近くに「漢一診療所」はある。1987年の開院以来、中医学をベースに西洋医学を取り入れたフレキシブルな診療を実施。内科や小児科、耳鼻咽喉科、眼科まで幅広く応じ、東西の垣根にとらわれない多角的な視点で患者の不調と向き合っている。梅村百代院長は45年前に台湾から留学生として渡日した後、病院で研鑽を積み、ここ青葉区で35年以上診療を続けてきたベテラン医師だ。そんな百代院長と夫である梅村宜弘先生に、同院の診療方針や、新設した眼科での診療などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2015年6月19日/情報更新日2025年8月25日)
「医療」を柱に、東洋・西洋を統合させた診療を追求
患者層と、中医学の診療方法について教えてください。

【宜弘先生】当院は20代後半から50代後半の方がメインで、膠原病や喘息、アトピー性皮膚炎などの免疫の病気、また胃腸のトラブルで来院されるケースが多いですね。あと、更年期障害や自律神経失調症のご相談で来られる方もいらっしゃいます。中医学についてご説明する前に、まず人の体について簡単にお話ししましょう。当然のことですが、人体の五体、五臓六腑ともに、すべて密接なつながりがあります。つまり、病気は局所的であっても、全身のどこかしらに影響を与えるものなのです。例えば、手足の冷えは内臓の不調から生じることもあります。そういった本当の原因を特定するために、多角的に病変を診るのが、中医学の診察なんです。「望診」「聞診」「問診」「切診」といった種類があり、通称「四診」と呼ばれています。
「四診」によって全身の状態を確認していくのですね。
【宜弘先生】そうですね。「望診」はいわゆる視診のことで、患者さんの顔や舌の色などを診ます。特に顔面部や舌質は内臓の状態と密接に関係するといわれています。「聞診」は聴診。声色や話し方の特徴、息の状態から病状を鑑別するものです。「問診」はご存じのとおり、病気への影響が伺える生活習慣や嗜好品などの情報を収集する方法です。また、先天性を疑い、親族の方にも行う場合もあります。最後の「切診」は、患者さんの所定部位に触れたり、押したりして症状を知る方法で、触診のことですね。対処法に関しては、食事管理だったり漢方の処方だったりと、症状の度合いによって異なります。また、漢方は一度の服用で済む場合もありますが、予後を診ながら継続して処方する場合もあります。
診療のこだわりは何ですか?

【百代院長】「医療」に重きを置き、枠にとらわれないということかもしれません。東西の医学はあくまで選択肢。患者さんにとって最良の治療に努めるのがこだわりです。そのために実践しているのは、中医学と西洋医学の統合。ここには症状が改善せず長年悩まれている方も多く来られますが、そういったお悩みに対して東西の医学的見地から診療にあたっています。ですので、時には中医学の診断結果を西洋医学の見地から診ていくことも。当院では、血液検査やエコー検査を導入し、昭和医科大学藤が丘病院とも提携して精密検査も可能です。中医学の歴史と先端技術による盤石な医療体制を整えています。
白内障や緑内障の難症例を含む、幅広い眼科疾患に対応
2022年に眼科を新設されたそうですね。

【百代院長】これまで私と夫の宜弘先生、娘の梅村方裕先生で診療してきましたが、日本専門医機構認定眼科専門医の黄士恭先生が加わり、眼科を担当してくれることになりました。黄先生は白内障や緑内障の手術とともに網膜硝子体手術にも精通しており、当院で日帰り手術を行うことも可能です。また、白内障や緑内障の難症例に対する手術実績も豊富で、白内障が長い間進行し、水晶体が硬く変化しているような難しい症例でもここで手術を行うことができます。そのほか、緑内障・白内障・網膜のレーザー治療、硝子体への抗VEGF薬注射、涙点プラグにも対応可能です。当院では内科も診るので、例えば目の中に炎症を引き起こすぶどう膜炎などに対して、連携を取りながら漢方でのアプローチを検討することも可能ですよ。
眼科にはどのような患者さんが来られますか?
【宜弘先生】お若い方からご高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが来られます。お若い方は近視や乱視、結膜炎などのご相談が中心ですね。一方、ご高齢の方は白内障や緑内障、目の奥の黄斑が変化して起こる加齢黄斑変性などによる視力の低下についてご相談に来られることが多く、手術が必要となるケースも少なくありません。もし検査の段階で重篤な病気が発見されれば、昭和医科大学藤が丘病院と緊密に連携し、必要に応じて迅速にご紹介をすることもできます。例えば、難病といわれる網膜色素変性症に関しては、網膜の機能を調べるための網膜電位検査が必要になるので、すぐに大学病院におつなぎし、検査後こちらに戻って来られたら、難病医療費助成の申請についてサポートをする、といったフォローも可能です。
眼科の診療を行う上で、心がけていることはありますか?

【百代院長】当院では、お一人お一人の患者さんをじっくり丁寧に診察できるよう完全予約制を敷いており、検査から診察まで一貫して黄先生が対応しています。これにより、検査中の会話の内容や、視力を測定する際の微細な顔の向きなど検査中でしかわからない状況も加味した上で診察を行うことができるのです。ただ、完全予約制とはしているものの、「すぐに診てほしい」といった緊急のご要望や、予約なしでのご来院をお断りしているわけではありませんので、どうか遠慮せずご相談ください。必要に応じて即日の処置を行うことも可能ですので。例えば、この地域ですと、庭の手入れをする際に木くずが目に入ってしまって自分では取れずに困っていらっしゃる方も多いようです。そのままにしておくと感染症の恐れがありますから、早めに取り除く必要があります。そうした日常の目にまつわる困り事にも丁寧に対応しますので、ぜひお電話ください。
眼科の検査においても工夫されていることはありますか?
【百代院長】眼科の検査を行う際は、通常、正確な測定のために顎を検査機器の上に乗せて顔の動きを固定しますよね。ですが、小さなお子さんですとうまく顎を乗せることが難しいケースがあるんです。ですので、手持ちの顕微鏡や眼圧計、眼底鏡などをそろえて、どんな方でも適切な検査が行えるよう配慮しました。また、患者さんをできるだけお待たせしないよう注意しています。検査が始まるまで待ち、検査が終わった後さらに待つ、といった状況は患者さんにとって心身ともに負担になりますからね。ほかにも、当院はバリアフリー設計で車いすでの移動もスムーズに行えますので、施設に入られている方や車いすで生活をされている方も検査が受けやすいのではないでしょうか。
「免疫力を高め、病気に負けない体づくり」が大切
中医学について、読者に伝えたいことはありますか?

【宜弘先生】中医学や漢方は、何か特殊な医療と感じる方もいるでしょう。しかし、日本では東洋医学として根づき、すでに歴史があるものです。また、生姜やヨモギ、シソなど日常的に食べている食材や、身近に生えているたんぽぽやドクダミなどの植物も漢方薬として使用されています。西洋医学とどちらが優位というものではないですが、漢方が適している症状もありますので、選択肢の一つとしてぜひ目を向けてみてください。
院長が医師をめざしたきっかけを教えてください。
【百代院長】親戚に医師が多かったことでしょうか。風邪など、何か病気をすると連れて行ってもらい、そこで聴診器などの医療器具に興味を覚えたんです。まだ物心がつき始めた頃の話ですが、それが最初のきっかけだったと思います。中医学に関心を持ったのは、学生の時のこと。慢性的な病気を抱えていた家族に手術が必要になったのですが、昔はリスクが大きく躊躇していたんです。何か別の方法をと頼りにしたのが漢方でした。それが、本当に家族に合っていたんです。その時の強い印象から、医師をめざそうと決意したときにはすでに西洋医学と中医学の両方を学ぶと決めていました。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

【百代院長】病気に焦点を当てた話が多くなりましたが、全身のバランスを整えることをめざす中医学で何より重要なのは「免疫力を高め、病気に負けない体づくり」です。それには、生活習慣の改善も欠かせません。患者さんに生涯にわたって豊かな生活を送っていただけるよう、「自律した健康づくり」をサポートしたいですね。また、原因不明の不調が続くなどの心配事がある方も、お気軽にご相談ください。

