岡本 浩一 院長の独自取材記事
フィールファインクリニック
(川崎市麻生区/新百合ヶ丘駅)
最終更新日:2026/07/07
新百合ヶ丘駅から徒歩5分。大型駐車場を完備した医療ビルの5階にある「フィールファインクリニック」は、地域に根差した精神科・心療内科クリニックとして20年にわたり診療を続けてきた。仕事や子育て、人間関係などの悩みから生じる心の不調に寄り添う同院には、近隣住民を中心に幅広い世代の患者が訪れる。院内にはカウンセリングルームを備え、医師をはじめとする多職種が連携しながら一人ひとりをサポート。さらに、岡本浩一院長は、病気発症後の治療だけでなく、病気を未然に防ぐ「未病」の重要性にも着目し、栄養や生活習慣を含めた啓発活動にも力を注いでいる。地域のメンタルヘルスを支えることへの想いや今後の展望について、岡本院長に話を聞いた。
(取材日2026年6月9日)
自身の経験をきっかけに地域に寄り添う医療を届ける
開業から20年を迎えられました。地域との関わりはいかがでしょうか?

当院は2026年に開業20周年を迎えました。開業当初はこの地域とのつながりはなかったのですが、幸いにも地域の皆さんに受け入れていただき、今では患者さんの約7割が近隣から通われています。市民講座をはじめとする、行政や地域団体などが関わる取り組みを担当させていただく機会もあり、少しずつ地域のメンタルヘルスに貢献できている実感がありますね。
どのような患者さんが多く来院されていますか?
年齢層は高校生から80代までと幅広いのですが、最も多いのは30〜40代の働き盛り、子育て世代の方々です。その次に10〜20代の若い世代が続きます。ご相談内容としては、仕事や子育て、人間関係などのストレスを背景とした適応障害が最も多く、全体の6割ほどを占めています。そのほか、うつ病やパニック症、双極性障害、統合失調症などの診療も行っています。また、近年は大人の発達障害に関する相談が非常に増えています。インターネットなどで情報を得やすくなり、ご自身やご家族が特性に気づいて受診されるケースも珍しくありません。心の不調を抱える方が増えていることを日々実感しています。
精神科医を志したきっかけと、開業への思いを教えてください。

医師は人から感謝される素晴らしい仕事だと、父から聞かされていたので、医師という仕事に非常に良い印象を持っていました。全世界共通の知識や技術を身につけたいという思いもきっかけになっています。精神科の道を選んだのは、心を診ることで体のすべてを診ることができるのではないかと思ったからです。体を診る診療科は、臓器別にさまざまな診療科に細分化されているにもかかわらず、心を診る診療科は細分化されていません。細分化されていないからこそ、人間全体を診ることができる、一対一の人間同士の関わりが持てるのではないかという点に強い魅力を感じました。また、私自身が小学校、中学校にわたり、陰湿ないじめを受けた経験があります。いじめの体験による心の痛みを知っている自分だからこそ、役に立てることもあるでしょうし、いじめに限らず心が悲鳴を上げ苦しんでいる方たちに、希望を与える手助けをしたいという思いがありました。
多職種連携で安心して相談できる居場所を
クリニックの診療体制について教えてください。

現在は8人の医師が在籍し、曜日ごとに複数の医師で診療にあたっています。スタッフ間の連携においては、情報を電子カルテで共有しているため、どの職種が関わっても継続的な支援ができるよう努めています。また当院では、診察とカウンセリングの両面からサポートできる体制を整えています。初診では医師の診察を希望される方もいれば、まずはカウンセリングから始めたいという方もいらっしゃいますからね。必要に応じて認知行動療法などにつなげることもできます。加えて、オンラインでのカウンセリングも行っており、さまざまな状況にある患者さんが相談しやすい環境を整えています。
診療で特に大切にしていることは何でしょうか?
一番大切にしているのは、患者さんに安心感と安全感を持っていただけるよう努めることです。精神的につらい状態で受診される方は、不安や緊張を抱えていることが少なくありません。だからこそ、診察を通して二次的に傷つくことがないよう、言葉の選び方や説明の仕方には特に気を配っています。診断や治療方針については、なぜその治療を行うのかをできるだけ丁寧にお伝えするようにしています。精神科では、説明不足や何げない一言が新たな不安につながってしまうこともありますからね。また、患者さんによって必要な関わり方は異なります。明るく背中を押すことが適している方もいれば、静かに話を聞いてほしい方もいるでしょう。その方の性格や状態に合わせて、距離感や声のトーンを調整することも大切な診療の一部だと思っています。
長く通院される患者さんの変化はどのように見守っているのですか?

長く関わっていると、診察室に入る前から状態の変化が伝わってくることがあります。待合室での表情や姿勢、歩き方、呼びかけた時の反応など、そうした小さな変化から調子の良し悪しが感じ取れることも少なくありません。もちろん患者さんご自身が教えてくださることも多いですね。また、診療を続ける中で発達障害や依存症など、それまで見えていなかった背景がわかってくることもあります。当院では心理検査や幼少期からのエピソードの聞き取りを丁寧に行い、その方を総合的に理解することを大切にしています。
ご家族で受診されるケースも多いそうですね。
当院の特徴の一つだと思います。親子やご夫婦、ご家族全員で通われているケースも珍しくありません。家族皆さんに信頼していただけるのはありがたいですね。基本的にはそれぞれ個別に診察を行いますが、中高生の患者さんの場合は保護者の方と一緒にお話しすることもあります。また、夫婦関係のお悩みが背景にある場合には、ご夫婦でのカウンセリングにつなげることも行っています。患者さん一人だけを見るのではなく、その方のこれまでの歩みや生活環境、ご家族との関わりなども含めて理解することが大切だと考えています。実際に発達障害や双極性障害などでは遺伝的な要因が関与すると考えられているものもあり、ご家族の受診をきっかけに相談へつながるケースもあります。そうした背景も含めて丁寧にお話を伺いながら、一人ひとりに合った支援を心がけています。
「未病」から支える新しいメンタルヘルスケア
近年注目されている「未病」について、先生の考えをお聞かせください。

私は以前から、病気になってから治療するだけでなく、その手前で防ぐことが大切だと考えてきました。精神疾患は再発率も決して低くなく、薬だけですべてを解決できるわけではありません。そのため当院では薬物療法や心理療法に加え、栄養指導などにも取り組んでいます。睡眠、運動、食事といった生活習慣は心の健康と深く関わっていますし、再発予防の観点からも重要です。調理が難しい患者さんにはサプリメントの活用を提案することもあります。心と体は切り離せるものではありません。だからこそ、病気になる前の段階から心身を整えることが、これからの精神医療には欠かせないと考えています。
今後どのようなクリニックをめざしていきたいですか?
これからは既存の精神医療の枠にとらわれず、未病の分野も含めてさまざまな挑戦を続けていきたいですね。患者さんだけでなく、ご家族や治療を終えた方にも役立つ情報や支援を届けていきたいと思っています。地域紙へのコラム連載などを通じて、一般の方にもメンタルヘルスについて発信しています。受診が必要な状態になる前に、自分自身の心の変化に気づいていただきたいという思いがあるからです。また、医師として学び続けることも大切にしています。講演会や勉強会に参加し、新しい知見を診療へ還元することに大きなやりがいを感じています。学んだことが患者さんの回復につながる瞬間を見ることができるのは、この仕事の大きな魅力です。
読者へのメッセージをお願いします。

一般的には2週間以上不調が続く場合が受診の目安とされていますが、それ以前でも不安を感じたら気軽に相談していただきたいです。特に私は、病気と診断される手前のグレーゾーンの方々の受け皿になりたいと考えています。診察だけでなくカウンセリングという選択肢もありますので、受診するほどではないかもしれないと迷っている段階でもぜひ足を運んでください。一人で抱え込まず、早めに相談することが心身の健康を守る第一歩になると思います。

