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松谷 克彦 院長の独自取材記事

ファミリーメンタルクリニックまつたに

(世田谷区/用賀駅)

最終更新日:2024/09/10

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに main

用賀駅北口から徒歩約1分の場所に立つビルの5階に「ファミリーメンタルクリニックまつたに」がある。ぬくもりを感じさせるアットホームな雰囲気が印象的な同院。松谷克彦院長は、開業前には基幹病院の思春期病棟で、精神的にさまざまな困難を抱えた青年と20年以上にわたって向き合ってきた児童・思春期精神科医療のスペシャリスト。同院でも、一人ひとりの気質や親子関係などの背景も踏まえながら子どもの心と向き合い、問題解決のためのサポートを行っている。「起きたことの意味もじっくり考えることが、とても大事なのではないかと思います」と優しい笑顔と穏やかな口調で話す松谷院長に、同院について詳しく話を聞いた。

(取材日2024年7月25日)

子どもの気持ちを理解し、共感することを目標に

診療スタンスを教えてください。

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに1

お子さんの場合、まずは行動を診るのか、情緒を診るのかがあります。学校に行かない、かんしゃくを起こすなど、身体に症状が出てしまう行動面の問題で受診する人が多く、親御さんは、それらの行動が修正されることを希望しています。しかし、治療は矯正教育ではありませんから、行動そのものを修正するというよりは、その背景にどのような情緒があるのかを考えます。子どもは、意味もなくそれらの行動をするのではなく、その奥には何かしらの気持ちがあります。それは、例えば怒りや不安、寂しさであって、そういう気持ちをうまく伝えられなくて、結果的に問題となる行動になってしまっているのです。ですから、その行動の背景にある気持ちを理解する。そして、親御さんとともに、その気持ちを共感的に受け止めることが、目標になります。

具体的には、どのようなことをするのですか?

まず私が子どもさんや親御さんと対話をして、子どもさんの今の思いやこれまで抱えてきた思いを振り返ります。その中で子どもさんが自分の気持ちに気づき表現して、親御さんもその思いを共感的に受け止めてくだされば、症状や問題行動を起こさずに済むはずなんです。しかし、子どもさんがこれまでの大人との関係で自分の気持ちを出すのが難しい場合は、心理療法を行います。心理療法では臨床心理士が対話や遊びを通じて子どもの心に注目していきます。その中で子どもは徐々に自分の気持ちに気づき、それを表現するようになります。一方で、親御さんが子どもの気持ちに寄り添いたいけど寄り添えないケースもあります。親御さん自身が自分の親との関係でわかってもらえた体験が乏しいと、親子での共感が親御さんにとっても未経験となるわけです。そのような場合には、親御さんのカウンセリングをするときもあります。これらが、当院の基本的な診療スタイルです。

どのような訴えが多いのでしょうか?

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに2

一番多いのは不登校のお子さんですね。理由は人ぞれぞれで、クラスが非常に荒れているために学校へ行けないこともあれば、集団内での過度な緊張のために行けなくなる子もいます。家庭にすごく心配なことがあって、自分が家を離れている間に何かとんでもないことが起きるのではないかと思うと、おちおち家を空けていられないという子もいます。現象としては、学校に行けないということですけど、家族との関係性など、その背景を含めて考える必要があります。

行動を責めるのではなく、理由を想像することが大切

不登校の場合、どのように対処するのですか?

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに3

まず、子どもが学校に行けないから診てほしいというときに、親御さんが子どもをどうやってここに連れてきたら良いのかということがあります。親御さんからは、1つ目に、あなたのことが心配であると言ってもらうこと。そしてもう1つ、必ず伝えてくださいと話しているのは、実際にそういうケースが多いのですが、親も変わる必要があると思っていること。子どもだけが問題なのではなくて、親も変わる必要があると思うから、どう変わるべきか医師のアドバイスを受けたい。そのためには、あなたが一緒に行ってくれないと、医師も適切なアドバイスができないだろうと。家族全体が変わるために行くから、あなたも一緒に行こうと伝えてくださいと話しています。そうすれば、お子さんの負担感も少なくできます。そして医師は、子どもが学校に行きづらい理由をうまく言うことができて、それを親御さんがうまく受け止められるようにサポートしていくのです。

診療の際に心がけていることを教えてください。

何かができないときには、できないなりの理由がある。例えば、お母さんに子どもに優しくしてあげてくださいと話しても、できない。お母さん駄目じゃないですか。もっと優しくしてあげてくださいと言うのは簡単ですが、そうしたくてもできないんです。お母さん自身が優しくされてこなかったから、自分自身が誰かに支えられていないから、など、何らかの背景があってできないわけです。子どもも同じで、怒って物を投げてはいけないことぐらいはわかっている。そうするしかない理由があるんです。ですから、なぜそれができないのかを患者さんに問うのではなくて、自分に問うこと、想像することを大切にしています。

先生が想像するのですか?

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに4

はい。それには理由があります。まず、その時の「なぜ」という問いには、ちょっとした叱責が含まれています。あなたはなぜ、片づけができないのですか。なぜ、夜ふかしばかりするのですかって。それは、別に理由を聞いているのではなくて、叱責していますよね。しかし、本人だってわからないのだから、叱責しても意味がありません。そして、自らに問うというのは、なぜそうなんだろうと想像すること。その子が生きてきたプロセスや今の関係の中で、この子はこうせざるを得ないんだろうなという想像力を、どれだけ働かせられるか。そこが大切だと考えています。それは、世の中全体も一緒で、この人はなぜこんなことをしてしまうんだろうと想像する力って、大事なのではないかと思いますね。

起こったことの意味も考えてほしい

想像するのって大切なんですね。

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに5

コミュニティーを支えるのは、目的や価値の共有ということがあるかもしれません。もう一つの考え方として、コミュニティーの構成員の中で、お互いの気持ちを想像し合って共感し合うこと。この想像と共感が成立すれば、かなりのコミュニティーがうまくいくのではないかと思います。そこで大事なのが対話です。対話を通じて、相手の気持ちを想像する。そして、共感できるということが、おそらくコミュニティーの中に人がいられる条件だろうし、そのことによってコミュニティーは少しずつ円滑にいく。ちょっとユートピア的な考え方ですけどね(笑)。でも、みんな余裕がないと感じます。結局、共感や想像は、こちらに心の余裕がないとできませんから。みんな自分のことで精いっぱい。そういう意味では、お父さんもお母さんも、いっぱいいっぱいなのかもしれませんね。

話は変わりますが、クリニックの開業には先生の奥さまも強く関わったそうですね。

妻は心理士で、研究会で出会いました。当時、大学を出て医師になってから2年目ぐらいだったと思います。家族と治療していくという家族療法に当時は力を入れていました。その時の、家族療法の研究会で出会ったんです。そういう意味でも、良き理解者であり、良きパートナーでした。実は、クリニックの開業も妻が勧めてくれましたし、コンセプトからデザインまでアイデアを出してくれました。ですから、このクリニックでは妻がプロデューサーで、僕は現場監督という感じで、それが今まで続いていますね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

松谷克彦院長 ファミリーメンタルクリニックまつたに6

大人から見て、子どもが何らかの行動面の問題や症状を出したとき、それはおそらくSOSのサインです。今までの自分の生き方や価値観、集団の中のスタンスでは立ち行かなくなったということを伝えているのだと思います。そして、もしかしたら、それはお子さんだけではなくて、家族全体を含めたサインなのかもしれません。そういうことは早く良くなってほしいですけど、早く良くすることよりも、今ここで起きたことの意味を考える。少し立ち止まって、お子さんとの接し方やご自身のことも考える。それが結果的に早道だったりしますし、家族の中での相互の理解や、親御さんやお子さんも、自分への理解、自分を知ることにつながってくると思います。なるべく早く良くなってほしいものではありますけど、今ここで起こったことの意味をじっくり考えることが、とても大事なのではないかと思います。

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