福田 匡志 先生の独自取材記事
柏五味歯科内科リウマチクリニック
(柏市/柏駅)
最終更新日:2025/10/29
柏駅東口からバスで15分の「柏五味歯科内科リウマチクリニック」は、歯科と内科の両面から患者の全身を診る全人的医療に取り組んでいる。「この人が何で困っているかということを考えて本質的な治療がしたい」という福田匡志先生は、虎ノ門病院で内科全般を学んだゼネラリスト。同院では内科を担当し、中年女性の更年期症状や関節痛、全身の不定愁訴など、どこの科に行けば良いかわからない患者の悩みにも寄り添う。妻である福田涼子院長が担当する歯科と連携し、骨粗しょう症や睡眠時無呼吸症候群などのスムーズな治療をめざす。地域密着でありながら専門性の高い医療提供をめざす同院の取り組みについて、匡志先生に詳しく聞いた。
(取材日2025年10月8日)
医科歯科連携で全身診療を実践
歯科医院に内科を併設した経緯を教えてください。

医科と歯科がどちらもあると、患者さんにとって便利なことがたくさんあるんです。私の専門である膠原病やリウマチの治療では、ステロイドや免疫抑制剤を使うため骨粗しょう症になりやすく、その予防薬を使う際には必ず歯の状態を確認する必要があります。歯の炎症が残っていると自己免疫疾患もなかなか良くならない。睡眠時無呼吸症候群でも、内科で診断してCPAPの適用にならない場合、歯科でマウスピースを作ることもできます。歯科で肥満や高血圧の患者さんを見つけたら、すぐ内科で無呼吸の検査ができる。私たちはスムーズな連携がしやすく、患者さんは別の医療機関を受診する手間が省けます。たまたま妻が歯科医師で私が内科医だったので、一緒にやったらお互いにメリットがあるし、何より患者さんの利便性が高まると考えて始めました。
なぜ内科、特に膠原病やリウマチをご専門に選ばれたのですか?
医師のイメージが「町の先生ですべてを診られる」というところにあったんです。困った症状があれば何でも相談できる、そんな医師になりたくて内科を選びました。虎ノ門病院で研修医時代を送ったのも、内科を網羅的に学べるプログラムがあったからです。中でも免疫に一番興味を持ちました。免疫は幅が広くて、頭なら神経内科、腸なら消化器内科、膵臓なら1型糖尿病というように、全身に関わってきます。全身の免疫を診たくて、最も網羅的に診られると考え、膠原病内科、自己免疫疾患科を選びました。専門性が必要な分野も勉強しますが、本質的には地域の人を全人的に診たい。不定愁訴もしっかり診たい。だから幅広くレア疾患まで勉強するのが好きなんですよ。
歯科と内科、両科を受診できるのは便利ですね。

初診では歯科か内科のどちらか一方だけを受診される方が多いですが、診療を進める中で、もう一方の科の受診が必要になるケースも少なくありません。例えば、虫歯が進行して上顎洞炎を引き起こす場合、歯科でCT検査を行った後、すぐに内科で治療薬を処方することができるので、別の医療機関に足を運ぶ必要がなく、診療がスムーズに進むのが大きなメリットです。また、金属アレルギーが心配な方にとっても、歯科と内科が連携していることで安心感がある。歯科治療中に異常があった場合でも、すぐに内科医が対応できる体制が整っております。骨粗しょう症についても、症状が出ていない段階から「年齢的に気になるから検査したい」という相談に対応しており、予防的な医療にも力を入れています。こうした連携があることで患者さんの健康をより総合的にサポートできていると実感しています。
診断困難な症例にも全力で向き合う
特に得意とされている分野について教えてください。

膠原病を鑑別する上で更年期やうつ病、内分泌疾患など、さまざまな類似疾患を除外していく必要があるので、そうした全身の不調で困っている方の診療が得意です。特に中年女性の関節痛、ホットフラッシュ、うつ症状、イライラなど、何科に行けば良いかわからない症状ですね。いろんな科を受診しているけれど、疾患が多岐にわたるため迷子になっている、そういう方の現状を整理して、どこが問題かを同定し治療につなげることができます。実際、更年期障害だと思っていたら膠原病だったり、あるいは逆だったりすることもあります。漢方やホルモン療法にも興味があるので、より幅広い選択肢から最適な治療を提案できるようにしたいですね。本当に困っている人を助ける、ということを大事にしています。
どのような時に受診を考えれば良いでしょうか?
朝すっきり目覚めないとか日中眠いという睡眠の問題、失神、脱毛など、こんなことで内科に行って良いのかなと思うような症状でも大丈夫です。発熱を伴う皮膚疾患も、皮膚科じゃなくて内科のことが多いんです。うつ病みたいな気分の落ち込みや、更年期かもしれないという悩みも内科で診られます。あちこちの病院に行ったけれど診断がつかない、どこに行っても「正常」と言われるけれど症状がある、そんな方でも相談に来ていただけたらと思います。大学病院に紹介されるような症例でも、紹介までたどり着けない方が多い。私はそうした“診断がつかないけれど困っている人”を診ることを得意としています。症状の整理と原因の同定を通じて、適切な治療につなげることができます。疾患がわからなくて困っている人は、一度受診していただければと思います。
診療で心がけていることを教えてください。

現状をただ改善するためだけでなく、患者さんの将来まで見据えた人生設計をサポートするための診療を心がけています。診断はレッテルを貼るためではなく、その人の長所や能力を明確にするための仕分け作業だと考えています。できないことを無理やりできるようにするのではなく、得意なところ、良いところを伸ばすためのサポートをしたい。例えば、リウマチの患者さんにB型肝炎が再活性化したら肝臓専門の医師に診てもらう、膠原病の患者さんに肺高血圧が出てきたら循環器内科医に診てもらう。複数の医師で得意なところを生かしながら全人的に診る。そのすべてをクリニック内でできます。医師がどう考えて診断や治療をしているのか、頭の中がわかるような情報発信もしています。患者さんに理解してもらった上で、一緒に治療を進めていきたいと思っています。
親しみやすさと専門性の両立をめざす
それぞれの分野でご専門の先生方がいらっしゃるのですね。

現在は日本内科学会総合内科専門医が週3回、日本リウマチ学会リウマチ専門医が週2回、日本消化器病学会消化器病専門医が週1回診療しています。医療が細分化される中、一人の医師では得意不得意が出てしまいます。でも地域に根づくクリニックとして、遠くまで行かなくても専門的な診療を受けられるようにしたい。理想は全人的なサポートをベースに、専門性も高いクリニック。各曜日にそれぞれ専門医資格を持った医師を配置することで、それを実現しようとしています。町に根づいた地域医療と同時に専門性もある程度高い医療もめざす、良いとこ取りかもしれませんが、それを複数の医師で実現したいんです。各専門家の得意分野を生かしながら、一つのクリニックで完結できる体制をつくっていきたいと考えています。
今後の展望についてお聞かせください。
歯科との連携をさらに強化していきたいですね。金属アレルギー、睡眠時無呼吸症候群、骨粗しょう症など、連携できる領域は本当に幅が広い。専門性も高めていきますが、私の本質はゼネラリストで、地域の人を全人的に診たいんです。専門性も追求しますが、「ちょっとした不調」で困っている人の力にもなりたい。ブログでの情報発信も続けていきます。医師目線からの発信で、どういうふうに医師は考えて、どういうことをやっているのか共有したい。「採血やエックス線検査をすれば病気がすぐにわかるわけではなく、医師はこんなふうに考えているんだよ」ということが伝わるようなブログをめざしています。
読者へメッセージをお願いします。

全身の不調で困っている人は、ぜひ一度受診をお勧めします。膠原病を中心に更年期障害、うつ病、内分泌疾患、診断に至らないけど困っている方の相談に乗ることができます。関節が痛い、ホットフラッシュがある、うつ傾向だ、イライラする、これは何科に行けば良いんだろうという時、一緒に考え、可能な限り原因を見極めて治療できたらと思っています。もちろん普通の発熱などの一般内科の方も大歓迎です。歯科との連携もありますので、疾患が何かわからなくて困っている人、症状はあるのにどこに行っても何ともないと言われる人は、諦めずに相談に来てください。できるだけ適切な環境に持っていく共同作業を一緒にしていきましょう。

