柳 裕一郎 理事長の独自取材記事
やなぎ耳鼻咽喉科クリニック
(横浜市青葉区/あざみ野駅)
最終更新日:2024/08/16

東急田園都市線あざみ野駅前にある「やなぎ耳鼻咽喉科クリニック」は、2007年の開業以来、地域に根差してきた耳鼻咽喉科医院。10年近くの大学病院勤務を経て開業した柳裕一郎理事長が、赤ちゃんから大人まで地域のかかりつけ医として、幅広い症状に対応している。柳理事長は日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医と日本東洋医学会漢方専門医の資格も持ち、多様な治療の選択肢を持つことで、患者が通い慣れた場所で治療を完結できるよう尽力している。地域医療への思いを聞くと、「多くの方に長く愛されるクリニックであるため、変わり続けていきたい」とにこやかに答えてくれた柳理事長。気さくで朗らかな人柄の柳理事長に、同院の特徴や診療にかける思いを聞いた。
(取材日2024年5月28日)
多彩な耳鼻咽喉科診療を効率化。バリアフリーもめざす
フロアを拡張されると伺いました。

2階にあり、階段でアクセスしていただく必要がある当院では、以前からバリアフリーアクセスが課題でした。実際、高齢の方や足の悪い方に「なんとかならないか」とご要望をいただいたこともあります。近くで移転も考えていたのですが、なかなか良い物件を見つけられないでいました。そこで、増床許可を得て下階にフロアを拡張、2階へのアクセスが難しい方の診療スペースとすることにしました。検査機器などは2階に設置してあるので、すべての診療をこちらでというわけにはいきませんが、通常の処置程度であればこちらで完結できるように整えるつもりです。新型コロナウイルス感染症は落ち着いてきましたが、今後どのような未知の感染症が流行するかは誰にもわかりません。そうした際に必要となる隔離スペースとしての可能性も検討しています。まだ未定ですが、今夏の稼働をめざして鋭意準備中です。
直近ではどのような患者さんが来院していらっしゃいますか。
鼻水・鼻詰まりの風邪症状からアレルギー性鼻炎、花粉症、喉の違和感、副鼻腔炎、めまい、耳鳴りなど、耳鼻咽喉科を受診される患者さんの症状は多岐にわたります。甲状腺疾患が疑われる首の腫れを訴える方もいます。新型コロナウイルス感染症の流行を経て、小児の感染症での受診が大幅に増えたことはやや気がかりですね。新型コロナウイルス感染症の数は少なくなりましたが、現在でも毎日のようにいらっしゃいます。当院では時間と院内動線を分けて院内感染の防止につなげながら発熱者の診療を行っています。最近、流行時に受診された方が別の症状で来られて、「受診先が見つからない中助かった」などと感謝の言葉をいただくこともあります。感謝されるためにやっているわけではありませんが、スタッフともども疲弊しながら頑張ってきたので、そのひと言に救われた気持ちになります。
予約システムを導入していらっしゃいますね。

2ヵ月先まで希望の日時を指定して予約できるシステムを採用し、院内での待ち時間短縮に取り組んでいます。10分間隔で予約でき、風邪がはやる時期などは多少お待たせしてしまうこともありますが、混んでいなければほぼ予約時間どおりです。予約方法もインターネット、電話、受付で直接と対応していますので、次回の来院日が決まっている方は受診後すぐに予約を取るなど柔軟にご利用いただけます。ウェブ問診やキャッシュレス決済も取り入れ、診療の効率化をめざしています。
アレルギーやめまい、後鼻漏や花粉症の診療にも注力
アレルギー疾患の診療に力を入れていらっしゃるとか。

指先に小さな針を刺して血液を1滴取ることで、食物や植物、動物など、41項目のアレルゲンへの反応を調べることができる検査機器を導入。採血の負担が少ないので、2歳程度の小さなお子さまから気軽に受けていただけます。専門機関へ検体を送る従来の検査では結果が出るまで数日を要していましたが、この検査では最短30分で結果がわかります。アレルギー症状をお持ちの方がアレルゲンへの接触を繰り返していると、より重い症状へと移行したり、口腔アレルギー症候群など別の症状が出てきたりということもあります。原因を突き止めてできるだけ接触を避けることが重要なのです。
口腔アレルギー症候群は食物アレルギーとは異なるのですか。
乳製品や小麦などに対する食物アレルギーとは少し異なり、特定の野菜や果物などに反応して、口内や喉の接触部分にかゆみや腫れなどが出るものです。花粉症との関連が指摘されており、長年花粉症に悩まされてきた人で、ある日突然反応が出始めたという方も増えています。両者に含まれているタンパク質の構造が似ていることで交差反応が出るのです。検査によりご自身のアレルギーを知ることで治療の選択肢を増やすことができ、スギ、ダニアレルギーの方であれば根治的療法である舌下免疫療法を行うこともできますし、食物アレルギーであれば、摂取を避けることによって重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を防ぐことをめざすという選択も考えていくことができます。
ほかに力を入れている診療があれば教えてください。

脳神経外科や婦人科など、他科からの紹介が多いのはめまいの患者さんです。比較的簡単に、不快感少なく半規管機能を測定できるvHIT検査を導入しています。後鼻漏、痰咳、鼻の奥の痛みや違和感に悩む方へのBスポット療法(上咽頭擦過療法)も実践しており、この治療を求めて受診される方もいらっしゃいます。また、昨年、今年と花粉症がひどく出た方が多かったためか、舌下免疫療法を希望される方も増えました。昨今、薬の供給が間に合わず、入荷次第でのスタートとなってしまうことも。要望があれば早めにご相談いただくことをお勧めします。
未来志向で変化を続け、長く頼られるクリニックに
診療の際に心がけていることは何ですか。

私だけでなくスタッフ全員で気をつけていることですが、いつでも穏やかに接し、恐怖心を与えないことですね。些細なことでも患者さんが不安に思っていることがあれば、丁寧に話を聞いてお答えするようにしています。子どもの頃、クリニックの先生やスタッフに対して何となく怖いというか、少しとっつきにくい印象を持っていたので、できるだけ親しみやすい雰囲気にしたかったんです。患者さんとは病気に関する相談はもちろん、ちょっとした世間話をすることもよくありますね。また、私を含めてスタッフ同士の距離感も近いと思います。受付や待合室で患者さんと接する中で要望などをくみ取って、「もっとこうしたらどうですか?」と提案してくれることも多く、とても助かっています。こうした一人ひとりの意見が院内環境の改善・向上につながると思うので、患者さんとスタッフ、そしてスタッフ同士、壁のない関係性はこれからも大切にしていきたいです。
医師をめざされたきっかけと休日の気分転換方法を教えてください。
もともとのきっかけは、開業医だった祖父の存在です。日々熱心に診療に励む祖父の姿を見て育ち、医療の道をめざしました。祖父が亡くなった時、たくさんの患者さんが道に並んで見送ってくださり、子どもながらに「地域の人のために尽力していたんだな」と、尊敬の思いを抱いたことを覚えています。患者さんやスタッフと強い絆で結ばれていた祖父らのような医師になれるよう日々の診療を一層頑張ろうと、身の引き締まる思いです。そんな中、愛犬と自然に囲まれて過ごす散歩の時間が良い気分転換でしょうか。また、数年前から教室に通い始めてハマった料理も楽しんでいます。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

同じ場所に留まることは、退化であるというのが私の考え。常に未来志向で、時代に合わせて変わり続けるクリニックでありたいと思っています。直近では、働き方改革の一環として、午後診療を1時間前倒しにし、土曜の午後を休診に変更させていただきました。患者さんにはご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、家庭を持つ職員も無理なく働き続けやすい体制をつくることこそ、当院の診療を良い形で継続していくために必要なこととの考えからです。開院17年となる当院では、昭和大学藤が丘病院や昭和大学横浜市北部病院との病診連携や近隣クリニックとの診診連携も強固に保ち、皆さんに頼られるクリニックをめざしています。新型コロナウイルス感染症もようやく落ち着き始め通常診療が取り戻せました。抱えてきた気がかりがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。