山本 向三 院長の独自取材記事
山本皮フ科クリニック
(横浜市青葉区/たまプラーザ駅)
最終更新日:2023/02/06

たまプラーザ駅南口より徒歩2分、メディカルモールの地下1階にある「山本皮フ科クリニック」は、アトピー性皮膚炎、じんましん、ニキビ、子どもの皮膚病など、身近な皮膚疾患に幅広く対応している町のかかりつけクリニック。院長を務めるのは、丁寧でわかりやすい説明に重きを置く山本向三先生。自宅でのケアが欠かせない皮膚疾患について、症状、部位などを患者と一緒に見たり触ったりしながら、薬の種類や塗る頻度などをきめ細かく指導している。アトピー性皮膚炎では、2021年に日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインで推奨されている注射タイプの治療薬も導入。新しい治療を積極的に取り入れながらつらい症状の緩和をめざす山本院長に、地域に根差した皮膚科として患者に向き合う治療に対する思いなどを聞いた。
(取材日2022年12月21日)
新しい治療薬を導入、アトピー性皮膚炎の治療に生かす
こちらのクリニックでの患者層、特に多い主訴について教えていただけますか?

比較的若い方が多いですね。ファミリー層など幅広くいらっしゃいますが、特に30代から40代の方に多くご来院いただいています。症状としては、皮膚科の場合はいろいろな疾患があるので一概には言えませんが、特に多いのは、かゆみの症状で悩んでおられる患者さんですね。ちょっとした湿疹とかかぶれとか、そういう誰でもがなりそうな皮膚疾患、それからじんましんの方も多いです。じんましんは急性と慢性があるのですが、慢性的にじんましんの症状を患って、長く通っていただいている方もいます。また、アトピー性皮膚炎の患者さんも多いですね。
アトピー性皮膚炎について、クリニックではどのような治療を行っていますか?
これまでアトピー性皮膚炎の治療というのは、抗炎症薬としてステロイド剤を使うやり方が主流でした。その後、いろいろ新しい塗り薬なども出てきましたが、当院では、2018年から日本でも発売されるようになったデュピルマブという注射薬も使用しています。これまで既存のステロイド外用薬で6ヵ月以上治療しても治らなかった、中等症以上の患者さんが対象です。2021年に日本皮膚科学会が出しているアトピー性皮膚炎診療ガイドラインが新しくなり、その中でアトピー性皮膚炎の治療薬としてこのデュピルマブの推奨度が上がったんです。最初の導入治療としても、ある程度状態が良くなった後も効果が見込め、副作用が少ない薬ということで積極的に使って良いというお墨つきが出たんですね。私たちクリニックとしてもエビデンスをもとに安心して患者さんにお勧めできるようになっています。
具体的には、どのようなお薬なんでしょうか?

この薬は、アトピー性皮膚炎の炎症、かゆみ、バリア機能の障害に関係しているサイトカインという物質をピンポイントに抑えるためのものです。今までこういうお薬はなかったので、皮膚科の医師の間でも非常に注目されています。また、患者さんがご自宅で自分で注射できるという点も今までのアトピー性皮膚炎の治療ではなかった点だと思います。最初は、クリニックで説明を受けて、看護師の指導のもとに、一緒に注射をしていただきます。2週間後もクリニックに来て、また1本、こちらで補助しながら一緒に打ちます。やり方を覚えた後、3回目からは選択できて、心配な方はクリニックで注射しても良いですし、自宅でご自分で注射しても大丈夫です。ネックとしては薬剤費が高いということ。保険診療ですが、費用の面も考えて使うかどうか患者さんと相談の上、治療を進めています。あとは年齢制限があり、15歳以上の患者さん限定になります。
地域に根差した皮膚科として、幅広い皮膚疾患に対応
小さいお子さんも多いと伺いました。どのような症状で相談に来られていますか?

お子さんも同じく、アトピー性皮膚炎、乳児湿疹、乾燥からの湿疹など、身近な疾患が多いですね。また、お子さんの場合は、風邪などで皮膚科以外の診療科を受診することが多いと思います。その際に、併せて皮膚科の塗り薬を処方されたものの、いろいろと使い方が心配になって相談に来る方も多いです。例えばステロイド剤をもらったけれど、どのぐらい塗ったらいいのか、副作用は気にしなくて大丈夫かといったご相談が多いです。今の医師は、専門医制度があり専門的にそれぞれの分野を学ぶようになっているので、特に皮膚の疾患に関しては皮膚科を受診することをお勧めしています。例えば皮膚の状態を見て、どういうときにどのぐらいの強さのステロイドを使うのか、どういう症状がでたら使うのを控えたほうが良いのかなど、よりきめ細かい説明と指導が可能だと思います。特に、アトピー性皮膚炎が疑われる場合は、皮膚科での受診が必要かなと考えています。
小さなお子さんが患者さんの場合、親御さんへの説明などで心がけていることはありますか?
小さなお子さんの場合は、親御さんが疾患について理解して、どういうときにどういう薬を塗るべきかを把握していただく必要があります。例えばアトピー性皮膚炎や乳児湿疹では、皮膚の色が赤いとか、見た目は変わりないけれど触るとゴワゴワしているとか、皮膚の状態を親御さんと一緒に見たり触ったりしながら、少しずつ説明して理解を促すようにしています。症状や部位によって塗る薬の種類や強さも違ってくるので、一回で全部理解するのは難しいと思うのですが、時間をかけて毎回説明をしていくと、だんだん親御さんにもわかっていただけます。決まった時間にお薬を飲めば良くなるというものではないですし、親御さんは本当に大変だと思います。ただ、お子さんが自分で薬を塗ることはできませんし、皮膚疾患の場合は、こまめに自宅でケアしていただくことが非常に大切です。親御さんも一緒に治療に取り組んでいけるよう、しっかりとした指導を心がけています。
開業して15年たち、最近の傾向や変化などはありますか?

そうですね。最近は、若い患者さんや学生さんなど、ニキビ治療でいらっしゃる方も多くなりました。クリニックでニキビ治療ができるということが広く知られるようになって、ちょっとしたニキビでも、クリニックに行くことが選択肢の一つになってきていると思います。以前は治療薬の選択肢が少なかったのですが、ここ数年で日本でも使える薬が増えてきました。地域に根差した皮膚科として、アトピー性皮膚炎やじんましん、ニキビなど、いろいろな身近な疾患に幅広く対応していきたいと思っています。
治療で心がけているのは「丁寧な説明と情報提供」
先生のプライベートについてもお聞きしたいと思います。お休みの日はどのように過ごしていますか?

休日は、健康維持を兼ねてランニングをよくしています。場所もいろいろで、自宅周辺を走ることもあれば、電車で熱海や三浦海岸のほうに行って、10キロくらいのランニングコースを見つけて走りに行くこともあります。日帰りできる距離なので、ランニングして、そのあと何かおいしいものを食べて帰ってくるのが楽しみなんです。それから、医師会のランニングクラブに2022年に入会したので、先生方とのコミュニケーションにもランニングが一役買っているんですよ。
日々の診療で、皮膚科医として大切にしていることは何ですか?
皮膚の疾患は、良くなったり悪くなったりを繰り返すものが多いので、その分患者さんとも長いお付き合いになってきます。一緒に治療に取り組んでいただけるよう、疾患について、ご自身の皮膚の見方や薬について、いろいろなことを時間をかけてしっかり説明するよう心がけています。あとは、治療の選択肢については常に自分自身インプットを続けて、患者さんにお伝えするようにしています。先ほどお伝えしたアトピー性皮膚炎の注射薬もそうですが、新しい治療方法やお薬ができた時に、情報として知っているだけでも患者さんは少し気持ちが明るくなると思うんです。新しいお薬は効果が見込めることも多いですし、治療の選択肢が広がるということを患者さんにはしっかりとお伝えしていきたいですね。
最後に、地域の皆さんへのメッセージをお願いいたします。

地域に根差したクリニックとして、皮膚については小さなことでも皆さんの相談窓口になれればと思っています。ちょっと気になる程度のことが、実は大きな病気を見つけるきっかけになることもあるので、何かお困りの皮膚の症状がありましたら、ぜひ気軽に来ていただきたいですね。