柳衛 真紀子 院長の独自取材記事
やなぎえデンタルクリニック
(調布市/仙川駅)
最終更新日:2025/11/07
仙川の地に40年近く続いた歯科医院を承継開業し、2023年末にリニューアルオープンした「やなぎえデンタルクリニック」。院長の柳衛真紀子(やなぎえ・まきこ)先生は、九州大学歯学部を卒業し、東京科学大学で研修医を務めた後、都内の歯科医院で長年研鑽を積んだ。同院では一般歯科、小児歯科、予防歯科、歯ぎしりの治療の他、根管治療も行う。患者がリラックスできることを重視する柳衛院長は、穏やかな語り口調が印象的。「患者さんの望まない治療は行いません」と語る柳衛院長に、診療方針を中心に話を聞いた。
(取材日2025年10月15日)
承継開業で、住み慣れた町の歯の健康を支える
開業までのいきさつをお聞かせください。

長らく開業したいという希望はあったのですが、場所などの決め手に欠けてなかなか踏み出せずにいました。そんな折、この場所にあった歯科医院が閉院するにあたり継承者を探していると人づてに聞き、居抜きの形で承継開業することになりました。前医院が2023年に閉院し、その後院内を全面改装しリニューアルオープンしたのが2023年12月になります。リニューアルオープンしてから1年半ほどは、前身の医院の院長だった目黒先生も一緒に診療にあたってくださいました。私と目黒先生で診療方針が同じ方向を向いていたことも良かったですね。目黒先生の患者さんもほとんど私が引き継ぐことになったのですが、穏やかな方が多いのが特徴ですね。2025年の3月に目黒先生が退職され、4月から私が1人で患者さんを診療する体制となりました。仙川には以前住んでいた時期もあるので、地縁を感じています。
穏やかで明るい印象の内装ですね。
せっかく建物が通りに面しているので、リニューアルの際は採光して明るい院内にすることにこだわりました。大きな窓、ガラス張りの自動ドアを設置した他、手前の半個室の壁にも細い窓を4枚入れ、明るい外光が入るようにしました。当院は障害をお持ちの患者さんも診療しているのですが、治療中に患者さんが不安を感じられた際、この窓から待合室にいるご家族の姿を見て安心していただくことができます。待合室と診察室との間には引き戸があり、ここを閉めると待合室の音が診察室に入りません。治療中の患者さん、待合室の患者さんともに静かに落ち着いて過ごしていただけます。当院のロゴマークは川に遊ぶ2匹の魚です。これは私の星座がうお座で、ラッキーアイテムも魚であることと、仙川という川のある土地にちなんでデザインしたものです。
診療内容と、患者さんの年齢層を教えてください。

虫歯の治療、歯周病の予防と治療、入れ歯を作る・直す、小児歯科、予防歯科など、保険診療で対応できる一般歯科診療が中心です。その他に根管治療も行っています。根管治療とは歯根の中を通る神経を治療することで、これまで抜歯しか選択がなかった歯も残すことが期待できるようになりました。また、最近は歯ぎしりを訴える患者さんが多く、予防のために患者さん専用のマウスピースを作成する「スプリント治療」を行う機会が増えました。開業からしばらくは、目黒先生から引き継いだご高齢の患者さんが多かったのですが、現在は20代から働き盛り世代までの患者さんも増えてきました。若い方から90代の方まで幅広い年齢層の患者さんにお越しいただいています。
患者の希望を第一に、なるべく歯を抜かない治療を
力を入れている分野と、これから注力したい分野を教えてください。

予防歯科に力を入れています。定期検診のうち、半年に一度は歯周精密検査を行います。これは歯周ポケットを詳しく調べ、必要によっては染め出しもして磨き残しを調べる検査です。3ヵ月に1度の定期検診でクリーニングを行うことが一般的ですが、歯石がつきやすい体質の方や抜けそうな歯がある方、ブリッジを入れている方には月に1度のクリーニングが望ましいです。特にブリッジを入れている場合は歯石がブリッジの隙間につきやすく、ご自身の歯磨きでは取れないこともあるため、クリニックでのケアが大切になってきます。注力したい分野は先ほど少しお話した歯ぎしりの治療です。歯ぎしりの原因に、ストレスをコントロールする脳内物質が関与していて、それは遺伝子による影響が大きいといわれています。まだ解決の決め手に欠ける疾患なので勉強を続け、悩んでいる患者さんのお役に立ちたいですね。
診療方針について教えてください。
なるべく患者さんのご希望に添った治療を行い、患者さんが望まない限り抜歯も控えています。例えば、患者さんがご高齢でグラグラの歯を持っていても抜歯を望まれない場合は、グラグラの歯を前後の歯と固定します。また、歯周病のため飛び出した歯があっても、抜歯を望まれない場合は、飛び出た部分だけを削るようにしています。麻酔については、表面麻酔をしてから麻酔の針を刺し、痛みが出にくいように心がけています。中には麻酔を打つと体調が悪くなる方もいるので、希望されない方には麻酔は控えています。初診では患者さんのお話をしっかりと聞くことと、最もお困りの症状はできる限りその日の内に対処するように努めています。さらに患者さんの負担を減らしスムーズな診療を行うため、歯科医師とアシスタントが連携するフォーハンドシステムを導入しています。
障害者治療にも注力していらっしゃるのですね。

障害がある患者さんの歯科治療は、長年目黒先生が熱心に取り組まれていました。目黒先生から教わったのは、障害があるご本人だけでなく、支えるご家族もとても大変だということです。歯科医院に通うにしても、長年通いなれたクリニックがなくなると、ご家族は一から新しい所を探し、診療の際には患者さんの状態を新たに説明をしなくてはなりません。もちろん患者さんご本人のストレスも大きくなります。この度継承開業をしたことで、患者さんとご家族が引き続きこの場所の歯科医院に通っていただけることがかない、うれしく思います。当院では持ち運びのできるスロープを新たに導入しました。車いすのご利用時はもちろん、ベビーカーをご利用の方もお声がけいただけたらすぐに設置いたします。
患者のニーズを捉え、負担の少ない診療に注力し続ける
患者さんと接する時に心がけていることは何ですか?

リラックスして診療を受けてほしいので大声を出さないように努めています。また、先ほどお話しした待合室と診察室の間の引き戸を閉め、静かな空間にしています。その方が私も集中して治療ができますし、患者さんもリラックスしていただけるのです。リニューアルの際にアームが可動式で患者さんの上を通らない診察台を導入しました。診療器具の乗ったアームの台を動かして私が患者さんの前に移動し、対面で説明ができるので役立っています。器具の載った診察台がユニットの脇にあると患者さんのストレスになりますし、治療後はスタッフが診察台を患者さんの後ろに移動させてから器具の片づけができるため、安全面でも重宝しています。
今日までの歩みと、ご趣味を教えてください。
九州大学歯学部を卒業後、東京科学大学で、放射線科に入局しました。昔からエックス線写真の読影は好きで得意です。その後2023年に当院を承継開業するまで、町田と調布のクリニックで長く勤めました。調布のクリニックには今でも週に1度診療に通っています。長く診てきた患者さんもいますし、先進の機器を導入するクリニックなので学べる点もあります。当院で歯科医師は私1人なので、他の歯科医師と話ができることも刺激になりますね。趣味は数独と、雑誌を読むことです。私は数字が好きで、診療中などに少しつらくなっても、数字を数えると落ち着きます。あとは東京近郊の温泉に行ったりする他、好きなタレントの応援も楽しんでいます。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

まずはこの土地のかかりつけ医としての役割を果たしていきたいですね。診療で小学生などの小さいお子さんを診ていると、患者さんの歯を長く守っていきたいと感じます。2025年から桐朋学園の学校医も担当しているのですが、生徒さんたちが成長する姿を見るのは楽しみですし、こちらも頑張ろうという気持ちになります。直近の目標は、前身の医院から引き継いだ古いタイプの器材もあるので、すべての器材を先進の物に入れ替えることですね。また、患者さんが何を求めているかというニーズを敏感に捉えられるようになっていきたいです。当院では患者さんの希望に寄り添い、負担の少ない診療を常に心がけています。何か気になることがあれば、お気軽にお越しください。お待ちしています。

