下里 直弘 院長の独自取材記事
下里歯科医院
(茅ヶ崎市/茅ケ崎駅)
最終更新日:2026/02/05
茅ヶ崎市東海岸の住宅街、地元住民からは通称ラチエン通りと呼ばれているストリートに面している「下里歯科医院」は1954年先代である、現院長の父が茅ヶ崎市共恵町にて開業。その後1969年にこの地に開業。下里直弘先生は、2001年に父から受け継いだ2代目院長である。待合室には下里先生が撮りためた山岳写真や、患者や近隣住民が撮った写真が展示され、さながら小さなギャラリーのようだ。地域住民から親しまれてきた歴史がうかがえる。「患者さんにとって心のよりどころでありたい」と語る下里先生。「患者さんと信頼し合えることが大切です。そのためにできる限り、患者さんと関わっていきたいですね」と言う。診療方針をはじめとした医療にかける思いから、自身のパワフルな日常まで、さまざまな話を聞くことができた。
(取材日2015年9月8日/情報更新日2026年2月3日)
患者の主訴をくみ取り、今の「困った」を解消する
先生が歯科医師になった経緯をお聞かせください。

職業として歯科医師を意識したのは、もちろん父が歯科医師だったことが大きいと思います。ただ、僕は次男でしたし、兄は歯科医師をめざしていたので「本当に僕は歯科医師になるのかな」と、なんとなく半信半疑だった時期もありました。でも高校3年生になって進学を考えたとき、「やはり歯科医師しかない」と歯科大学に進学し、卒業後は大学院に進んで解剖学を学んでいました。本来ならここは長男である兄が継ぐ予定だったんだけれど、独立したいという思いがあり、寒川で開業しました。そこでいずれは僕が父の後を継ぐつもりで、ここに戻ってきたのです。
どういった診療方針をお持ちですか。
患者さんの主訴に対する治療を最優先にしています。「痛いんです」という急患が来れば、「この人は痛がっている、じゃあ痛みを取ろう」と思いますし、「ちょっと入れ歯が壊れちゃって」という患者さんがいれば、「入れ歯がなくて困っている、食べられない。じゃあ入れ歯を作るべきだ」というように。もちろん、それに付随して、その後しなければいけない治療はありますし、予防も大切でしょう。けれど「まずは、今の困ったをなんとかする」、それを基本に治療を進めるようにしています。
どのような患者さんが多いのでしょうか。また、力を入れている治療はありますか。

地域性もありますし、先代からの患者さんもいますので、割合から言うと高齢者のほうが多いですね。ですから入れ歯の治療やご相談が多いです。例えば「入れ歯が割れちゃって」という患者さんがいれば、粉々になったものでもなるべくその日のうちに復元する。なくしてしまったということであれば、すぐ型採りをして入れ歯を作る。そうして、噛めるようにして差し上げたい。父は技工が趣味のような昔ながらの歯科医師で、入れ歯も型を採った翌日に入れてしまう、仕事が早い人でした。病気で亡くなる直前まで診療や技工もしていましたし、亡くなる1週間前にも夢を見ていたのか、「インレーできたよ。誰か早くセットしてよ」と。それが最後の言葉でした。そんな父の背中を見ていたので、僕もまねをしたいと思って、院内の技工室でできる限りのことはしています。入れ歯やかぶせ物などの技工物は早く作り、治療に関してはじっくり確実に、ということですね。
地域医療に貢献することは、歯科医師の使命でもある
診療にあたって、心がけていることはありますか。

歯科医師に限ったことではありませんが、医療従事者は患者さんと同じ目線でないといけないと思っています。同じ立場で「一緒に治していきましょうね」というところから、治療が始まるからです。また、「歯医者さんに行ったら、歯を抜かれちゃったんです」とか「歯を削られちゃったんです」という方がいるんですが、「〜されちゃった」と患者さんが思うのは、インフォームドコンセントができていないからです。もちろん歯科医師はきちんと説明しているはずですが、重要なのは説明した事実ではなく、患者さんが理解しているか。いくら一生懸命説明しても、難しい言葉や専門用語を並べていては、患者さんには通じません。ですから中高生でも理解できるような、なるべくわかりやすい言葉で説明をするようにしています。
歯科医師会の活動にも、積極的に参加されているそうですね。
歯科医師会の活動は地域の人たちへの貢献がメインです。治療をするのはもちろん重要ですが、それだけではなく、地域医療に貢献するというのは、歯科医師としての使命でもあると思っています。僕も歯科医師として、微力ながら地域医療に貢献したいという思いから、茅ヶ崎歯科医師会に入っています。1歳半、3歳時の乳幼児歯科健診、口腔がん検診、介護認定の審査、休日急患歯科診療も、歯科医師会が行っていますし、災害時救急医療体制の一員として訓練もしています。小中高の校医、歯科健診の校医も、歯科医師会に入らないとできません。実は一開業医では経験できないことを、学ぶ機会も少なくありません。例えば歯科医師会は介護の地域連携というのがあり、そこで寝たきりの方に対して臨床経験を積むことができるのです。
地域の皆さんへの貢献だけでなく、ご自身のスキルアップにもつながるということでしょうか。

大学での学びは教科書中心で、臨床経験は限られています。特に口腔がん患者に接する機会は少なく、歯科医師になりたての頃、舌がんで亡くなられた患者を経験し「もっと早く発見できれば」と痛感しました。現在は口腔がん検診に携わり、検診後に専門家と症例検討を行いスキルを磨いています。最近も早期発見で治療につなげられた事例があり、こうした学びの場を提供する歯科医師会に感謝しています。臨床での経験と検診活動を通じ、早期発見の重要性を強く感じています。
ストレスをためない気持ち良い歯磨きが、健康を守る
今後、力を入れたいことなど、将来の展望をお聞かせください。

おそらく、今後は訪問診療も増えてくると思います。実際、当院でも昔からの患者さんの中には、高齢になって歩けなくなってしまった方もいますから、需要がある限りは続けていくつもりです。そういったことも含めて、歯科医師会の事業としてできる限りのことをして、地域の皆さんに貢献していきたいと考えています。今は歯科医師会に入らない歯科医師が増えているのですが、スキルアップのためにも、さっきお話しした僕のような思いをしないためにも、地元の歯科医師には歯科医師会に入ってもらって、一丸となって地域の皆さんの健康を守っていきたいですね。
患者さんにとってどんな存在でありたいとお考えですか。
歯科医院に行く、というだけで緊張する患者さんも多いのではないでしょうか。そういった状態だと、困っていることや言いたいことが言えず、良い治療につながらないと考えています。そういった状況を引き起こさないためにも、いつでも患者さんにとっての「心のよりどころ」でありたいですね。私はこれまで治療ができない期間も経験しました。そこから復帰したときに患者さんからいただいた「戻ってきてくれて良かった! ありがとう!」という言葉が非常に心に刺さりました。どんな形であれ、継続していくことが一つの道だと思っているので、これからも患者さんに寄り添い、安心できる存在であり続けたいと思います。
では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

気軽に気持ち良く、歯磨きをしてください。気持ち良いということはすべての健康に通じるんです。僕はどんな病気でも、原因はストレスだと思っています。虫歯も歯周病も、がんもそう。胃潰瘍や消化器系の病気は、ストレスが原因のことが多いでしょう。口は消化器系の入り口ですから、そういった意味でも、ストレスをためるのが一番良くない。歯磨きもストレスがたまらないように、自分が気持ち良いと思うようにすればいいんです。「食後何分以内」にとか「最低このくらいは磨く」という決まりがあるわけではないので、自分がすっきり気持ち良くなればいいんです。気持ち良い歯ブラシで、気持ち良い歯磨きをしましょう。予防はもちろん、気持ち良い効果でストレスも発散できますし、一石二鳥ですよ。

