池田 厚 副院長の独自取材記事
池田医院
(横浜市青葉区/恩田駅)
最終更新日:2025/05/21

青葉区恩田町の閑静な住宅街にある「池田医院」。池田威(つよし)院長は1995年に同院を開業して以来、地域に根を下ろした密着型の医療活動を行っている。同院がうたう「総合診療」は、「地域医療では、専門性を打ち出すより、ある程度総合的な診療を行ったほうが患者さんのためになる」という考えによるもの。2025年からは息子の池田厚先生が副院長に就任し、2人体制となった。厚副院長は消化器内科医として大学病院で長年、胃がんや大腸がんの内視鏡診断および治療に多く携わってきた。その専門性も生かしながら、「地域の皆さんに医療で貢献し、つながっていきたい」と語る厚副院長に話を聞いた。
(取材日2025年4月15日)
親子でタッグを組み、30年続く内科医院の体制を強化
長い歴史がある医院です。副院長に今年から就任されたと伺いました。

当院は父が開業して、今年で30年がたちました。私も2021年から週1日のみ診療をし、今年の4月からは副院長としてこちらに常勤しています。それまでは、順天堂大学の消化器内科で診療・研究をしていました。今も週1日だけはそちらで内視鏡治療などに従事し、その日は同じく医師である弟が代わりにこちらで診療しています。以前は、患者さんが集中すると診療までに時間がかかってしまうこともありましたが、常に二診体制になったことで、お待たせすることも少なくなっていればうれしいです。父はがんなど腫瘍の原因や治療について研究するオンコロジーという分野をメインにやってきて、放射線診断が得意。弟は呼吸器内科を専門にしており、気管支喘息やCOPD、肺炎の治療に従事しています。お互いの専門性が補完し合う、良い体制ができていると感じています。
一緒に働くようになって、医師としてのお父さまの姿をどう感じていらっしゃいますか。
僕は幼少期から医院の2階に住んでいたので、父の仕事に興味を持って、下にのぞきに行っていたこともあります。一緒に働いて改めて思うのは、患者さんに対して本当に優しいということ。あと、患者さんの話をよく聞いて、常に丁寧な診察を心がけているところはすごいなと思っています。医師も時には、少しの問診で「たぶん、こうだろう」と決めつけてしまったりすることも多いかと思います。しかし、父は医師になって40年以上たった今でも、初心を忘れずに患者さん一人ひとりに向き合っています。だからこそ、多くの患者さんが父を慕って通い続けてくださっているのだろうなと。その姿は素直に尊敬しますし、自分もそうありたいですね。
医院を一から建て直されたと伺いました。

昨年、全面的に建て替えをしました。建物が古くなっていたのもありますし、自分が今後やっていきたい診療スタイルに合わせて、内視鏡などの検査機器を新しくし、使いやすい環境を整えました。以前も家庭的な雰囲気でしたが、内装を北欧風にして、知り合いの家にでも来たようなアットホーム感をより意識しました。患者さんからも「すごく居心地が良い」と言っていただけました。建て替え後は、医院の2階に私が家族と住んでいます。大学病院にいた頃は仕事が忙しすぎて、子どもたちとの時間もなかなか取れなかったのですが、今は一緒に晩ご飯が食べられるのがうれしく、何よりのリフレッシュになっています。
豊富な経験を生かし、がんの早期発見にも力を入れる
「総合診療」をうたわれているということは、非常に幅広い症状の患者さんを診ているのですね。

はい。できるだけ幅広く、何でも診るようにしています。専門的に特化することももちろん大事ですが、場合によっては複数の医療機関を受診することになり、患者さんにとって少し負担に感じられることもあるかもしれません。できるだけ間口を広くし、総合的な診療を行った上で、専門的に診断してもらったほうが良いと判断した場合は大きな病院や専門病院を紹介する、というのが「地域のかかりつけ医」としての本来の姿だと思っています。成人やご高齢の患者さんはもちろん、今はお子さんの来院も増えました。2代、3代にわたって来られるご家族もいらっしゃいます。
先生のご専門は消化器内科だそうですね。
消化器内科は、内科の中でも外科的な処置を行う分野で、食道・胃・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・膵臓といった消化器全般を診ることができます。特にこれらの臓器に関しては、がんなどの病気を早期に発見することが非常に重要で、発見が遅れると治療が難しくなるケースもあります。私はこれまで、胃カメラ・大腸カメラを用いた早期がんの内視鏡診断・治療に力を入れて取り組んできました。また、がんに関する基礎研究を行い、論文執筆にも携わりました。その経験を生かし、内視鏡検査から治療、がん患者さんの長期的なフォローまで一貫して対応できる体制を整えたいと考えています。早期発見、早期予防のためにも、高齢者だけでなく若い世代の方にも気になる症状があれば、積極的に検査を受けていただきたいと思っています。
早期発見が重要ながんにおいては、検診が大きな意味を持ちますね。

おっしゃるとおりです。僕が昔からこだわってきたのは「もう2度とやりたくない」と思わせない内視鏡検査をしよう、ということです。ですから「絶対苦しませない」という意気込みでやっています。大腸カメラに関しては、事前に下剤を飲むという処置があって、それが嫌だという方も多くいます。家で飲むと途中でトイレに行きたくならないか不安だという方も。そういった不安や苦手意識を少しでも緩和したいと、改装時に前処置室という個室を設置しました。隔離された空間で落ち着いて準備ができます。合間には看護師によるケアも行います。下剤もなるべく飲みやすいものを用意して、飲み方のアドバイスなどもしています。大学病院では、帰宅時のふらつきを心配して、高齢者には検査時の鎮静剤をあまり使えないこともありました。当院では送迎サービスも行っているため、ある程度は検査時に鎮静剤を使うことも可能です。ご不安がある方はぜひご相談ください。
「総合診療」で地域のかかりつけ医としての役割を
総合診療についてどのような意気込みをお持ちですか。

実は、大学の国内留学という制度で1年間、沖縄県の総合病院に勤務していました。そこでは総合内科で幅広い内科疾患の診療をし、改めて総合診療の医師として全身をしっかり診ていきたいと思えるような、充実した日々を過ごしました。消化器内科に戻ってからも、総合内科の知識を維持するために学び続けてきました。総合診療では、帰り際に「そういえば、こんなこと聞いて良いのかわからないけれど……」と話を切り出されることもよくあります。そして、それが大事な治療につながることもあります。ですから、そういった患者さんの相談事にきちんと適切な答えを返してあげられるような医師になりたいと、今も勉強を続けています。
今後の展望をお聞かせいただけますか。
これまで父が築いてきた、近隣の医療機関と連携を取りながら診療を行う「地域のかかりつけ医」としての姿勢はこれからも変わらず大切にしていきたいです。その上で、専門である消化器内科、特に内視鏡検査を中心に、診られる領域を広げていくことがこれからの役割だと感じています。また消化器内科では、胃、大腸などの消化管疾患以外に肝臓の病気にも注力しております。検診で見つかる肝障害の原因には脂肪肝やアルコール性肝障害、肝炎ウイルスをはじめさまざまな原因があり、適切な早期診断、早期治療介入が非常に重要です。当院では、肝臓疾患に関しても各種検査や治療が可能で、一人ひとりに合ったケアを心がけています。胃がんや大腸がんと同様に、早期に発見し治療すれば治癒が望める病気がたくさんあります。そういった病気をこの地域から少しでも減らせるように、検査だけでなく前後のフォローや継続的な関わりにも力を入れていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

自分はこの地域で育ったので、小さい頃からの顔見知りの患者さんも多く、いまだに小さい頃の呼び名で「あっちゃん」と話しかけられることもあります。そうした地域の皆さん、学生時代の同級生やそのご家族などに医療で貢献し、つながっていけるというのは純粋にうれしいし、とてもやりがいを感じています。そして、お世話になった人たちに少しは恩返しできているかなという思いもあります。アットホームな雰囲気は保ちながら、私の経験を生かした専門性をプラスした医療をご提供していきたいと考えています。どうぞ、どのようなことでも気軽にご相談ください。