川地 基貴 院長の独自取材記事
川地歯科医院
(名古屋市西区/庄内通駅)
最終更新日:2025/04/07

庄内通駅から徒歩7分ほどの場所にある「川地歯科医院」。地域にそっと寄り添うように立つ同院は、開業から約80年という歴史を持つ。院長の川地基貴先生は、同院の3代目。代々続く歯科医院の歩みをしっかりと継承しつつも、川地院長の確固たるポリシーである「一人の患者に対し時間をかけて丁寧に診療する」ことを大切にしてきた。「患者さん一人ひとりにしっかりと向き合って、自分にできる限りのことを愚直にやっていきたい」と、優しくも真っすぐに、力強く語る。その言葉の端々には、診療だけでなく、人に対しても誠実な川地院長の温かな人柄があふれている。娘の話になると顔がほころび良き父の顔ものぞかせる川地院長に、継承のきっかけ、力を入れている治療、患者への思いなど、時間が許す限りたっぷりと話を聞いた。
(取材日2025年1月16日)
できる限りを尽くし、できる限り時間をかけて診療
開業から約80年の歴史があるそうですね。継承のきっかけは何だったのでしょうか?

私は松本歯科大学を卒業後4年間、愛知学院大学の歯周病を専門とする診療科で学んでいました。その間、当院や他の歯科医院でアルバイトをしていたのですが、私の父はたいへん厳しい歯科医師で、治療方針でぶつかることが多かったですね。当時は一人の患者さんに対して時間をかけるという概念があまりない時代で、父はその時代に歯科医師になった人でしたから、早く診療を終わらせることを最優先にしていました。対して私はしっかりと時間を取りたかった。その違いが明確だったのです。そのため父と話し合って、私が当院を取り仕切るほうがいいと判断し、継承に至りました。それが29歳の時です。私は3代目にあたりますが、開業から80年程の歴史があり、少し場所は変わりながらも、長らくこの地域に根づいて診療させていただいています。
今通われている患者さんはどういった方が多いですか?
以前からずっと通ってくださっている患者さんが多いです。祖父の代からご家族で代々通ってくださっている方もいます。開業当初から地域に密着してやってきましたから、この近辺の方が中心ですね。中には岐阜県から通ってくださっている方もいるんですよ。治療が終わってメンテナンスに移行してからも、「通えるうちは通うよ」と希望してくださっていてありがたい限りです。通院されている方の年齢層は高めで、40代、50代以降の方が多いですね。メンテナンスで通われている方、治療の方、それぞれ半分ずつくらい。私が外科系も得意としていることもあり、親知らずの抜歯や歯根端切除、歯周外科、歯の移植などにも対応しています。
患者さんの安心のために導入している設備や取り組みを教えてください。

清潔を保つために、院内で使用する水はすべて中性殺菌水を使用しています。メンテナンスで使う材料やカップ、ブラシなどもすべて使い捨てにしていますし、全ユニットに口腔外バキュームを配備しています。また、虫歯の治療をする際にはできる限り治療前後、治療中のお写真をお撮りして、患者さんに見ていただいています。その上で、今の状況や原因、どう治療したか、今後健康状態を維持するにはどうしたらいいかも含めて、丁寧にお話しします。患者さんから「このように丁寧に説明されたことがない」と感じてもらえるような説明が理想ですね。また、必ずルーペやう蝕検知液なども使って、虫歯の取り残しがないよう細心の注意を払います。とにかく丁寧に、自分ができることのベストは尽くした治療を心がけています。
常に患者の立場になり、自分事として治療を考える
歯科技工室も併設されているのですね。

例えば入れ歯が割れた時などの簡単なことに限りますが、患者さんが日常生活に困らないよう私がすぐに対応するための歯科技工室です。外注でお願いしている歯科技工士さんとは仲間のような関係で、心から信頼しています。まだ私が院長に就任したばかりの時に飛び込みで営業に来られて、話を聞いてみたら信念や熱意が伝わってきて、意気投合したのです。まったく手を抜かない人で、作られた補綴物は素晴らしいと感じます。ですから、患者さんには自信を持って「熱血歯科技工士さんに作ってもらっているから安心してください」と伝えられます。若い頃はよく一緒に勉強会にも行きましたね。当院に飛び込んでくださった歯科技工士さんの勇気に、感謝するばかりです。
これまでどのような経験を積まれてきたのでしょうか?
歯周病の治療に出合えたのは、私の経験の中でとても大きかったですね。愛知学院大学で学んでいた当時、野口俊英教授のもとで多くのことを教わり、そこで歯周治療の面白さ、難しさも知りました。 歯周病は日本国民の多くがかかる病気で、しかも歯を失う一番の原因でもありますからね。その病気に対してどうアプローチしていくか。歯周治療の基本から先進的な内容まで深く学び、追究しました。当時は歯周病に対して強くアプローチをする歯科医師は少なく、先進の環境だったと思います。今は歯周組織再生療法が保険適用にもなり、チャレンジしている最中です。ただ、適応が限られるため、期待に沿えるような有用性が見込める治療法というにはまだほど遠いかもしれません。そのため、実際に治療を行っている歯科医師も少ないのが現状です。
患者さんとの向き合い方で大切にされていることは?

治療を考える時は、患者さんの立場に立ってその方の人生に寄り添って、自分自身がその方だったらこうしてもらいたいなと自分事として考えるようにしています。 また、私自身50歳になって人生の節目を迎えて、今通ってくださっている患者さんを大切にしていきたいという考えにシフトしてきているのです。今まで本当にがむしゃらに取り組んできたので、これからは規模を少しずつ小さくしていって、患者さんお1人あたりの時間を増やして、より丁寧にしっかりと目の前の患者さんの治療に向き合えるようにしていきたいと考えています。今までもこれからも、自分ができることを愚直に一個一個やっていく、それしかないなと思います。
人生に寄り添える歯科医療を、心を込めて提供したい
大切にしているポリシーを教えてください。

当院はごく普通の町の歯科医院で、先進の治療を積極的に提供しているとか、そういったことはありません。ですが、丁寧な治療は何よりも心がけています。患者さんから感謝してもらえることが仕事へのエネルギーやモチベーションになり、生きていく上での糧ともいえます。その患者さんの感謝の気持ちに対して自分は何ができるかを、一番大事にしているのです。食は人間の最大の楽しみの一つだといっても過言ではありませんし、年を取るほどに、それを強く感じるようになると思います。食べること、すなわち患者さんの人生に関われるということは、本当にありがたいことだと感じています。
スタッフの皆さんにお願いしていることはありますか?
マニュアル的な行動だけではなく、心から相手を思えるような対応をしてほしいと伝えています。ありがたいことに今在籍しているスタッフはそういった対応が自然とできる方ばかりで、私としても居心地良く感じています。そして、ここに勤めて良かったと思ってもらえるような歯科医院にしていきたいと考えています。そのため、立場は一切関係なく、スタッフ一人ひとりを大切に、平等に接するようにしていて、だからこそお互いを助け合える環境になっているのではないでしょうか。あとは和んでもらえるように、私が作った料理をスタッフに振る舞うこともありますね。作ったから食べてみて、と。そうすることで、生まれる会話がより良い雰囲気につながっていると思います。スタッフの心の余裕は、患者さんにも伝わりますからね。引き続きより良い働く環境づくりに努めていきたいです。
今後の展望とメッセージをお願いします。

私が今まで培ってきたことを今通ってくださっている患者さんのお役に立てたい、ひいては、患者さんの人生のお役に立てるような人間になりたいです。患者さんへ感謝の思いが伝わるように、これからも真っすぐに診療していきたいですし、私も患者さんも、お互いがより良い人生を歩んでいけたら素晴らしいなと思います。出会えて良かったと思っていただける歯科医師でありたいです。そこをめざして今までもやってきましたし、これからも継続して向かっていきたいです。当院にお越しいただいているのも一つのご縁ですし、そのご縁を大切にしていきたいと強く感じます。一生自分の歯で食べていけるように、二人三脚で一緒に頑張っていきましょう。