松村 勇佑 院長の独自取材記事
松村歯科医院
(瀬戸市/新瀬戸駅)
最終更新日:2025/06/04

名鉄バスの新郷町バス停を降りると、目の前にあるのが「松村歯科医院」だ。この地で開業してちょうど40年。長年にわたり近隣団地をはじめとした、地域住民の歯科診療に貢献してきた同院。現在は院長である松村勇佑先生とその父である理事長の2人体制で、小児から高齢者まで幅広い年齢層のさまざまな症状に対応。日々患者と向き合う中で、松村院長はこの地ならではの課題と、歯科がこれから担うべき役割の重要性をひしひしと感じているという。昔ながらの町の歯科医院から、時代を見据えた先進的な医療サービスを提供できる歯科クリニックへしていきたいという。その進化へのビジョンを熱く語ってもらった。
(取材日2019年8月27日)
大学院に進み、奥が深い歯周病について研究
お父さまとお二人で診療にあたっているのですね。

父がこの地で40年前に開業し、地域の皆さまに支えられながら歯の健康管理のお手伝いをしてきました。私が戻ってきたのは11年前。現在は主に父が昔から通っていただいている患者さまを担当し、私がお子さんをはじめ若い年齢層の皆さんを診させていただいています。2人体制となったことで診療方針に掲げる2つのことが可能になりました。まず「お待たせしない」こと。そして「困っている方をすべて受け入れる」ということ。歯科医師1人のクリニックでは、急に歯が痛くなっても予約の方で手いっぱいで診てもらえないという話を聞くことがあります。当院なら何とか2人で時間をやりくりでき、ご期待に添うことができるのではないかと思っています。
歯科医師をめざしたのは、お父さまの影響ですか?
そうですね。最近は自分の子どもに「後を継いで」と言わない親も多いそうですが、うちは「歯科医師になってほしい」とはっきり言われていました(笑)。ただ、決して父に言われたからだけではないんですよ。父の後ろ姿を見ていて、患者さまに「ありがとう」と感謝され、信頼してもらえる良い仕事なんだという思いはありました。だから自分で選んだ道ですね。大学は父と同じ愛知学院大学歯学部に進学。大学院へも進学し、国家試験合格とともに大学病院での診療も行っていました。今でも大学には籍があり、非常勤助教という立場で恩師のサポートに出かけることもあります。また、当院に戻る前は知多市の小森歯科医院に3年ほど勤務しており、大学病院時代から数えても、本当に多くの患者さまの治療に携わらさせていただきました。
大学院にも行かれたとのことですが、ご専門についてお聞かせください。

大学時代から「歯周病」を専攻していました。歯周病が歯を失う一番の原因であることをご存じでしょうか? 実は虫歯で歯をなくすよりも、歯周病で歯を抜かなくてはならなくなる場合のほうが多いといわれています。つまり治療やケアも奥が深いといえると思います。ブラッシングやクリーニングだけでなく、手術まで見越して診ていかねばならない。このように歯科の中でも幅広い視点で診ていく必要があるところに興味を持ち、専攻を決めました。また、大学院では歯周病の薬の研究を主に行っていました。歯周病は口内の汚れをもとに発症しますが、汚れとはつまり細菌のことです。細菌にアプローチするのは抗生物質ですが、どんな抗生物質がどのように作用するかという研究でした。
歯周病ケアから予防歯科への取り組みへ
歯周病のケアはどういったものなのでしょうか?

虫歯の治療と違って、歯科医師だけでは治療できないのが歯周病です。つまりブラッシングで汚れを取り除くことが基本なので、歯科医師と患者さまの共同作業、むしろ毎日のブラッシングを行う患者さまのウエイトが大きいといえます。私たちはブラッシング方法を、どうやったら適切に毎日行ってくれるかを考えながら指導していきます。その際、一人ひとりとしっかりコミュニケーションを図り、その方の性格を把握することが指導のポイントだと考えています。
具体的にどのように指導を行うのですか?
脅し文句といったら聞こえが悪いのですが、「このままだとどんどん進行して、最後はこうなりかねませんよ」といった事例を示すことで、やる気を起こしてくれる方。あるいは「汚れがたまると口臭の原因となり、歯茎が赤くなり、見た目も良くないですよ」と、美容の視点からアプローチすることでブラッシングの習慣づけを意識してくださる方とさまざまです。大学病院での診療時も、たばこを吸うかどうか、生活習慣や生活リズムはどんな状態かといったところまで踏み込んでコミュニケーションを図り、指導を重ねてきました。どの場合も褒めてあげることが大切だと思います。結果が見えると信頼につながり、後々の治療も良い方向へと進めやすくなります。
何よりも予防が大切ということですね。

歯科医院は、歯が痛くなった時に初めて来院し、歯を削ってもらうという認識の方が多かった時代もあったように思います。最近は定期検診など、予防のために歯科医院を利用するように私たちも呼びかけ、少しずつ患者さまにも浸透しているのではないでしょうか。当院のホームページに「お口を通してあなたの健康を守ります」という言葉を載せているのですが、歯が丈夫でないと食べ物が食べにくくなってしまいます。食べ物が体をつくっている以上、食べられないと全身の健康に影響を与えてしまうのです。例えば、噛むことで脳に刺激が与えられ認知症予防につながったり、歯周病を予防することで糖尿病のコントロールにつながったりするともいわれています。がん治療の前に口内メンテナンスの必要性が叫ばれるなど、今、時代は歯学と医学の密接な連携を求めています。当院としてもこの予防に対する取り組みに重点を置くべく、体制強化を考えているところです。
子どもの不正咬合に対する新たな治療方法を取り入れる
これまでの診療を通して、ご自分の中で変化があれば教えてください。

歯周病を専攻したこともあり、大きなビジョンとして「これからは予防歯科の時代」という思いは変わらず持ち続けています。ただ、大学病院での治療では「自分が一番良いと思う治療」を行っていたような気がします。もちろんそれは患者さまを考えてのことだったのですが、治療にかかるコストと患者さまの希望のマッチングにはずれがあったかもしれません。大学病院からクリニックへと移り、「患者さまが一番良いと思う治療」が大切だと感じています。そのためにはコミュニケーションをしっかり図り、何を望んでいるかを漏らさず聞き取ることが不可欠。そこに歯科医師の立場からのアドバイスをうまくすり合わせて、マッチングさせる必要がありますね。こういったことで信頼が得られ、長いお付き合いが始まり、予防歯科の観点からのケアができるのではないでしょうか。
治療で行っている新しい取り組みがあれば教えてください。
子どもの不正咬合への取り組みですね。歯並びや噛み合わせ異常のある子が最近増えていると感じています。原因は顎の発育が悪く、顎に比べて歯が大きいためきれいに並び切れずガタガタになってしまうことが考えられます。治療法は歯並びだけを矯正するのではなく、顎の骨格を広げるための矯正へとシフトしてきています。当院スタッフのお子さんも治療中なのですが、顎を広げることを促すことで鼻腔も広がることにつながり、鼻呼吸をしやすくなることが期待できます。治療の適齢期としては幼稚園から小学生の間。お子さんの歯並びで気になっている親御さんは、ぜひ相談してほしいと思います。
クリニックとしての今後の展望をお聞かせください。

予防に力を入れるためには歯科衛生士の活躍が不可欠。その数が増えれば業務にも余裕が生まれ、良いサービスの提供にもつながるはずです。また、これまでもエレベーターをつけたり、バリアフリーにして車いすが通れるようにしたりするなど、高齢社会に合わせて院内のリフォームを施してきました。しかし地域が抱える問題として、瀬戸市内は坂が多く、高齢者が運転免許を返上すると移動手段が乏しくなることが挙げられます。現実に長年通っていた患者さまから「もう行けない」と連絡をいただくことも。定期検診ができないということは予防歯科の観点ではマイナスですし、何よりもご本人が行きたいのに行けないということが残念でなりません。往診対応の充実や送迎サービスの実現について、地域貢献の意味合いからも良い方法がないか、父と模索しているところです。
自由診療費用の目安
自由診療とは部分矯正/10万円~ 全顎矯正/50万円~