宮里 幸祐 院長の独自取材記事
宮里歯科医院
(堺市中区/津久野駅)
最終更新日:2024/09/10

堺市中区の住宅地にある「宮里歯科医院」は、1972年に開院して以来、地域住民の歯の健康をサポートしてきた。2016年に父である前院長の後を継いだ宮里幸祐(みやざと・こうすけ)院長は、少しでも多く自分の歯を残すため予防の必要性を説き、メンテナンスを重視。映像を用いたわかりやすい説明や、子育て中の母親、仕事で通院時間が取りづらい患者への配慮など、患者が安心して受診できるような環境を整える。なるべく歯を削ったり抜いたりせずに、神経を残す方針で、得意とする保存治療・根管治療を提供している。休みの日には、子どもと遊んだり家族と過ごしたりする時間を大切にしていると話す、穏やかで優しい印象の宮里院長に、日々の診療への思いを語ってもらった。
(取材日2019年7月3日)
地域に根差し、予防歯科に尽力する
宮里歯科医院の開院から、先生が後を継がれるまでの経緯を教えてください。

1972年に父が開院し、僕が子どもの頃はここの2階に住んでいました。小学生の時に家は引っ越したので、ずっとこの地域で暮らしてきたわけではないのですが、同級生は周りにたくさんいますし、なじみの地域ではあります。僕も歯科医師になり、最初は大阪歯科大学附属病院で6年間、その後奈良市にある歯科医院で3年間、勤務医をして経験を積みました。2012年にこちらへ戻ってきて、僕も新しい患者さんを担当するようになりました。完全に担当制をとっていて、以前からの患者さんは、今も父が担当しています。その頃に全面改装を行いました。もともとの状態が残っていないくらい全面的な改装で、患者さんにリラックスしてもらいたいと思って個室も考えたのですが、スペースが限られているので、隣が見えないような構造で3つの診察台を離して設置する形にしました。そして2016年に僕が院長を引き継ぎました。
患者さんは、やはり地域の方が多いのでしょうね。
そうですね。高齢化が進んでいる地域もあるので、お子さんはそれほど多くなくて、ご高齢の長く通ってくださっている方が多いです。全体の4割くらいがメンテナンスの患者さんですね。当院では、男性は痛みがないと来られない方が多いけれど、女性は真面目にきちんと通ってくださる傾向があります(笑)。ここは駅からも少し離れているので、お仕事帰りの方が自宅に帰ってこられる時間を考慮して、平日の夜は8時まで診療を行っています。予約が遅い時間から埋まっていくことが多いので、その時間までの診察は必要とされているのだと感じています。また土曜日しか来られないという患者さんのために、土曜日の午後診療も夜7時まで行っています。
予防歯科に力を入れておられるのですか?

メンテナンスを続けていれば、年を重ねても残る歯が多くなることが望めるという、大学での研究データもあるんです。僕も加わった研究で、10年以上メンテナンスを続けた方の歯が残っている率と、全国平均の喪失歯の割合とを比べた研究です。また、大学付属病院での診察からも実感しています。今でも月1回、大学付属病院で診察をしているのですが、20年近くメンテナンスで診ている患者さんだと、ちょっとした歯の色の変化にも気づくことが多いのです。「歯磨き粉を変えた?」と聞くと、そうだとおっしゃる。「色素が沈着しているから、前のほうが良いよ」とアドバイスしたこともあります。そういう診療は、開業医のほうがより長い付き合いになって信頼関係もつくりやすいですから、ぜひ当院の患者さんもメンテナンスを続けていただきたいですね。
時間をかけた丁寧な治療を心がける
診療にあたってのモットーをお聞かせください。

「自分や家族にしたい、より良い治療を提供する」「できるだけ歯を抜かない」「患者さま一人ひとりに合った丁寧な説明・治療を提供する」の3点です。治療内容にもよりますが、基本は30分に1名という余裕を持った予約の入れ方をしています。当院は歯科衛生士がいないので、歯科医師と1対1でしっかりコミュニケーションをとりながら、じっくりお話を伺います。診察台のディスプレイで、エックス線写真や説明用に取り込んでいる資料映像を見てもらったり、いつどんな治療をしたかわからないとおっしゃる患者さんに、ご自身の口の中の現状を見てもらったりしながら説明するんです。時間がないから雑になってしまうようなことは絶対にしたくないですから。患者さんに合わせた適切な治療をするために、時間に余裕をもたせることを心がけています。
患者さん一人ひとりに合わせた対応とは、具体的にはどんなことですか?
例えば歯磨き指導では、磨き残しがありがちな苦手な部分から始めてもらうようにするとか、傷がつきやすいところは少し疲れてからのほうがいいとか、磨く順番まで一緒に考えます。患者さんによって口内の状態は違うわけですし、磨き方にも癖があります。どうすればより効率的にきれいに磨けるかをアドバイスするということです。また、長くメンテナンスに通われている患者さんは、経緯を見ていけるので、歯間ブラシのサイズをそろそろ変えたほうがいいなどという細かな面でもサポートできますね。お子さんの治療では、まずは診察台に自分で座ることから始め、医療機器で口の中を吸ったり、フッ素を塗ったり……、時間はかかっても慣れてから治療を始めるようにしています。
先生のご専門はどんな分野なのですか?

大学では、歯周病治療・削ったり詰めたりする治療・根っこの神経部分の根管治療の3つが一緒になっている科で勉強していました。もともとは歯周病に関心があったんです。歯周病は、ほとんどの方がかかってしまう病気だから、それについてはきちんと学んで知っておきたくて。大学付属病院では、そういった治療を学びつつ歯の保存・修復についての研鑽を深めました。その後も月1回くらいのペースで、メンテナンスに来られている方への診察や、学生実習への参加を続けています。大学付属病院では、保存系の基本治療をきちんと時間をかけてできる環境だったので、その時の経験が自分の土台になっていると思います。
少しの変化にも敏感に対応するメンテナンス
今までに影響を受けた歯科医師の先生はいらっしゃいますか?

講習会で教わった、尊敬している先生のおっしゃっていたことが、とても印象に残っています。医療関係の施設の中で、「悪いところを治す」だけではなく、「良い状態」の患者さんが来られるのは歯科特有のことだ、という話でした。確かにそうだと思いました。内科などでも定期検診などはありますが、歯科はメンテナンスの割合も大きく、続けてもらえれば変化に敏感に対応できて、悪くなることを防ぐことがめざせます。その話を聞いて、そういう部分こそが歯科医師としてのやりがいだと感じるようになりました。
今後の展望をお聞かせください。
今の状態で、できる限り長く続けていきたいと思っています。もちろん医療は日々進歩していますから、学び続けながら、患者さんにとってメリットになる治療や新しい技術は取り入れていきます。ただ、診療スタイルは今のバランスの取れた状態をずっと続けたいです。以前、勤務医をしていた歯科医院は、自費診療が多く、そこの院長先生の専門性の高い技術を学ぶことはできましたが、僕のめざしているのは、そこではないと感じました。規模を大きくしたり、自費診療へ幅を広げたりするのではなく、保険診療中心の自分の得意分野を生かした精密な治療で貢献していきたいと思っています。
最後に読者へメッセージをお願いします。

ご自身に合う歯科医院を、ぜひ見つけてください。忙しい方なら、規模が大きく、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手……と、流れ作業的に効率良く診療している歯科医院が向いているかもしれません。一方で、当院のように「治療期間が長い」といわれるような歯科医院もあります。1つの悪い箇所の原因は、他の場所にもあることも多いので、「経過を見る」という段階がどうしても必要になってくるのです。そういう面をフォローし、担当制で1人の患者さんと長く関わっていく歯科医院は、複数の担当者では不安を感じられる方には適していると思います。どちらが良いということではなく、患者さんご自身に合う歯科医院を見つけられるのが良いと思います。「かかりつけ」の歯科医院を見つけて、少しでも多くの歯を残せるようにしっかりメンテナンスを続けていってください。
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。