谷口 馨 院長の独自取材記事
谷口歯科
(岸和田市/下松駅)
最終更新日:2023/10/13

阪和線の下松駅から10分。静かな住宅地に開院する「谷口歯科」。1984年に開業し、こちらへ移転したのは1999年。合わせて40年にもわたり、地域の人々の歯の健康を支え続ける谷口馨院長。ベテラン歯科医師でありながら、とても気さくで優しい先生だ。昔、「先生と呼ばれて、偉いと思ってはいけない」との父からのアドバイスを今も守り続けている謙虚な気持ちも持つ。「かかりつけ医だから」とあえて得意の治療分野は決めず、しかし患者の不便につながってはいけない、と勉強と努力を続ける谷口院長。多種多様な歯科治療を行う谷口院長に、治療スタンスや方針、心がけていることから在籍する歯科衛生士への思いまで、じっくりと聞いた。
(取材日2023年9月19日)
良医必ず名医なり、の言葉を胸に真摯に診療する
移転開院されたそうですね。院内のこだわりについて教えてください。

もともとこの近くで1984年に開院し、少し手狭になったことがきっかけで1999年に、こちらへ移りました。歯科医院に来るというのは、どの患者さんもあまり気の進むものではありませんから、できるだけ良い環境を提供したいと思って、圧迫感のない造りを心がけました。医療機関ですから清潔な環境であることはもちろんで、院内の空気は常に循環させて、滅菌や消毒にも早くから気をつけてきました。実は2017年に、ある新聞社が歯科で使用する治療器具の滅菌に疑問を呈する記事を大々的に報じたことがありまして。歯科業界に緊張が走ったのですが、私的にそういうことは当たり前だと思っていましたので、タービンも多数購入して、滅菌・消毒も一層徹底し、グローブの使い回しも一切行わない体制を続けています。
患者さんは、どんな方が多いですか?
地域密着型の歯科医院ですので、家族ぐるみで来院してくださいます。年齢で言いますと、やはり超高齢社会ですから、ご高齢の患者さんが増えてきましたね。80、90歳代の方も多く、長寿社会になったことを実感します。高齢の方は食べることが一番の楽しみ、という場合が多いですから、そこを満足していただける治療を一生懸命することと、会話の中で冗談が言い合えたり、笑いながらごあいさつできる関係を築けるように努力しています。当院の1階の入り口近くに、患者さんのご意見を伺うためのポストを設置し対応に反映するようにしています。予約は1枠20分をベースにしていて、私の診療は2枠とか3枠で進めます。歯科衛生士の処置は1回1時間が基本です。
先生の治療のスタンスを伺います。

かかりつけ医でありたいので「何々が得意です」と、治療を限定するのではなくて、一応何でも対応します。そうする中で、自分が行う治療と専門の歯科医師が行う治療とで明らかに差が出るようであれば、迷わず専門の歯科医師を紹介するというのが私の基本的なスタンスです。これは私の恩師からいただいた言葉ですが、「名医必ずしも良医ならず。されど良医必ず名医なり」。これを常に念頭に置きながら、難度の高い抜歯も行えるように、CT検査機器もそろえています。難抜歯のために患者さんが大学病院へ足を運ぶのはなかなか大変ですし、時間もかかります。患者さんにご不便をかけないように大抵のことはできるよう勉強し、準備も整えながら、自己満足にならないように気をつけています。そんな中で私の経験と年齢を踏まえて申し上げるとすれば、一番得意な治療は義歯でしょうか。噛める入れ歯の作製に努めています。
決して手を抜かず、手順どおりに進める治療を
良い義歯を作るために、こだわっていることを教えてください。

すべての治療に言えることですが、手を抜かないことです。学校で習った手順どおりに、ステップを踏んで進めることが大事です。どこかを省略してはいけないんです。義歯を作る過程で「何かがおかしいぞ」と感じることがあれば、その時は立ち止まって、やり直します。もし、患者さんに「前の歯科医院はもっと早く作れたのに」とお叱りを受けた場合には、「前の歯科医院は上手だったのですね」「型採りは命なので、もう一回やらせてください」などと説明して、やり直します。歯の型を採るには、患者さんに印象材を噛んでもらう必要があります。でも患者さんの多くは緊張されているため、印象材に普段の噛み合わせが再現できない場合があります。一旦行った動作は脳が覚えてしまうので、そういった場合は、当院では日を変えてもう一度、型採りからやり直します。
先生の治療方針や心がけていることも伺いたいです。
患者さんのニーズに合い、医学的にも合った治療をすることです。そして求められるレベルの少し上をめざすことです。例えば、歯磨きの習慣がついていない方に、フロスを使ったほうが良いですよ、と言っても実現は難しいでしょう。まずは1日1回の歯磨き習慣から始めて、それができたら「2回磨きましょう」。それをクリアしたら「フロスはどうでしょう?」と進めます。患者さんはみんな健康になりたいと願っているはずですから、そこをお手伝いしたいと思っています。ですから歯磨きができていないからと叱ったり、物を売りつけたりはしません(笑)。すべては患者さんのために行っていること、と理解してもらい、お帰りの際に目を合わせて「ありがとう」と言っていただける治療を心がけています。
歯磨きと歯科医院でのメンテナンスが、大事なんですね。

どれだけ良い素材を使って治療しても、メンテナンスができていないと数年で駄目になってしまいます。そうならないためにもご自分のケアと、歯科衛生士によるメンテナンスは車の両輪のようなもので、どちらも大事です。当院のコンセプトは安心、安全、誠実です。歯科衛生士全員に名刺を持ってもらって、メンテナンスに入る前には私から「この人があなたを担当しますので、よろしくお願いします」と紹介します。担当制にすることで患者さんの希望や個性に合わせたメンテナンスができますし、コミュニケーションもスムーズになるでしょう。歯科衛生士は歯を掃除するだけの人ではありません。歯科衛生士の行うメンテナンスは、歯科医師が行う治療と同様にとても重要。患者さんが歯科衛生士を「先生」と呼ぶのが聞こえると、とてもうれしい気持ちになりますね。
常に知識を広め、努力する歯科衛生士が大勢いる
長く勤務されているベテランの歯科衛生士さんが多いそうですね。

5年、8年、10年勤務の歯科衛生士もいて、とても頼りになります。知識も重要ですから、1年に1回以上は、外部の勉強会に参加してもらうため、費用負担も行っています。参加後は考えをまとめる意味でレポートを書いてもらい、月1回の全体ミーティング、隔週に行う歯科衛生士だけのミーティングで共有も行い、自主的に知識を広めてくれていることが本当にありがたいですね。当院では毎朝、全員でのミーティングもしていて、スタッフ持ち回りで1週間の目標を立てて発表する機会をつくっています。自分の考えをまとめて1分間で発表してもらうため、話し方の練習にもなります。この取り組みをするようになってから、ダラダラ感がなくなり、より前向きに仕事をしてくれるようになったとも感じています。
先生はなぜ歯科医師を仕事に選ばれたのですか?
実は兄が弁護士の職に就きましたので、「兄が文系なら、自分は理系に行って医師になろう」と思ったことがきっかけで、医学部を受験したのですが、桜が散ってしまいました(笑)。それで歯学部に行ったので、最初はモヤモヤとした気持ちでしたが、だんだんと外科の要素が大きいことや、歯科の奥深さを感じて、今では歯科医師になって良かったと本当に思っています。最近は長寿社会の影響もあり、昔は歯科で会わなかったような疾患を持つ患者さんが来院する機会が増え、緊張感を持って仕事に取り組む必要があります。口腔がんが疑われる場合には遠隔画像診断システムで専門とする歯科医師につなぐことができますし、最近は嚥下障害の勉強も始めました。
では最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

これからも「町の歯医者さん」と支持していただけるように、努力していきたいですね。応急処置は他院へ行ったけれど、「やっぱり谷口歯科へ行こう」と言っていただけるような歯科医院でありたいと思っています。歯科の治療は多岐にわたります。そこで、何でもかんでもとテリトリーを広げて、自分の治療スタンスが変わってしまうことは本末転倒だと思っています。今後も誠実で丁寧な治療を通して、この地域の皆さんに貢献してまいります。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/33万円程度