木村 正也 院長の独自取材記事
木村歯科医院
(岸和田市/蛸地蔵駅)
最終更新日:2024/06/13

南海本線の蛸地蔵駅より北へ歩いて3分。岸和田城を望む城下町として栄えてきたエリアの、アットホームな商店街の一角に「木村歯科医院」はある。1962年に開業した同院は、地域に住む子どもから高齢者まで、幅広い世代の患者に親しまれてきた。「以前はちゃんづけで呼んでいた小さなお子さんが、しばらく見ないうちに立派な大人になっていたりして驚くこともよくあります」と笑うのは、2代目院長の木村正也先生。地元の歯科医師会などでも忙しく活動する先生だが、「当院に来てくれた患者さんに対してはしっかり責任を持つ」として、顔を合わせて心の通い合う診療を行うことを大切にしてきたという。そんな患者想いの先生に、同院について詳しく聞いた。
(取材日2023年12月5日)
患者ファーストの精神で地域に根差した診療を行う
クリニックの歴史について教えてください。

1962年に、父がこの地に開業しました。私も1989年に大学を卒業した後は、他院で研鑽を積みながらも、時々ここへ来て手伝いをしていたんですよ。当時、父は歯科医師会の活動でクリニックを空けることもあり、その間は私も入ってサポートしていました。親子の仲は比較的良かったほうではないでしょうか。父の背中を見て学ぶことは多かったですし、「当院に来てくれた患者さんは二人で責任を持って診る」というスタンスで、あえて担当をしっかり分けずに互いの患者さんを診ていましたね。その頃からずっと、患者さんファーストです。木村歯科医院を信頼して来てくれた人に対して、最後まで責任を持つことを大事にしてきました。そして2006年に私がクリニックを継承することになり、現在の診療スタイルになりました。
どんな患者さんが来られますか?
地域に住んでいる小さいお子さんから高齢の方まで、あらゆる世代の患者さんが来られますね。子どもの頃からずっと通ってくれている人も多く、久しぶりに会うと成長ぶりに驚かされます。スタッフも長く勤めてくれているので、患者さんとの信頼関係もしっかり築かれていると思いますよ。時には、治療が終わった後に話が弾んで、楽しそうに過ごされている方もいらっしゃいます。それだけ居心地がいいと感じてもらっているのはうれしいですね。その意味では、長年かけて地域に根づくことができたのかなと感じています。
スタッフさんと顔なじみの患者さんも多いのですね。

そうですね。当院には歯科衛生士が1人、歯科助手が4人いますが、中には患者さんが「あなたも長くいるねえ」と驚かれるほど勤務歴が長いスタッフもいるんですよ。診療というのは歯科医師一人で行えるものではなく、患者さんの気持ちを丁寧にくみ取りながらやっていかないといけませんから、コミュニケーション上手なスタッフがいてくれると本当に助かります。一時は私が岸和田市歯科医師会の活動で忙しくなり休診せざるを得なかった時期もあったのですが、そんなときもスタッフのサポートのおかげで何とか患者さんにご理解いただき乗り切ることができました。困難な時にも続けてくれたスタッフには、心から感謝しています。
歯科の総合診療を行っていくことがモットー
先生の診療方針について教えてください。

基本的には保険診療で治したいと希望される方が多いので、虫歯や歯周病など、保険でできる範囲をしっかりと治療していきます。そしてよりリスクの高い方、高度な治療を要する方は、信頼できる医療機関へ紹介するようにしています。インプラント治療や矯正治療など、専門性の高い治療は専門の先生に委ね、後のフォローやメンテナンスは当院で、というスタンスです。最近では体の健康管理は例えば「総合内科」のような広く診療を行う町のクリニックが担い、何か異常が見つかったときは各専門の医療機関へ紹介するスタイルが浸透してきましたが、歯科でも同じように総合的な診療を行う歯科医師の存在が必要なように感じています。いわば、飲み込みを含む口の健康全般を診る「口腔科」とでもいうような存在ですね。そんなよろず相談の窓口に、当院がなれたらと考えています。
患者さんと接する際に心がけていることは?
治療に来られる方は、何か不具合があって不安を抱えていらっしゃいます。特に初診の方は初めての場所で不安になるのは当然でしょう。あまり治療に気が向きすぎるとかえって緊張が高まってしまいますから、患者さんがリラックスできるように、なるべくたくさん話しかけるようにしています。その中で、普段の生活習慣や歯が痛み始めた状況などを聞き出すことができれば、治療の方法もおのずと見えてきますしね。患者さんも治療に関することを熱心に聞き出してくれているとわかれば、安心できるのではないでしょうか。それから、私は相手からプロ目線で頭ごなしに言われるのが嫌いなので、自分の診療のときにはそんなことは決してせず、自分がされるとうれしい対応を患者さんに対して行うように心がけています。
子どもの診療についてはいかがでしょう?

子どもの診療に関しても、大人と同じく生活背景にまで心を配りながら診ることが基本です。今のお子さんはわれわれの子どもの頃とは違って、学校の友人関係や学業の状況などすごくシビアな環境にさらされていると感じています。自分の望まないところでもSNSでつながってしまい、逃げ場がないのが気の毒ですね。ストレスが多いと食いしばりなどの癖がついて、口の健康に影響を及ぼしてしまうこともありますから、気になった子には普段の生活のことなども聞くようにして、必要に応じて親御さんにも声をかけるようにしています。子どもの頃に歯の健康管理をしっかりしておかないと、大人になってもずっと影響してしまいますから、そういう意味ではお子さんには特に気を配るようにしています。
地域連携で課題を解決していきたい
歯科医師会などの地域活動も熱心に行われていると伺いました。

岸和田といえばだんじりのイメージが強いですが、実は大きな病院が2つあって、地域におけるクリニック間の連携も昔から強い「医療の街」でもあるんですよ。私は岸和田市歯科医師会に長く所属していますが、この地域は若いうちから役員に名乗りを上げてくれる先生が多く、地域に対して熱い気持ちを持っている人がたくさんいる印象ですね。どんな仕事も、やり出すと夢中になる人が多いです(笑)。地域連携に関して言えば、当院でも近隣の岸和田徳洲会病院、市立岸和田市民病院の歯科口腔外科にはとてもお世話になっています。それから私は糖尿病の勉強もしています。近年は糖尿病と歯周病には相関関係があり、両方の治療を同時並行で進める必要があることが広く認知されるようになってきました。糖尿病の患者さんは運動や食事制限も大変だと思いますが、頑張りすぎずほどほどに。口の治療でも解決できるかもしれないことを知ってほしいですね。
今後の展望についてお聞かせください。
今まで自信を持って皆さんに治療を提供してきたので、今後も変に背伸びをせず、しっかりと目の前の患者さんと向き合いたいと思っています。これから先は、高齢者の歯のケアが大きな課題になっていくでしょう。「8020運動」の浸透で、高齢になっても歯が残っている人は増えましたが、それゆえに認知症などでセルフケアが難しくなったとき、どうやってその歯をメンテナンスし続けるかが新たな課題として現れ始めています。いずれは自分も向き合わなければならないことですから、いかに前向きに取り組んでいけるかを患者さんと一緒に考えたいです。
最後に読者へメッセージをお願いします。

歯の疾患も一つの病です。誰もが想定外の病気になってしまうことはあるのですから、「自分が悪い」と卑下することなく、一緒に病気の原因と解決策を探っていきましょう。虫歯や歯周病は、ちょっとした方法で予防することも可能です。相談していただけると、再発しにくくなる方法などもアドバイスできます。治療も大切ですが、その前段階としてまずは気軽に相談に来てください。笑顔でご飯が食べられるように、気持ちをコントロールして前向きになれるお手伝いをしていきたいです。口は健康の入り口であり、体の異変をいち早く発見できるバロメーターでもあります。「すべては笑顔のために」という歯科医師会のコンセプトが私の最終目標でもあるので、それがかなえられるよう患者さんと向き合っていきます。