磯 友和 院長の独自取材記事
千代田町磯歯科医院
(前橋市/中央前橋駅)
最終更新日:2023/05/02

群馬県前橋市の国道17号厩橋のすぐ近く、広瀬川に沿って広がる遊歩道に面した場所で、70年以上にわたって診療を続けている「千代田町磯歯科医院」。3代目院長を務める磯友和先生は、前院長であった父の急逝により、準備もままならず院長職を引き継いだ。公私ともに仲良し親子だった父を亡くし、悲しみに浸る間もなく仕事を続けてきた磯先生。父と付き合いのある患者から聞く話によると、父の仕事をあらためて思い、時に涙する日もあったという。患者にも家族にも優しく温かかった父にならって、患者との会話を大切に、親しみやすく通いやすい歯科医院をめざしている。
(取材日2023年3月7日)
勉強嫌いな高校生が、歯科医院の院長になるまで
クリニックの特徴をご紹介ください。

当院はほかと違う特別な治療をしているとか、特殊な機材があるとかではない、ごく普通の歯科医院なんです。ただ、広瀬川沿いというロケーションの良さを生かして、2階の大きな窓の前に診療台を設置し、外を眺められるようにしています。春は川沿いに咲く桜を眺めながら、夏は新緑、秋は紅葉と四季が感じられる場所で、これを楽しみに来られる患者さんもいらっしゃいます。建物は1989年に父が建て、6年前に僕が戻って来るのに合わせて、内装をリニューアルしました。内装は歯科医院っぽくしたくなかったのですが、設計士さんから「歯科医院っぽくないと、患者さん来ないですよ」と言われちゃって。僕としては相談だけでも構わないので、気軽に来てもらえればいいんですけど。
長い歴史のあるクリニックだそうですね。
曽祖父の代から歯科医院をやってきたのですが、この場所に引っ越してきたのは1951年頃、祖父の代からだそうです。当時は「真下歯科医院」という名称で、祖父と父が一緒にやっていましたが、1989年に父が引き継いで「千代田町磯歯科医院」になりました。親戚が前橋市大胡町で「いそ歯科医院」という名称の歯科医院を営んでいるのと現在は閉院の前橋市大手町に「磯歯科医院」があり、患者さんが混乱しないよう当院は今の名称にしたそうです。僕が当院を引き継いだのは昨年、2022年11月でした。父が急死したため、そのまま院長を引き継ぐことになったんです。地元は前橋市ですが、母校は埼玉県坂戸市の明海大学歯学部なので、当院に入職する前は大学近くの2つの歯科医院で働いてきました。
先生が歯科医師になったいきさつを教えてください。

3人きょうだいで兄と妹がいますが、小さい頃から兄に「俺は継がないから、おまえがやれよ」と言われてきました。うやむやに返事をしてきましたが、僕も歯科医師になるつもりがなかったので、高校時代まで歯科医院は父で終わるんじゃないかと思っていました。僕は運動が大好きでスポーツばかりしていて、勉強は嫌いでしたからね。それでも、両親からは期待されていましたし、これといってほかになりたい職業もなかったので、家から近い明海大学歯学部に進学し、歯科医師になりました。実際に働き始めると、人に喜ばれる仕事というのがよくわかったし、もともと世話好きなほうなので、痛みなどでつらい思いをしている人を助けられるのがいいなとも思っています。診療所と実家の住まいは別でしたし、父も家に仕事を持ち帰らない人だったので、父の仕事ぶりを見て影響されたことはないと思います。
間違った情報を得た患者も否定せず、説明し理解を得る
先生の得意な治療や、当院ならではの診療メニューはありますか?

当院も僕自身も専門性を押し出すわけではなく、オールラウンドで治療して、専門性の高い治療が必要と判断すればなるべく早く他院に紹介する方針です。好きな治療分野なら、小児歯科や審美歯科ですね。当院に入る前に勤めていた歯科医院も小児歯科に力を入れていましたが、お子さんと一緒に両親やおじいちゃん、おばあちゃんなど家族ぐるみで受診されるので、結局は幅広く治療することになりました。最近は欧米化した食事の影響で、顎が小さく歯並びが悪くなっている子が増えているようです。歯の大きさは変わらないので、顎が小さいと歯が並ばなくなっちゃうんです。矯正が必要な場合は、信頼する先生をご紹介しています。
患者さんはどのような方が多いのでしょうか。
長く地域で診療しているので、やはり年齢が高い方が多いです。予防の意識も少しずつ高くなって、虫歯の患者さんは減っているように思います。同時に美意識も高くなり、ホワイトニングを希望される方や、金属のかぶせものを白いものにしたいと訪れる方も増えていますね。新しいものに変えるときは、いくつかの選択肢とそれぞれのメリットとデメリットをご説明し、納得していただいた上で治療を進めます。最近はインターネットで調べるなど、一般の方も勉強しているなと感じます。間違った情報を得てしまった方も、ちゃんと説明すればわかってくれるし、わからないままにしているよりは良いことなので、僕はそれほど否定的でもないです。予防だけで来院される方も多くなっていますが、どれだけ高価な義歯でも天然歯に勝るものはないので、歯を守るために定期的に来院されるのは良いことと思います。
仕事のやりがいや、忘れられない経験があれば教えてください。

勤務医時代から小児の患者さんをたくさん治療してきましたが、忘れられないのは、「今まで泣いちゃって治療ができなかったけど、磯先生のおかげでできるようになった」と親御さんに言っていただいたことですね。通院を嫌がらなくなった、楽しいと思ってくれるようになったと聞くことができると、やっていて良かったなと感じると思います。特に子どもの場合、すぐに治療に入るのではなくて、友達みたいにいろんな話を聞きながら、自然に始めるようにしています。大人の方でも、父と付き合いのあった患者さんからも声をかけてもらえるとホッとしますし、また頑張ろうという気持ちになります。昔からの患者さんは僕の知らない祖父や父の話をしてくれることもあり、楽しみでもあります。
誰でも気軽に相談できる、親しみやすい歯科医院に
診療の際にはどんなことを心がけていますか?

患者さんが何を訴えているのかを把握するために、しっかり会話をすることです。できるだけ痛くない治療、手を抜かない治療は当たり前ですから、患者さんから得られる情報が最も重要ですし、そこが間違っていたら治療も間違ってしまいます。患者さんとの信頼関係がないと治療もうまくいかないので、コミュニケーションを大切に、特に初診の方からはよく話を聞くようにしています。僕らから見て「この患者さんはこの治療が合っているな」と思っても、患者さんの理想とは違う場合もあります。同じ治療を施しても、一人ひとり口の中は違うので、全員が同じようにうまくいくとは限りません。特に義歯やかぶせ物では、作ってみたら患者さんの考えていたものとは全然違うとなると、お互いに困ってしまいますから。
休日の過ごし方を教えてください。
毎日室内で働いていますし、体を使う仕事なので、リフレッシュも兼ねて休日は積極的に運動をします。体を動かすのは昔から大好きで、ここ数年は自転車道路をロードバイクで走っています。車に自転車を積んで県外に行くことも多いですね。山の多い群馬県民なので小学生からスキーをやってきて、競技にも出たことがありますし、今でも冬はスキーに行きます。ただ、2年前にスキーで膝の靱帯を傷めてしまったので、難易度の高いスキーや、サッカー、ラグビーのようなコンタクトスポーツは無理かなと思っています。スキーも自転車も父の趣味でもあったので、子どもの頃からずっと一緒だった父が急にいなくなり、今でも寂しい気持ちになることがあります。
今後の展望をお聞かせください。

父の患者さんが思い出話をしてくれるたびにウルッとしてしまうことも、しばらくはよくありました。最近ようやく落ち着いてきた感じですが、院長になった実感は今でもあまりないです。ここで一緒に働くようになってから、父が患者さんと話し込んでいる姿をしょっちゅう見ていて、患者さんに寄り添おうとする気持ちは僕にも伝わっていました。たった6年でしたが、父と働けたことを財産と思っていますし、僕も同じように患者さんとの会話を大切にしていきたいです。開院以来、父がつくり上げてきた患者さんとの信頼関係を大切に、これからも地域に根づいて、誰でもいつでも気軽に入ってもらえるようなアットホームなクリニックでありたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはセラミックのかぶせ物/5万円~、ホワイトニング/1回8000円~